米国図書館界の現状報告書

【2018-045】

2018年4月8日から14日までの全米図書館週間(National Library Week)にあわせて、4月9日、米国図書館協会(American Library Association: ALA)が、2018年の米国図書館界の現状報告書 “The State of America’s Libraries Report 2018” を刊行した。

報告書によれば、社会の急激な変化にともない、図書館は、様々な人を受け入れる場となっている。また、地域と協力して、健康に関する情報や社会サービスを提供したり、就職や中小企業振興の支援を行ったり、情報源を評価するツールを提供することでフェイクニュースに対抗したりしている。コミュニティ・センターとしての図書館の役割は、広く認められつつある。

以下、報告書にある「学術図書館」「学校図書館」「公立図書館」「問題と傾向」「国内の問題と傾向」の5章の内、「問題と傾向」の中の「十代への図書館サービス」に関する部分及び「国内の問題と傾向」の概要を紹介する。

問題と傾向

十代への図書館サービス

  • 十代への図書館サービスに携わっている人を対象とした調査では、回答者の88.5%が、予算や研修の機会の不足から、十分なサービスを提供できていないと回答した。
  • 図書館と家庭が連携し、デジタルメディアの扱い方を子どもに伝える機会が増えている。
  • 近年、十代への図書館サービスにおいて、多様性や、他者を受け入れることの価値が根付いてきている。図書館は、地域の様々な人たちを迎えいれる場になるにはどうすべきかを考えている。
  • 多くの図書館は、リテラシーや想像力を育むバイリンガルの活動を提供している。
  • 2017年、米国では、自然災害や校内での銃撃など、様々な出来事が起きた。図書館は、人々が、こうした大きな問題や、人生の困難に向き合う時に助けとソーシャルワーカーであり、ナビゲーターでもある。2017年10月にカリフォルニア州北部で起きた山火事の後、サンラファエル公共図書館は、被災した子どもたちを対象とする読み聞かせや、工作のプログラムを提供した。また、ワシントン大学は、困難な状況に直面した子供たちが、ふだんの生活や安心感を取り戻すためのプログラムを、図書館が計画する上で参照できるようなハンドブックを作成した。

国内の問題と傾向

  • 学校、家庭、図書館、コミュニティ・センターなど、さまざまな機関をオンラインで利用しながら学ぶ「つながる学習(connected learning)」には、教育格差を小さくできる可能性がある。その上で、新しいテクノロジーやインターネットにアクセスできる場として、図書館の果たす役割が期待される。

Ref:

(2018.05.21 update)