展示会・イベント

過去のイベント

国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

国際子ども図書館開館記念国際シンポジウム 抄録

バーバラ・シャリオット

バーバラ・シャリオット

私はドイツの視点から私の考えをお話ししたいと思います。アラビアの古い格言「書物というのはポケットに入れて持ち歩ける庭のようなものである。」という識見を私たちは子ども達にどのように伝えることができるでしょうか。この格言は読書を庭園での三ポイントになぞらえています。つまり文字、文章、そして考え、物語といったもの、書物のこういったものを、木や花を植えて、花や実を結ぶまでその成長を楽しみにする庭園の喜びと同じにとらえているということです。

こういった読書の楽しみを子ども達にどのように伝えるかという問いかけを北ヨーロッパで1970年代から非常に多く投げかけるようになりました。「子ども部屋の改革」と呼ばれる大きなメディアの開発があり、教育者、社会学者、そして文化の専門家が激論を闘わせましたが、メディアによる子ども時代の影響がどのようなものであるかということの結論は出ていません。しかし私達は子ども達がさまざまなソースをもとにその社会を形作るものであるということをここで認識する必要があります。そのソースの一つが本、読書であるべきなのです。

ドイツの国際児童図書館そして、国際児童図書評議会の創設者でもあるイエラ・レップマン(Jella Lepman)と私は、本によって子どもに影響を与えることが可能であるという思いをいっしょにしています。本というのは国家の文化的な宝であり、国家、さまざまな国々、民族、そしてコミュニティの架け橋になり得ますし、またさまざまな友情を培うことができます。私たち、文化的な意味での政治家、司書、そして教師として、先の格言の中にある識見を子ども達に伝えたいと思います。レップマンのライフワークとなったこの献身的な働きこそ私達の目指すものであるべきだと思います。

「少しずつ、この上下がひっくり返ってしまった世界を、子ども達への活動を通して立て直しましょう。」これはレップマンが1945年第二次世界大戦が終わってすぐに行った提言です。彼女は崩壊しつくしたドイツの窮状、特に子ども達の惨状、困難を目撃し、他の国々の児童書を文化の再教育のシグナルとして使おうという決定をしたのであります。彼女が著したメモワール『児童書という架け橋』を読んでいただければ分かると思いますが、世界20カ国の大使館、領事館に向けて彼女は手紙を送り、本を贈ってくださいと頼んだのです。

時が流れ、時代は変わりましたが、良質な本に対するニーズは未だ変りません。すばらしいドイツの作家で翻訳者である、ミリアム・プレスラー(Mirjam Pressler)の言葉を引用します。

「本がなければ世界には非常に狭い境界線しかありません。私達は多くの異なった本が欲しいのです。この本というのは我々と未知の世界を隔てる壁にあけた無数の小さな覗き穴の役割を果たすことができます。本によって外の世界の眺望を与えることができるのです。しかも1冊の本だけでは全容を知ることはできません。」

さて、ドイツでは毎年約5000冊の児童と青少年のための本が出版されています。出版社自らが選択してそのうち約10%の500冊が良質とみなされ、ドイツ青少年文学賞の審査委員会へ送られます。またドイツにおいては約2000の公立図書館がありますが、予算が削られて悩んでいます。90年代後半には主に図書の提供を行ってきましたが、現在では予算というのは全メディアに等しく配分されるようになっているため、各方面からの競争に児童書は直面しており、明かに国際的でかつ変化を続けるメディア環境という全体の脈絡の中で書物も捉えなければならないのです。

読書の普及というのは公立図書館の大きな仕事の一つとして、努力され、いくつかの全国組織によって支援されてきましたが、残念ながら読書離れは進んでいます。私は読書普及の成功というものは、教師や親たちとともに活動する専門家自らが熱心な読書家であり、かつ、本の持つかけがえのない力を信奉する人々であるときにのみ、成功すると考えます。ドイツにおいて読書普及はまず、大人への働きかけから始まります。児童書の作家やイラストレータなどの情報を提供するのです。

さて、次はリーディングミュージアムの果たす役割について述べます。これまでよりはるかに私達は努力をして本と読書を擁護することが必要であり、そして、古いとか遅れたと言われないようにする必要があります。その一つの方法として、国際児童図書館はリーディングミュージアムという新しい方法を模索しています。第一の試みとして、ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)ミュージアムを設立しました。彼の全作品を網羅し、個人的な蔵書、また個人的な宝石箱やパイプのコレクションなど作者の生涯と作品のつながりが偲ばれるものを展示しています。また、このミュージアムの最後には必ず訪問者が、エンデ自身が使った長いダイニングテーブルの朗読セクションで彼の本のページをめくります。そして資料館を出るときには、また彼の作品を読んでみよう、まだ読んでいない本も読んでみようと心に堅く決めて去っていくのです。リーディングミュージアムは、多くのニーズを満たしています。保存のための公文書館であり、研究の場でもあり、個人の品々や文学的オブジェを公開し、展示する場所でもあります。国際児童図書館はまた、エーリヒ・ケストナー(Erich Kastner)の部屋を同じようなコンセプトのもとに開いており、最近ではジェイムス・クリュス・タワー(James-Kruss-Tower)の開館も考えています。上記のような数人の作家の作品やその他を収集して資料館とすることによって一般大衆を惹きつける、こういった試みを通じて国際児童図書館は21世紀に向けて新たな一歩を歩み出すのです。

遠くない将来、さまざまな文学がフルテキスト版としてweb上で提供されるようになるでしょう。そして子ども達はコンピュータ上でそういった書物を読むこともできるようになるでしょう。子ども達が出会う多くのメディアそれぞれの違いを十分識別し、図書館においてそれぞれの特色を生かしながら子ども達に伝えていくというのが、これからの新しい図書館の引き受けるべき役目だと思います。それによって1冊の本はポケットに入れて持ち運べる庭であるという言葉の意味を理解する子ども、そして大人の数も増えていくことでありましょう。