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国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

国際子ども図書館開館記念国際シンポジウム 抄録

ヴァルシャ・ダス

ヴァルシャ・ダス

インド、またその近隣諸国のパキスタン、バングラデシュ、ネパールでの児童書や、読書普及活動の現状と課題について紹介します。これらの国々における読書とは、識字の世界に入るための三つのR、reading(読む)、writing(書く)、arithmetic(算数)の最も重要な要素であります。これらの国の地方の大半の人々、特に女子の識字能力の欠如という問題に対応しようとしています。インドにおける1993年94年の全国調査によると、5歳から9歳までの年齢層の地方に住む男子の32.7%、女子の43.7%、都市部では男子の15.9%、女子の19.6%が学校へ行っていないという結果が出ています。その結果、二つの大きなプログラムを展開することで、インド行政府は教育分野の状況改善に力を注いでいます。一つは人材開発省のもとでのナショナル・リテラシー・ミッションという運動、もう一方は世界銀行の資金供与による地域初等教育プログラムの設置です。これらのプログラムは出版産業界に大きな影響を与えました。インドでは2000の母国語と16の公用語があり、この公用語での出版物を出しています。ナショナル・ブック・トラストでは毎年400点の新刊、翻訳本、再版本を、13カ国語以上の言語といくつかの少数部族言語で、子ども向け、読み書きを覚えたての人向けに出版しています。

一方パキスタンでは成人向けの教育プログラムは存在していませんが、政府が子どもの学習の補助用読書教材を作成しています。しかしその一部の本は高価で、個人では購入できない状況です。3年ほど前にユネスコ・アジア文化センターの指揮によって行われた調査によると、都市部の49%の子ども達、地方の57%の子ども達がこれらを求めているが入手できないという状況なのです。4カ国においては、勉強よりも仕事が優先されます。これはもちろん深く根付いた昔からの伝統であるということもありますが、また、地方に住む家族の経済的な事情がここには働いているのです。

一方で親の識字能力というのも子どもの教育、全般的な生活の質に大きな影響を与えます。インドでは成人の識字プログラムが成功した場合に、子どもの小学校への入学率も向上するという経験を得ています。全国識字プログラムにおいては、インドの各村に継続教育センターが設けられており、村全体の読書のニーズに対応しようと運営されています。

政府資金で賄われて運営されている組織、パキスタンのナショナルブック財団、バングラデシュのシシュアカデミー、インドのナショナルトラスト、そしてネパールのサージャー・プラカーシャ共同組合といった国レベルの出版活動は、特に途上国の多言語、多文化の社会においては大きな意味を持ちます。手頃な価格で、多くの言語、しかも広範なトピックを扱い、多くの年齢層向けに提供できるからです。

この4ヶ国では本の流通が非常に少なく、どの国においても地方においては効果的な図書館システムを持たず、NGOの図書館システム以外は公共の図書館システムを持っていないのが現状です。そのため人々に対し、移動式のバンのサービスを提供しています。4年ほど前にネパールは実験的に移動図書館を地方の村に派遣し、識字プログラムのサポートをし始め、政府はユネスコから大きな資金供与を受けながら、地方図書館プログラムを打ち立て、初等教育プログラムの全国ネットワークをそれにリンクさせました。インドにおいてはナショナル・ブック・トラストが国立児童文学センターを通して村レベルでの本の販売や展示を行い、教員用のオリエンテーションプログラム、都市部の専門家によるお話の時間や、民話の時間というのも設けられています。そしてこれらは全国識字プログラム、あるいは地方初等教育プログラムで行われていて、それを補完する意味で州政府並びにNGOが本の普及活動を独自に行っています。

しかし、これらの国々では、現在の重要な要素としてのビジュアルメディアという視覚媒体の貧富による格差の問題と、一方では広い国土の迅速な通信手段としての有効性が、共存しています。また、増大する人口に教育プログラムや開発プログラムが追いつけずにいるという事情があります。しかも天災や軍事費の増大、不安定な政治などの問題も依然として存在するわけですが、21世紀が今の子ども達の世界であるという事実は変えられません。歴史を振り返ってみれば、憎しみを語る文学が生き残らないことは一目瞭然であり、子ども達の未来を美しく明るいものにするためにも、子どもの本は多様性の中の調和を強調するべきです。さまざまな思考、表現、そして行動において、人間性、人間味のあるアプローチが示されなければならないのであり、友情や楽観主義を語り、異文化、異文明の豊かさを説かなくてはならないのであります。来世紀は平和と寛容の世紀であるべきなのです。

私の夢、憧れは2000年以降の子どもの本が世界の人々をより近づけるように貢献することであります。これらの本は異なる文化、文明の架け橋となっていき、人々の心の宝物を発展させ、世界を最高に美しい場所にしてくれることだろうと思います。そしてぜひとも夢を実現しようではありませんか。