服役中の10代への図書館サービス

【2016-009】

米国の公共図書館が、服役中の10代へ、本の貸出し等の図書館サービスを行っている。国会で審議事項となっている少年法の改正によって、図書館サービスを含め、服役中の若者が利用できる教育の機会への関心が高まっており、各地で様々な取組が行われている。

ボストン公共図書館は、Massachusetts Department of Youth Services (DYS)の収容施設で服役している10代に向けて、本の貸出しだけでなく、著名な作家との交流、図書館員とベストセラーについて語り合う等、多様なサービスを行っている。常習的に罪を犯す若者が多い中、こういった図書館サービスは、服役中の10代にとって、心を落ち着かせるものになっているという。また、彼らに必ず図書館利用カードの登録をさせ、各分館で行われる履歴書の書き方のワークショップ等のイベントの告知も行う。彼らを訪問していた図書館員と知り合いになった、あるいは図書館が提供してくれるサービスを思い出したという理由で、服役後に、地元の図書館にやってくる10代も少なくない。

ニューヨーク市では、市がライカーズ島の2つの少年収容施設で16、17歳の独房を廃止し、1部屋の収容人数を12人までに制限したことにより居住空間が改善され、ブルックリン公共図書館によるサービス提供が可能になった。12人が生活する各寝室の、独房だった部屋が読書室として使われるようになり、毎週金曜日には図書館からスタッフらが訪れ、本を貸出したり、本について語り合ったりしている。

また、今年発表されたUnited States Department of Education reportでは、監視が必要とはしつつも、矯正施設におけるモバイル機器、図書館の電子書籍資料やオンライン教育等、教育をサポートするデジタル・テクノロジーの利用が勧められている。それに伴い、矯正施設におけるテクノロジーの利用が各地で注目を集めており、コロラド州立図書館では、州内の2か所の矯正施設で、特に行いの良い者に限り、電子書籍を利用させている。

服役中の若者への教育について、オバマ大統領が、服役中の若者を対象とした大学奨学金の復活を表明したこともあり、釈放前であっても中等後教育等へのアクセスが可能になった。これに対しては、共和党勢力からは反対もあるが、サン・マテオ地区の収容施設に本を届けるボランティアで、元学校図書館員であるKris Cannonは、学ぶ機会がない限り10代の行動は向上しないだろうという。カリフォルニア州アラメダ郡で行われているWrite to Readとよばれるプログラムでは、服役中の若者に本を届けることが、その他の多くの教育機会へとつながり、彼らが施設を去るときに生産的な人生を送る機会を広げていることを示しており、本の貸出し以外にも、選挙人登録プログラム、詩の創作ワークショップ、高校修了者向けの大学進学プログラムも行っている。

服役中の若者と関わる図書館員のネットワーク組織であるLibrary Services for Youth in Custodyは、彼らに、より一層関わりがある本を多く集めたブックリストを作成しており、リストには、服役経験者の回想録や、非行少年グループの物語等が含まれている。

各地の図書館で、本を届けることを始め多くのサービスが行われているが、矯正施設と図書館の協力は、様々な面で10代に良い影響を与えている。ボストン中央公共図書館の10代向けサービス担当の責任者であるJessica Snowは、「私たちの大きな役割は、彼らがDYSから出たときに架け橋となること」であり、「彼らが図書館を一つの資源だと思ってくれたらいい」と述べる。

Ref:

(2016.01.26 update)