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国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウムを開催致しました。

2002.07.08

国際子ども図書館全面開館記念シンポジウム「昔話から物語へ」

<第二部>

第二部は、野村純一氏の司会で、参加者から寄せられた質問をもとに進めた。各パネリストに多数の質問が寄せられたため、共通したものに絞って取り上げた。

若いお母さんたちは、読み聞かせはできても、昔話は語れないという問題について、野村氏は「フィールド調査の経験から、自己表現の言葉を自分の人生のなかで持たないと昔話を上手に語れない。若いお母さんたちには語りは難しいかもしれないが、人生を深め、いうなら文化を深めていけばいずれは良い語り手になる。」とエールを贈った。

韓国の「伝来童話」は参加者の多くの関心を呼んだ。崔氏は、「特に教科書に載せられたものは本来の伝来童話とは異なり、文部省が昔話の本質を抜きにして知恵、親孝行、正直などを主題にして書き直す危険性もある。」と補足した。

神宮氏には、今の子どもたちに伝えたい児童文学の作品があれば具体的に挙げていただきたいという質問が寄せられたが、「具体的な作品は限りなくあるので、良い本として考えているのは、読んで面白い、楽しいことが第一番ではないか。」と応じた。また、人間としての本質的な正義感に貫かれている本、「言葉が立っている」本——つまり正確に意味のわかる言葉で、耳で聞いて快い文章で、読んでいると本の方が読者を呼びにくるような本を薦めたいと述べた。それに加えて野村氏が、文字で書かれた作品に個性の強い文体があるように、昔話の語り手にも個性的な語りの文体があることを指摘した。

たつみや氏は、昔話はそのままで現在の子どもたちにわかるだろうかという質問に、ご自身の体験から、「畳を知らない子は少ないが、ふすまと障子の差がわからない、お釜もわからない。生活がガラッと変わって、語りだけでは昔話の世界がわからないことがたくさんある。これを手助けしてくれるのは絵本ではないか。」と述べた。今後また現代の子どもたちを主人公にした作品を書く予定があるかという問いには、「未定である。出版社が、日本では純粋ファンタジーは難しいという常識を持っている。現代の子どもたちがどこかの世界へスリップするとか、不思議なことに出会うなどのように、自分の身近な世界から出発しないとわからないと言うが、これは意外に子どもの実力を見くびっているのではないか。本格ファンタジーでも挿絵を読みとることで、その世界を受け入れる力があると思う。」と話した。

ヤーグシュ氏には、児童書担当司書の消滅や、図書館学校の廃校などアメリカの困難な状況について質問が寄せられた。これは全世界的な現象であり、現実として受け止めなければならないとのヤーグシュ氏の悲観的見解に対して、フロアから、中多泰子氏(大正大学)の「日本は常にアメリカの後追いをしてきたため同じ状況に陥る危惧がある。しかし、現在日本は官民こぞって子どもの読書推進に向けて取り組もうとしている。先進国の事例に学び、独自の解決の道を見出していきたい。」との発言があり会場の賛同を得た。

富田美樹子

最後に、国際子ども図書館長富田美樹子が、国際子ども図書館の今後の課題や、子どもの本と読書にかかわる活動の重要性について発言して、シンポジウムを締めくくった。
「今回のシンポジウムは、国際子ども図書館の今後の活動の基本を探るものとして設定したが、担うべき課題が多くあることがわかった。日本は独自の解決ができる国ではないかという話を伺って、この国際子ども図書館の設立こそがその一つであり、児童書のナショナル・センターとして、大きな事業がスタートしたことを実感した。先日、ある大学生のゼミ・グループの見学で、「展示を見て、自分が小さい時にお話をしてもらったことをありありと思い出した。特に語ってくれた人やその場の雰囲気を覚えている。」という感想を聞き、上手でなくても子どもに直接語ることの大切さを感じた。
不思議な世界と交流できるのは子ども時代の特権とされているが、子どもの本は子どもだけでなく、大人にも、心が痩せたりした時に大きな慰めを与えてくれる。そのような子どもの本の持つ力を、本日会場にお集まりの皆様と連携しあって、様々な活動を通して子どもたちに伝えていきたい。」

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