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第一部 出版の塔

その2 翻訳出版件数の多い国と地域

コラム(台湾)

台湾

帯の違いからみる台湾の子ども読書の事情  張 桂娥

近年、台湾では、少子化や子どもの活字離れの影響で、児童書の出版は、深刻な不況に落ち込んでいる。こうした苦境の中で、三采文化出版社(台湾)は、「読書って楽しいんだ」という実感をテレビっ子やパソコンっ子たちに味わってもらうため、2008年9月より日本の講談社が「小中学生の支持率ナンバー1」と自負している〈青い鳥文庫〉というブランドを丸ごと台湾に導入しはじめた。

刊行スタートとして、人気の『黒魔女さんが通る!!』、『若おかみは小学生!』、『月が眠る家』の3シリーズが紹介されており、2009年2月より新シリーズ『魔女館』が登場している。今後の予定として、『キャプテン』シリーズをはじめ、『パセリ伝説―水の国の少女― memory』、『テレパシー少女「蘭」事件ノート』、『怪盗クイーン』、『名探偵夢水清志郎事件ノート』などのシリーズものが、2010年末をめどに順次刊行されるという。

世界的不況や活字離れ・本離れによる出版不況など、出版社を取り巻く状況が悪化する中、数十冊にのぼる大型出版プロジェクトを大胆に展開し、瀕死状況に落ち込んでいた台湾の児童書出版に大きなエネルギーをもたらそうとする三采文化は、台湾の子どもたちに「読書って楽しいんだ」という実感を体験させると同時に、エンターテイメントやライトノベルなどの新しいジャンルで、文庫本という新たな活字メディアの確立を模索しながら、子どもの自主的な読書活動を推進しようとしているのである。

1980年に創刊した青い鳥文庫は、刊行のことばに掲げられた抱負の如く、エンターテイメント読書の宝庫、本の森となるような幅広い作品のジャンルを展開してきた。その人気の秘密は、ホームページにも書いてあるように、「安心感のある内容」「総ルビ&さし絵も充実」や「読者とのつながりを大事にしている」などの点にあるが、極めつけは、ストーリー作りに参加できることであろう。IT時代にふさわしいネットビジネスのメリットを生かした青い鳥文庫は、広告をせず、ヒット作は口コミで生まれるということに成功した。

また、多くの青い鳥文庫読者(子ども)が初めて自分で本を選び、初めて自分のお小遣いで買っているということから、日本の子どもたちが、早くも受身の読書から自分の力で物語の世界を一人歩きできるようになったことも明らかにされた。よって、日本版青い鳥文庫の宣伝文句は親を相手にしていない。子どもたちに向けられたものである。

しかし台湾版青い鳥文庫の価格が180元(約520円相当。通常の2割引販売額でも400円超。ちなみに大学生のアルバイト時給が95元で、サンドイッチが20元)の設定のため、「自分で選んで自分のお小遣いで買って」という青い鳥文庫本来のコンセプトから離れ、保護者の経済的支援がなければ、たとえ心躍らせるエンターテイメントでも、子ども読者の手に届きにくいのが現状である。

つまり台湾では、本を買うのは殆ど保護者と認識されるため、ブックビジネス成功の鍵は保護者への説得力にあると判断され、本の宣伝文句は保護者にも訴えかけることになったわけである。実際に刊行された台湾版青い鳥文庫を見ると、本の帯の下部に並んでいるのは、教育分野で権威のある推薦者たちの名前や推薦の言葉、「日本の親は信頼し安心して読ませている」というオーバーな表現などである。また、三采文化の青い鳥文庫ホームページには、次のような宣伝文句も見られる。

<面白くて読み応えのある物語を読ませ、子どもたちにステキな思い出を! ! >
<三采文化の青い鳥文庫を読んだら、あなたの子どもは、… …
・活字の本なんて、もう怖くない。楽しくて簡単に一冊の本を読み終える。
・心の感受性が深まり、創造力も想像力も豊かになる!
・一人で物事を考える力がつく。自分の考え方を表現する力が伸びる。
・人と上手にコミュニケーションできるようになり、人間関係がうまくいく。
・明るくて生き生きして、前向きに生きていく向上心が育つ。>

いずれも、保護者や教育者の目線から、青い鳥文庫は、どれほど有意義な読み物であるか、子どもの人生にどれほど役立つのか、必ず子どもに読ませるべきだと力強く訴えようとした歌い文句ばかりである。

実は、絵本の宣伝にも同じ傾向がある。例えば、福音館書店月刊絵本『こどものとも』から翻訳された創作絵本シリーズの紹介ページにも、児童文学者や評論家、教育者や大学教授などによる解説や推薦文が掲載されている。

つまり、台湾では、文と絵のバランスを自由に楽しむ絵本の宣伝にも、エンターテイメント性の高い趣味の本の宣伝にも、親へのアピールや教育者・専門家の強い後押しが必要とされ、保護者が期待する「ためになる読書」意識が前面に出てくるのは、台湾の子ども読書の事情を考える際に見逃せない事実なのである。

ちょう・けいが
(児童文学研究者・翻訳者/東呉大学日本語学科助理教授(台湾))

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