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国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウムを開催致しました。

2002.07.08

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウム「昔話から物語へ」

たつみや章氏(児童文学作家)

たつみや章氏(児童文学作家)

1991年『ぼくの・稲荷山戦記』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。『水の伝説』でサンケイ児童出版文化賞JR賞、『月神の統べる森で』で野間児童文芸賞を受賞。

「血の中に流れる母国文化に気づいて」

たつみや章氏は、作家として今なぜこういうものを書いているのか、ご自分の体験をもとに、時にはユーモアを交えて語られた。

今日は普段の格好とは違って、気合を入れるために着物を着てきた(笑)。私自身は「西洋かぶれ」で、翻訳作品が隆盛だった昭和3、40年代に育ち、子どもの頃から海外の作品で血肉を培ってきた。日本の作家で記憶にあるのは、小学校一年生のときに買ってもらった浜田広介の全集、五、六年生の頃に教科書がきっかけで読んだ椋鳩十の動物ものくらいである。むしろシートン動物記に親しんでいた。だから私の中には翻訳物の文体や構成が入っていると思うのだが、いざ書こうというときになると、不思議なことに日本的なものが出てくる。これは他の作家もそうだと思うが、書きたいものと書けるものは違う。フェアリーテイルや中世騎士物語が大好きだが、それを自分で書こうとすると借り物になってしまう。ところが竜神さんやお稲荷さんをキャラクターにして日本的なものを書いていくと書ける。これが自分の中にある日本人としての血なのだろう。日本人の体質がいやで、排除しようとしたときもあったが、今は「日本人だよ」と前向きに転換している。最近日本のものの良さもわかってきて、徐々に日本文化も取り入れるようにしている。

自分の中に骨として存在する日本的な伝統が、どこから来るか不思議だったが、昔話ではないかと考えている。曾祖母、祖母、母親と三代に育てられ、昔話を聞かせてもらった。ほとんど印象にはないが、大きな桃が「どんぶらこっこすっこっこ」と流れてくるリズムが面白くて覚えている。多分語り聞かせてもらったものが、何となく土台として入っていたのだと思う。

現在地元で学校図書館を充実させる運動に関わっている。読み聞かせのグループに聞くと一番の人気は『三びきのやぎのがらがらどん』(Three billy-goats Gruff)のような海外の作品が多い。日本の物語をたくさん取り入れた上で、ほかのものも取り入れてもらいたい。日本人はこれから外国の人と付き合いが増えてくるが、私は日本人なんだという足場をしっかり持つ必要がある。何ヶ国語ができようと、あなたの国にはどんな昔話があるのかといわれたときに、「どんぶらこっこすっこっこ」とやれるような文化的教養を持った子どもたちに育ってもらいたい。今の若いお母さんたちも、子どもたちに昔話を語ってやることはできなくても、『ももたろう』や『かちかち山』などの良い絵本を読んでやってほしい。一軒に一人語り部がいるというのは難しくなっているが、日本文化としての昔話の継承は大事だと思う。

一人一人が狭いナショナリズムにとらわれるのではなく、日本人として自分は何者かというアイデンティティを持つためにも、発信者として子どもたちに日本のものを教えてあげたい。『じっぽ』(1994)という私の作品を読んだ子どもが「カッパってほんとうにいるんだとわかりました」と手紙をくれたりする。そのように昔から伝えてきたものを作品の中で命を持たせて、子どもたちの間にまた5年、10年と語り継がれているように生かし返したいと思っている。

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