子どもと本の情報・調査

米国図書館界の現状報告書

【2017-043】

2017年4月9日から15日までの全米図書館週間(National Library Week)にあわせて、4月10日、米国図書館協会(American Library Association: ALA)が、2017年の米国図書館界の現状報告書 “The State of America’s Libraries Report 2017” を刊行した。

報告書によれば、21世紀のデジタル社会で、社会、経済、政治の変化は人々の生活に影響を及ぼしている。図書館は、人々がそうした変化に対処し、新しいテクノロジーによって他者とつながり、より生きやすい社会をつくれるよう支援している。
マイノリティに対する不寛容が広がる中、学校図書館はすべての生徒と教員が安心して利用できる場である。公立図書館は「どんな人も歓迎する」という姿勢をソーシャルメディア等で表し、人口統計や選挙、社会的公正に関するブックリストを作成したり、イスラム恐怖症や人種差別をなくすために、地域の機関と協力してさまざまな人が交流する機会を設けたり、フェイク(偽)ニュースを見分けるためのプログラムを提供したりしている。移民が社会に参画できるよう支援するなど、図書館の役割はより重要になってきている。
以下、報告書にある「学術図書館」「学校図書館」「公立図書館」「問題と傾向」「国内の問題と傾向」の5章の内、「学校図書館」と「問題と傾向」の概要を紹介する。

学校図書館

■現状と予算 ■
・図書館を設置しているのは公立学校では90%以上だったが、チャータースクール(親や教員、地域団体などが州や学区の認可を受けて設置し、公費で運営される学校)ではわずか49%だった。
・ 学校図書館の予算は5年ぶりに増加した。
■情報リテラシー ■
・スタンフォード歴史教育グループが2016年に、8年生から大学生を対象に行った調査によれば、広告とニュースの記事を区別することは難しく、インターネットの情報の信ぴょう性を判断する能力に欠ける者もいた。
・情報リテラシーの点でも、社会の不寛容の問題に対しても、資格を有する学校図書館員と十分な予算が不可欠である。

問題と傾向

■社会との関わり ■
・さまざまな図書館や機関が、移民や人種差別等に関する資料リストを作成している。
・他機関と連携する中で、図書館は十代の利用者の要望に応え、地域における存在意義を高めることができる。
■テクノロジー■
・図書館は、それぞれの子どもや家庭が必要とするデジタルメディアを手渡すとともに、子どもとその家族が責任をもって安全かつ有効に利用できるよう、支援する必要がある。
・実習・体験型学習が求められるようになり、多くの図書館が、メイカースペース(IT機器等を利用した創作活動の場)を提供している。
・収入が少ない家庭には最新のデジタル機器がなく、使い方を習う機会も少ない。すべての人がテクノロジーにふれる場として、図書館に求められる役割は大きい。
■知的自由■
・ALAによると、2016年に撤去要望があった本の多くは児童書だった。
・School Library Journal が2016年に、574人の学校図書館員を対象に行った調査によると、小中学校の90%以上、高校の73%で、撤去要望がありそうな本の購入をやめていた。最も槍玉に挙がりやすいのは性的な内容や乱暴な言葉づかいであった。2016年3月に、ヴァージニア州議会は、性的な内容を含む資料を授業で使うときは事前に親に知らせ、要望があれば別の資料に変えるよう学校に求める法案を可決したが、知事は「性的な場面があるというだけで、その本のすべてを否定し排除することはできない」としてこの法案に対し拒否権を行使した。

Ref:

(2017.05.23 update)