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第5章 トイ・ブックと近代絵本の夜明けけ

(1)イギリス挿絵印刷技術の変遷

活版印刷が導入された15世紀後半以降、イギリスでは書物の文字は活版、挿絵は木版で印刷されるようになりました。16世紀中頃からは挿絵に銅版が使われはじめ、17世紀に入ると銅版による挿絵が主流となります。

このような中、18世紀の後半に木口木版を改良し復活させたのが、トマス・ビュイックThomas Bewick(1753~1828)です。木口木版は、銅版画に似た緻密な表現効果が得られるうえ、銅版より仕上がりが早く経費も安い、そして活字と同じ凸版であるため挿絵と本文を同じページに印刷できるという利点がありました。こうして挿絵は、19世紀の中頃には、銅版に代わって木口木版で印刷されるようになり、絵本の世界でも、『不思議の国のアリス』(1865)のジョン・テニエル John Tenniel(1820~1914)の絵や妖精画家リチャード・ドイル Rechard Doyle(1824~1883)の絵を手がけたダルジェルDalziel兄弟のような名彫版師も活躍しました。

一方、多色印刷は長くその方法がなく、木版・銅版・石版で印刷した上に手作業で彩色していましたが、石版による多色印刷技術の発明により、19世紀の中頃には多色石版刷り挿絵が主流となりました。19世紀の後半になると、木口木版を用いた多色刷りの技術がイギリスで開発され、他国にはない多色刷り絵本の黄金時代が築かれていくことになります。その技術の第一人者がエドマンド・エヴァンズ Edmund Evans(1826~1905)でした。

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5-1-1
海辺の賜物(Seaside divinity)
ロバート・ウィリアム・フレーザー/作、ヘンリー・ノエル・ハンフリー/絵
出版地 London
出版者 J. Hogg and Sons
出版年 1861

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5-1-2
ためになる絵本(The instructive picture book, or, A few attractive lessons from the natural history of animals)
アダム・ホワイト/作
出版地 Edinburgh
出版者 Edmonston and Douglas
出版年 1860

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5-1-3
若き日のチャイムとライム(Chimes and rhymes for youthful times!)
オスカー・プレッチ/作
出版地 London
出版者 G. Routledge & Sons
出版年 [1871]

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お婆さまの春の唄(Grandmother's spring)
ジュリアナ・ホレイシア・ユーイング/作、アンドレ・リチャード/絵
出版地 London
出版者 Society for Promoting Christian Knowledge
出版年 [1885]

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5-1-5
果物アルファベット(Alphabet of fruits (Aunt Louisa's London toy books))
ローラ・バレンタイン/作
出版地 London
出版者 F. Warne & Co.
出版年 [18-- ]

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花ことばと花のエンブレム・アルファベット(The Language of flowers, and alphabet of floral emblems)
出版地 London
出版者 T. Noble
出版年 1849

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印刷技術の図解

板目木版

板目木版・木口木版

木材の縦断面を版木に使用する凸版画。日本の浮世絵版画にはこの技法が用いられている。木版というと通常は板目木版を指す。やわらかくて彫りやすいのが特徴。

木口木版

つげなどの堅い木材の横断面を版木に使用し、銅版画などに使用するビュランという彫刻刀で彫る凸版画。西洋木版とも呼ばれる。版木が堅いので精密な線刻が可能。

凸版印刷

凸版印刷

印刷したい線や面を彫り残し、残された部分にインクを付け、上から圧力をかけて紙に印刷する方法。木版や活版印刷はこの形式に属す。

凹版印刷

凹版印刷

版面に彫った凹部にインクを詰め、紙を強く圧着させて印刷する方法。銅版画が代表的。