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国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウムを開催致しました。

2002.07.08

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウム「昔話から物語へ」

崔仁鶴(チェ・インハク)氏 韓国・仁荷大學名誉教授

崔仁鶴(チェ・インハク)氏
韓国・仁荷大學名誉教授

文学博士。比較民俗学会会長。韓国児童文学人協会理事。専門は比較民俗学、口承文芸。

「韓国における昔話から児童文学へ」  

崔仁鶴氏は、日本と比較をしながら韓国の昔話の特徴を述べ、昔話が子どもたちの情緒のために必要であるとの見解を示された。また昔話の紙芝居を楽しむ韓国の子どもたちのビデオ上映があり、会場内は和やかな雰囲気に包まれた。

日韓の昔話を比較すると、歴史が古いものや農耕文化を背景にした昔話に、共通するものが多い。内容がぴったり一致するものが30%、一部が一致するものが半分以上あるのではないかと思う。

韓国では、女性と子どもの部屋(アンパン)と男性と客の部屋(サランパン)があり、男女で生活空間が違っている。部屋によって集う人が異なるため、語りの場によって語られる話も違ってくる。男女とも幼い頃は母から昔話を聞くが、男子は成長するとサランパンに移り、父や成人から昔話を聞く。一方女子は成長してもアンパンに住む。そのため男性は伝説、笑い話、世間話などを、女性は教訓的な話や童話を聞くことが多い。日本ではいろりを中心に家族揃って生活するので、昔話の伝承の内容や方法も韓国とは異なると思う。 日本の昔話には『こぶとりじいさん』『はなさかじい』のような「隣の爺型」が多く、韓国では「兄弟葛藤譚」が多い。韓国では長子相続における財産の分配が社会的な問題であり、日本は隣を意識する文化のせいではないか。

韓国のトケビは、西洋の妖精、日本の鬼、河童、天狗、幽霊などを総括した化け物である。トケビは人間を脅かして、畏怖感を持たせる性質がある。トケビを信仰すると福や金をもたらすという俗信があり、神性を持つ神でもあった。しかし、道教や儒教の影響でトケビに類した神が生まれるようになると、トケビ信仰は凋落していった。現在は海岸や漁村などに信仰が残っている。機嫌がよければ福を与え、悪ければ奪うというトケビの性質は数々の昔話にも反映されている。

韓国では、子ども向けに書き直した昔話を創作と区別して「伝来童話」と称している。情緒を豊かにし、共同体の一員として互いに和睦し助け合うために、子どもたちに昔話を伝える「伝来童話教育」が効果的である。テレビ放送など様々なプログラムもある。初等学校の教科書にも「伝来童話」が採用され、全文や一部を紹介したもの、劇や絵などに表したものなどもある。智慧、禁欲、報恩、愚かさ、孝行、正直、誠実、謙遜、勇気、因果応報、友愛などを主題としているが、何より子どもの創造的思考力を向上させる効果がある。しかし昔話の視点からみると、教育の美名の下に改作や創作にちかい作品、モチーフを変えたり直したりしたりすることがあり、気をつけねばならないと思う。

韓国も日本同様、昔話の再話から創作童話に発展している。最初の作品は黒海松の『岩ゆりと子星』(1923)であり、それ以来児童文学はますます発展してきた。今日の韓国の児童文学は、西欧と比べて独自性が感じられない。グローバル化の中でこそ独自性が必要である、韓国の児童文学は民族というふるさとに還るべきだと思う。

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