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  • この展示会の趣旨と構成
  • 第一部 出版の塔
  • その1 年代別の特徴と地域の広がり
  • 年代別の特徴 1960~1970年代
  • 年代別の特徴 1680~1990年代
  • 年代別の特徴 2000年~現在
  • その2 翻訳出版件数の多い国と地域
  • 1位 韓国
  • コラム
  • 2位 台湾
  • コラム
  • 3位 中国
  • コラム
  • 4位 アメリカ
  • 5位 フランス
  • その3 ノンフィクション
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  • 第2部 文化の塔
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  • その2 物語
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第二部 文化の塔

「文化の塔」では、前半で絵本と物語について、作品ごとに原書と翻訳版を紹介する。国際アンデルセン賞受賞作家・画家の作品やボローニャ国際児童図書展での受賞作など、児童書の世界で国際的に評価されている作品は、世界中で翻訳出版されているのだろうか?日本国内で長く読み継がれている絵本や人気の物語は、外国の子どもたちにも愛されているのだろうか?物語が外国語になると、挿絵も外国風に変わるのだろうか?いろいろな観点で、原書と翻訳版を見比べる楽しさがある作品を選んでいる。

後半は、日本の昔話を取り上げる。まずは翻訳DBで扱っている戦後の翻訳出版をいったん離れ、幕末・明治時代のお雇い外国人による日本の昔話の翻訳や、20世紀初頭のフランスでの日本人画家による日本の昔話の出版など、古い歴史をたどってみる。そのあと、いろいろな国の多種多様な「日本の昔話」から、日本の風俗とは微妙にずれた挿絵や思いがけないストーリーの変化、最近のものでは日本アニメの影響がうかがえる作品など、楽しい特徴を見ていく。さいごに、国際子ども図書館所蔵のちりめん本の中から、昔話を収載したものを紹介する。

その1 絵本

まど・みちおの作品

詩人まど・みちおの作品は、アメリカ、韓国、台湾で出版されている。1992年に、童謡で有名な「ぞうさん」が含まれる『どうぶつたち:まど・みちお詩集』(No.104)が日米で同時出版され、アメリカの書評誌Horn Book Magazine等で高く評価された。この詩集によってまど・みちおの詩は世界に知られ、1994年の国際アンデルセン賞作家賞受賞につながった。1998年には『ふしぎなポケット:まど・みちお詩集』(No.105)も日米同時出版された。1998年に第4回日本絵本賞を受賞した『キリンさん』(No.106)の韓国版(No.107)では、原書では均一な本文の文字フォントに変化が付けられたり、原書にない小さな絵が加わったりしている。

『どうぶつたち:まど・みちお詩集』と『ふしぎなポケット:まど・みちお詩集』は安野光雅、『キリンさん』は南塚直子が絵を担当している。

※国際アンデルセン賞
1953年に国際児童図書評議会(IBBY)が創設。「小さなノーベル賞」とも言われ、児童文学の分野で卓越した業績をあげた現存の作家及び画家に対し、2年に1度与えられる。

作者について

まど・みちお(1909~)は、1968年、『てんぷらぴりぴり』で第6回野間児童文芸賞、『まど・みちお全詩集』で第43回(1992年度)芸術選奨受賞。「ぞうさん」、「ふしぎなポケット」、「やぎさんゆうびん」などの童謡は長く親しまれている。1994年、日本人として初めて国際アンデルセン賞作家賞受賞。

南塚直子(1949~)は、1988年、『うさぎ屋のひみつ』(安房直子作)で第2回赤い鳥さし絵賞を受賞。『やさしいたんぽぽ』、『うさぎのくれたバレエシューズ』(いずれも安房直子文)などの作品がある。

『スーホの白い馬』(大塚勇三 再話 赤羽末吉 絵)

この作品は、1968年に第15回産経児童出版文化賞を受賞し、日本では小学校の国語の教科書にも取り上げられ、広く知られている。海外では、イギリス(No.109)、パキスタン(No.110)、韓国、台湾、フィンランド、フランス、アメリカ、メキシコの8つの国・地域で翻訳された。1975年にはアメリカでアメリカン・ブルックリン美術館絵本賞を受賞。

ほとんどの翻訳版は、原書と同じスーホと子馬が出会う場面の絵を表紙にしているが、イギリス版の表紙は、スーホが世話した子馬が立派に成長した場面の絵である。

作者について

赤羽末吉(1910~1990)は、日本の伝統的な手法を用いて多くの絵本や挿絵を手掛けた。1965年に『ももたろう』(松居直再話)、『白いりゅう黒いりゅう』(君島久子訳)で第12回産経児童出版文化賞、『ほうまん池のカッパ』(椋鳩十文)で昭和50年度(第24回)小学館絵画賞を受賞。1980年、日本人として初めて国際アンデルセン賞画家賞を受賞した。

『まるいちきゅうのまるいちにち』(エリック・カール〔ほか〕作 安野光雅 編)

安野光雅の発案で、『はらぺこあおむし』のエリック・カール、『スノーマン』のレイモンド・ブリッグス、林明子など8か国9人の著名な絵本作家の協力を得て、1986年に日本、アメリカ、イギリスで国際共同出版された絵本。冷戦時代だったので、地球という惑星は世界にたった一つという「平和」の大切さをテーマに、旧ソ連と中国の作家をあえて含めた。2001年には台湾でも出版された。日本では小学校の国語の教科書でも紹介されている。グリニッジ標準時1月1日0時を中心に世界8か国でその国の子どもが何をしているかが3時間ごとに描かれている。見開き2ページが8つの枠に区切られており、同時刻の子どもたちの様子を一度に見比べることができる。

作者について

安野光雅(1926~)の作品は、デビュー時から海外でも高く評価された。1975年、『ABCの本』でイギリスのケイト・グリーナウェイ賞特別賞、芸術選奨文部大臣新人賞等を受賞。1977年、『あいうえおの本』でBIB世界絵本原画展金のりんご賞、1978年、『安野光雅の画集』でボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞受賞。1984年、国際アンデルセン賞画家賞受賞。

『ひろしまのピカ』(丸木俊 え・文)

広島の原爆被爆を描いたこの作品は、1980年に第3回絵本にっぽん賞大賞を受賞。海外では、スペイン(No.115)、中国(No.116)、アメリカ(No.117)、イギリス(英語)(No.118)、オーストリア(No.119)、フランス(No.120)、イギリス(ウェールズ語)、イタリア、オランダ、ギリシャ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの12か国13言語で翻訳された。原爆投下国アメリカでの出版には異論もあったというが、同作品をアメリカで出版した出版者は、1983年にバチェルダー賞を受賞。同じ英語国でも、イギリスでは“The Hiroshima story”、アメリカでは“Hiroshima no pika”と、タイトルが異なる。アメリカでは原書タイトルの「の」と英語の“No”をかけている。

※バチェルダー賞
1966年に全米図書館協会(ALA)が著名な司書ミルドレッド・L.バチェルダーの名前を冠して創設。最も優れた外国の児童書の翻訳作品をアメリカ国内で出版した出版者に与えられる。

作者について

丸木俊(1912~2000)は、1945年8月、原爆投下直後に夫・丸木位里の郷里広島に入り、1950年以降、位里と共に「原爆の図」を発表して世界各地を回った。1953年、国際平和文化賞受賞。1971年、位里と合作の『日本の伝説』全5巻(松谷みよ子文)でBIB世界絵本原画展金のりんご賞受賞。

いわさきちひろの作品

いわさきちひろの作品は、至光社によって早くから(1960年代)海外へ紹介された。

本来は絵と文が一体となった「心情・感覚の世界」を主張した絵本が多いのだが、たとえば『ことりのくるひ』ドイツ版(No.122)の小鳥が部屋に入ってくる場面では、原作にない文章が付け加えられ、次のページへの展開が言葉で説明されている。絵は感覚で受け入れられやすいが、文はそのままでは受け入れがたい、ということだろうか。

2008年には、ベトナム戦争の枯葉剤被害者支援のために、(財)いわさきちひろ記念事業団とベトナムの出版社とで2作品が共同出版された。そのうちの一つ『母さんはおるす』は、ベトナム人作家の作品の翻訳にいわさきちひろが挿絵を描いて日本で出版した本で(No.123)、今回は原作の国で改めて出版されたことになる(No.124)。

作者について

いわさきちひろ(1918~1974)は、『あめのひのおるすばん』『となりにきたこ』など子どもをテーマにした多数の絵本を制作している。『ことりのくるひ』では1973年にボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞を受賞しており、国際的にも高い評価を得ている。

※ボローニャ国際児童図書展
1964年からイタリアのボローニャで毎年開催されている世界で唯一の児童図書専門の見本市。1967年から絵本原画展も行われており、子どもの本のために制作された作品なら誰でも応募できる。

『くいしんぼうのはなこさん』(いしいももこ 文 なかたにちよこ 絵)

この作品は、出版以来40年以上読み継がれて親しまれている。表紙が子どもにとって魅力的でよく読まれていると言われており、読み聞かせにもよく用いられる。

海外では、1991年から1998年にかけてインドとパキスタンで英語を含む7言語に翻訳され、2008年には台湾でも翻訳された。

並べると、見慣れた日本語やアルファベットとは違う、珍しく美しい文字で書かれたタイトルを比べて見ることができる(No.126~131)。ウルドゥー語(No.126)は右から左へと流れるため見開きが逆で、この1冊だけはなこさんが逆方向を向いている。

作者について

石井桃子(1907~2008)は、『ノンちゃん雲に乗る』で第1回(1950年度)芸術選奨文部大臣賞受賞。1953年、児童文学への貢献により菊池寛賞受賞。『クマのプーさん』など外国児童文学の翻訳や児童文学評論も数多く発表した。

中谷千代子(1930~1981)は、岸田衿子とのコンビで『かばくん』など多くの作品を手掛けた。『スガンさんのやぎ』(岸田衿子文)はアメリカでも出版。1974年、『かえってきたきつね』で第21回産経児童出版文化賞大賞受賞。

『おふろだいすき』(松岡享子 作 林明子 絵)

この作品は、1983年に第30回産経児童出版文化賞美術賞を受賞し、出版以来、国内で100万冊以上売れている。海外では、韓国、中国、タイ、イギリス(No.133)、オランダ、旧ソ連(モルドバ語)、フランス(No.134)、アメリカの8か国で翻訳されている。

当館所蔵資料は7点とも表紙は原書と同じである。しかし、イギリス版、オランダ版、旧ソ連(モルドバ語)版では冒頭部分の絵に浴槽のふたが描かれていない。浴槽にふたがない国の絵本としては、ふたがあるのは変だと注文がつき、ふたがない絵を描き直したという。韓国版、中国版、タイ版、そしてヨーロッパでもフランス版では原書と同じ、ふたのある絵になっている。

作者について

松岡享子(1935~)は児童文学者で、「ゆかいなヘンリーくんシリーズ」や「パディントンの本」シリーズなど、翻訳を多く手掛ける。創作では1969年、『くしゃみくしゃみ天のめぐみ』で第16回産経児童出版文化賞受賞。1974年に財団法人東京子ども図書館を設立。現在、同館理事長。

林明子(1945~)は、1979年、『きょうはなんのひ?』(瀬田貞二文)で第2回絵本日本賞、1990年、『こんとあき』で第21回講談社出版文化賞絵本賞受賞。『あさえとちいさいいもうと』(No.224)など作品多数。

※著作権の関係上、本電子展示会に写真を掲載していない資料もあります。

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