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国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

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「絵本の黄金時代 1920~1930年代 −子どもたちに託された伝言」

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ソビエトの絵本 −新しい社会への希望−

ソビエトでは、ロシア革命とそれに続くソビエト連邦の成立という激動の時代を経て、スターリンによる統制が強化される1930年代後半までの短い間、ロシア・アヴァンギャルドと呼ばれる前衛芸術表現のもとで、粗末な造りながらも色鮮やかな絵本が数多く生み出されました。

帝政末期のロシアでは、イワン・ビリービン(1876~1942)、ゲオルギー・ナールブト(1886~1920)ら「芸術世界派」の作家による、アールヌーヴォーやジャポニズムの影響を受けた華麗で細密な作品が知られていますが、ロシア革命は、絵本の革命ともいうべき状況を生み出しました。

「絵本の黄金時代 1920~1930年代 −子どもたちに託された伝言」

“Иван Иваныч Самовар” (イワン・イワヌイチ・サモワール) D.ハルムス詩、V.エルモラーエワ絵 1929 <ミュゼ・イマジネール所蔵>

ロシア・アヴァンギャルドの影響を受けた前衛作家たちは、ユーラシア大陸にまたがる広大な多民族国家の子どもたちや非識字者に対して、新しい社会への期待と来るべき未来へのメッセージを伝える手段として数多くの絵本を生み出しました。その挿絵は、1枚1枚がポスターとしても通用するような力強い次代へのメッセージが込められています。

また前衛詩人たちは、理想の世界の実現を信じ、絵本を通じて子どもたちに語りかけました。記号的なイラストレーションで生産技術を伝える絵本、労働の意味を子どもたちに伝える絵本、連邦を構成する民族間の相互理解や革命運動の意義を説く絵本など、人類の未来や社会への希望を託した芸術家たちの息吹を感じさせる作品が数多く生まれました。

「絵本の黄金時代 1920~1930年代 −子どもたちに託された伝言」

“Эта книжечка моя про моря и про маяк” (海と灯台についての私の本) V.マヤコフスキー詩、B.ポクロフスキー絵 1927 <ミュゼ・イマジネール所蔵>

しかし、『海と灯台についての私の本』(1927年)で「子どもたちよ、闇に苦しむ人々のために進路を照らす灯台になれ」と説いた前衛詩人ウラジーミル・マヤコフスキー(1893~1930)がその3年後に失意の中で自殺したことに象徴されるように、1930年代に入ると、社会主義リアリズムを前面に押し出すスターリン体制下の国家方針の中でロシア・アヴァンギャルドは急速に衰退し、ソビエトの絵本は、その短い黄金時代に幕を下ろしました。

 

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