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第3章 ファンタジーの時代の幕開け

フェアリーテールの娯楽的価値が受け入れられるにつれ、子どもの本の世界では、それまでの教訓臭を取り払い、ユーモアやナンセンスによって想像力を解放する「ファンタジー」の時代を迎えます。その契機になったといわれるのが、エドワード・リアEdward Lear(1812~1888)による『ナンセンスの本』(1846)でした。

1850年代に入り、ジョン・ラスキン John Ruskin(1819~1900)『黄金の川の王様』(1851)、ウィリアム・メイクピース・サッカレー William Makepeace Thackeray(1811~1863)『バラとゆびわ』(1855)、チャールズ・キングズリー Charles Kingsley(1819~1875)『水の子』(1863)など、旧来の教訓色を残しつつも想像力あふれる創作フェアリーテールとも言うべき作品が発表されます。

このような中、1865年にはルイス・キャロル Lewis Carroll(1832~1898)の『不思議の国のアリス』(1865)が発表され、ファンタジー文学は一挙に全盛期を迎えます。

「アリス」は、それまでの子どもの本が放っていたあからさまなお説教臭を笑い飛ばすとともに、その独創的で不条理なストーリーによって、自由な想像力とユーモアやナンセンスにあふれた新しい児童文学の可能性を打ち立てます。

この時期には、経済情勢の悪化や社会矛盾の深刻化に加え、1859年にはチャールズ・ダーウィンCharles Robert Darwin(1809~1882)が『種の起源』において進化論を発表するなど、伝統的な価値観に動揺が生じます。これらは、人間性や想像力への再評価をもたらすこととなり、ジョージ・マクドナルド George MacDonald(1824~1905)による『北風のうしろの国』(1871)や『お姫様とゴブリンの物語』(1872)などに続いて、20世紀にその全盛期を迎える、非現実な理想の世界を描くファンタジー文学の発達につながっていきました。

ナンセンスの本のサムネイル

3-1
ナンセンスの本(The complete nonsense of Edward Lear)
エドワード・リア/作、ホルブルック・ジャクソン/編
出版地 London
出版者 Faber and Faber
出版年 1947

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黄金の川の王様のサムネイル

3-2
黄金の川の王様(The king of the Golden River, or, The black brothers : a legend of Stiria)
ジョン・ラスキン/作、リチャード・ドイル/絵
出版地 Sunnyside, Orpington, Kent
出版者 George Allen
出版年 1892

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バラとゆびわのサムネイル

3-3
バラとゆびわ(The rose and the ring, or, The history of Prince Giglio and Prince Bulbo : a fire-side pantomime for great and small children)
ウイリアム・メイクピース・サッカレー/作
出版地 London
出版者 Smith, Elder
出版年 1891

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水の子のサムネイル

3-4
水の子(The water-babies : a fairy tale for a land-baby)
チャールズ・キングズリー/作、リンレイ・サンボーン/絵
出版地 London
出版者 Macmillan
出版年 1901

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不思議の国のアリスのサムネイル

3-5
不思議の国のアリス(Alice's adventures in Wonderland)
ルイス・キャロル/作、ジョン・テニエル/絵
出版地 London
出版者 Macmillan and Co.
出版年 1886

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北風のうしろの国のサムネイル

3-6
北風のうしろの国(At the back of the North Wind)
ジョージ・マクドナルド/作
出版地 London
出版者 Blackie
出版年 [1890]

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お姫さまとゴブリンの物語のサムネイル

3-7
お姫さまとゴブリンの物語(The princess and the goblin)
ジョージ・マクドナルド/作
出版地 London
出版者 Blackie
出版年 [1890]

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