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国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウムを開催致しました。

2002.07.08

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウム「昔話から物語へ」

野村純一氏(國學院大學教授)

野村純一氏(國學院大學教授)

文学博士。日本口承文芸学会会長。口承文芸の民俗学的研究なびに隣接諸国との比較研究が専門。

「昔話と『絵』」

日本の昔話研究には、一つの昔話の伝播の範囲を鳥瞰する「共時性」を捉えていくものと、同じ話が歴史的にどこまで遡れるかを見る「通時性」を捉えていく、という二つの手法がある。それを押さえた上で、通時的な研究では、現在から遡ると室町時代の御伽草子が一つの目安となっており、ここに描かれている挿絵は、現在では読み解くものとして新たな研究対象とすることができる。

御伽草子、そして江戸時代の昔話絵本に描かれた絵を、海外の昔話絵本と比較してみると、その描写法にいくつかの特色を見いだすことができる。それは一つには、挿絵に「霞」や「雲」をかけて、いわゆるぼかしの手法が導入されていること、もう一つには絵による場面の進行が右から左へと展開し、しかも絵描写の視点が斜め上からの視点に定まっていることである。

このような描写のあり方は、室町時代以前に作成された絵巻物の手法をもとにしており、詞書きを漢字・ひらがな交じりで書くことによっている。ところが、詞書きをすべてひらがなで、横書きにも書くようになると、従来とは異なった大胆な絵が登場してくるのであり、ぼかしの手法を用いず、場面の全体を描くようになる。近代の、あるいは現代の子どもの絵本は、こうして成立したといえる。

口承文芸を絵本にする場合、どの場面を絵にするかは重要である。「絵」になる場面こそが、話の不変化部分であり、それが絵として描く場面の選択にあらわれている。不変化部分を柱として記憶することで、昔話という言語伝承はしっかりとした構造をもって伝えられてきた。また、この柱の部分が昔話絵本の絵として描かれ、この絵によって昔話が修復され、もしくは鍛えられてきたともいえる。昔話絵本の絵は、昔話伝承の記憶の構造と同じ仕組みをもつところに特質がある。

多くの昔話を伝承する語り手は、「絵」の場面で昔話を記憶することにより、小さ子のような異常な出生、不思議な成長、苦難との遭遇、援助者の出現と呪宝の入手による苦難の克服、そして富や幸福な結婚によるハッピーエンドという、昔話の不変化部分を押さえて自在に語っている。

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