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児童文学者コーナー 新美南吉

作家・画家紹介

新美南吉肖像
提供 新美南吉記念館

新美南吉

1913-1943 著作一覧

南吉の本名は、新美正八。愛知県に生まれた新美南吉は、旧制半田中学校を卒業後、小学校の代用教員時代に、児童雑誌『赤い鳥』に童謡や童話の投稿をはじめます。南吉というペンネームを使いはじめたのも、このころでした。『赤い鳥』には、「窓」など多くの童謡と、「正坊とクロ」「ごん狐」などの童話が掲載されました。『赤い鳥』の応募童謡の選者だった北原白秋門下の童謡詩人たちの雑誌『チチノキ』の同人に加わり、巽聖歌や与田凖一を知ることにもなります。

その後、上京し、東京外国語学校英語部を卒業。いくつかの職業を経験したのち、愛知県立安城高等女学校教諭になります。1942年に第一童話集『おじいさんのランプ』を刊行しましたが、1943年、喉頭結核で29歳の若さで亡くなりました。没後間もなく、童話集『牛をつないだ椿の木』『花のき村と盗人たち』が刊行されました。郷土の生活世界でストーリー性豊かに展開する南吉童話は、戦後も広く読まれ、「ごん狐」は、長く小学校の国語教科書に掲載されています。

「これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。」―「ごん狐」の書き出しです。私たちは、おじいさんの語る声を聞くようなつもりで読むことになります。この一行から、小狐のごんの気もちが兵十になかなか通じなかった悲劇が村のなかで語りつがれていたこともわかります。作品から語り手の「声」が聞こえ、その「声」によって作品世界が引き出されていく―これが、南吉童話の魅力ではないでしょうか。

『赤い鳥』に発表された「ごん狐」と、南吉のノートに書き残された「権狐」は、文章が大きく異なり、『赤い鳥』を主宰していた作家、鈴木三重吉が改稿した可能性があります。また、南吉が亡くなるときに原稿をあずかり、没後に作品を広めていった巽聖歌が戦後のGHQ*1の検閲の結果などで改稿するということも起こりました。作品の戦時色の濃い部分は、いったんしりぞけられたのです。南吉童話のすがたが、あらためて明らかになったのは、原稿に立ちもどって編纂された大日本図書版『校定新美南吉全集』全12巻・別巻2巻(1980~83年)の刊行によります。南吉が何を語り、私たちが何を読みとってきたのか、考えてみましょう。

  1. *1 GHQ/SCAP(連合国最高司令官総司令部)
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児-5-1花のき村と盗人たち
新美南吉 著 谷中安規 絵
帝国教育会出版部 1943(昭和18)
(少国民文芸選 ; [6])
当館請求記号 児952-35-[6]
南吉の没した半年後の9月30日に刊行された第3童話集。南吉が生前、与田凖一に送った『赤い鳥』掲載作3編と新作4編が収録されている。

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児-5-2花のき村と盗人たち
新美南吉 著 谷中安規 絵
国民図書刊行会 1947(昭和22)
(新日本少国民文庫)
当館請求記号 児93-N-1
初刷は終戦からわずか5か月後の1946(昭和21)年。与田凖一により発行された児-5-1の再刊で、占領下という事情からか、「和太郎さんと牛」の一部が改稿され、「鳥右衛門諸國をめぐる」が削除されている。

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児-5-3牛をつないだ椿の木
新美南吉 著 大澤昌助 絵
中央出版 1946(昭和21)
当館請求記号 児995-143 (初版 児971-66)
巽聖歌の編集で中央出版から発行された4冊中の1冊。1943(昭和18)年9月10日に日本少国民文学新鋭叢書として大和書店から刊行された第2童話集をもとに作られており、生前に南吉が巽聖歌に送った当時未発表の7編が収録されていたが、この再刊では、GHQの検閲の結果、戦時色の濃い「耳」が削除されている。

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児-5-4和太郎さんと牛
新美南吉 著 大澤昌助 絵
中央出版 1946(昭和21)
当館請求記号 児995-101
児-5-3『牛をつないだ椿の木』と同じく巽聖歌編。5編を収録。GHQの検閲により、表題作が改稿されている。

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児-5-5久助君の話 : 新美南吉童話選集
新美南吉 著 巽聖歌 編
中央出版 1946(昭和21)
当館請求記号 Y8-N06-H286
久助君が登場する「久助もの」や幼年童話など6編を収録。GHQの検閲により、表題作など4作品が部分的に改稿されている。表題作は1939 (昭和14)年、『哈爾濱日日新聞』に初出で、第1童話集のタイトルにするつもりであった作品。装幀挿絵は小山内龍。

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児-5-6最後の胡弓ひき
新美南吉 著 堀内規次 絵
中央公論社 1949(昭和24)
(ともだち文庫 ; 37)
当館請求記号 児93-N-4
表題作の他に、1943(昭和18)年に病床で創作された「狐」など5編を収録。7回忌の年に刊行された童話集。巽聖歌が南吉の死を悼む解説を寄せている。

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児-5-7新美南吉童話名作選
野村千春 絵
羽田書店 1950(昭和25)
(PTA文庫 日本童話名作集 ; 8)
当館請求記号 児93-N-3
死と向き合う中で創作された童話6編は内面の深化をうかがわせる。挿画の野村千春(巽聖歌夫人)は夫とともに南吉を献身的に支えた。

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児-5-8ごんぎつね
新美南吉 著 中尾彰 絵
筑摩書房 1951(昭和26)
(小学生全集 ; 6)
当館請求記号 児913.8-N695g
「千鳥」「ランプの夜」は初出。「張紅倫」は、『赤い鳥』1931(昭和6)年11月号に初出で、戦後初めて童話集に収録された。表紙絵・口絵・挿絵は中尾彰。

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児-5-9ごんぎつね
新美南吉 著 中尾彰 絵
筑摩書房 1962(昭和37)
(新版小学生全集 ; 26)
当館請求記号 児080-Sy956-[26](初版 児913.8-N695g)
1951(昭和26)年に同社から刊行された童話集『ごんぎつね』(小学生全集6)の再版。中尾彰は洋画家、童画家。子どものための美術運動を展開した。坪田譲治の作品の挿絵など、たくさんの仕事がある。画像は「おじいさんのランプ」。

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児-5-10新美南吉童話全集 1~3
大日本図書 1960(昭和35)
当館請求記号 児913.8-N695n
巽聖歌が、坪田譲治・波多野完治・与田凖一と共同編集した、南吉初の童話全集。戦後発行の単行本を底本としているため、改作のままの箇所がある。装丁は市川禎男、挿絵は巻数順に立石鉄臣、市川禎男、太田大八による。画像は第1巻標題紙。

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児-5-11新美南吉全集 第1 (童話集 第1)
巽聖歌, 滑川道夫 編
牧書店 1965(昭和40)
当館請求記号 918.6-N695n
全8巻。巽聖歌と児童文学者滑川道夫が編集。底本は大日本図書版の『新美南吉全集』であり、また南吉の日記類が初めて公開された。これらの点について強い批判もあった。

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児-5-12校定新美南吉全集 第1巻 (童話・小説 1)
大日本図書 1980(昭和55)
当館請求記号 KH436-88
全著作物を網羅し、原稿に立ち戻り推敲課程をも明らかにして編さんされた全集。全12巻、別巻2巻。第1巻には初単行本『良寛物語 手毬と鉢の子』を収録。上段に底本とした学習社版初版本(1941(昭和16)年)、下段に自筆原稿のままの原文を示してある。

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児-5-13校定新美南吉全集 第10巻 (日記・ノート 1)
大日本図書 1981(昭和56)
当館請求記号 KH436-88
10巻には1922(大正11)年から31(昭和6)年までのノートや日記類を収録。掲載は「スパルタノート」と呼ばれている原稿帳で、「権狐『赤い鳥に投ず』」として書かれている部分。末尾に「一九三一・一〇・四」と日付があり、これは、『赤い鳥』1932(昭和7)年1月号に掲載された「ごん狐」の草稿か、投稿原稿の控えか。

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児-5-14新美南吉の世界
浜野卓也 著
新評論 1973(昭和48)
当館請求記号 KG582-29
既成の南吉作品評価への批判ともいえる評論。1981(昭和56)年文庫化の際に、引用資料を校定全集をもとに改めている。著者は児童文学作家であり評論家。児童文学研究書のほか、『堀のある村』『やまんばおゆき』などの創作も多数。画像は標題紙。

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児-5-15新美南吉童話論 : 自己放棄者の到達
佐藤通雅 著
牧書店 1970(昭和45)
当館請求記号 KG582-13
初めて人間新美南吉とその作品全体を鳥瞰した、と高い評価を得た文芸評論。佐藤通雅は岩手県出身の歌人、評論家で、巽聖歌からの信頼も厚かった。

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児-5-16新編新美南吉代表作集
半田市教育委員会 編
半田市教育委員会 1994(平成6)
当館請求記号 KH436-E221
半田市が南吉生誕80周年(没後50年)を記念して編さんした代表作集。非売品。童話13編、小説5編、詩、短歌・俳句の他、「スパルタノート」に書き残された「権狐」も掲載し、南吉作品全般を知ることができる。

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児-5-17でんでんむしのかなしみ
新美南吉 作 かみやしん 絵
大日本図書 1999(平成11)
当館請求記号 Y8-M99-613
5作品を掲載。表題作のはじめての絵本化で、背景は初めは黄色だが、でんでんむしが悲しみに気付くと寒色になり、嘆くのをやめた時、希望に満ちた薔薇色へと変化する。

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児-5-18花をうめる
新美南吉 作 杉浦範茂 絵
小峰書店 2004(平成16)
(新美南吉童話傑作選)
当館請求記号 Y8-N04-H720
土の中に埋めた花の美しさを埋けた娘と重ねる表題作他、童話5編と詩、童謡、短歌・俳句を掲載。南吉が短歌形式のものを初めて書いたのは11歳。短い生涯に短歌200首、俳句400句を残す。

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児-5-19子どものすきな神さま
新美南吉 作 二俣英五郎 絵
小峰書店 2004(平成16)
(新美南吉童話傑作選)
当館請求記号 Y8-N04-H722
子ども好きの神様が、最後に赤い小さな靴を落とす表題作他、4編の幼年童話を収録。表情豊かな絵がページごとにそえられた絵童話となっている。南吉は作品に「半分の夢と現実を描く」と書いているが、作品を通じて南吉の夢が見えてくる。

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児-5-20がちょうのたんじょうび
新美南吉 作 渡辺洋二 絵
小峰書店 2004(平成16)
(新美南吉童話傑作選)
当館請求記号 Y8-N04-H723
5編の幼年童話を収録。昔話や外国の童話を彷彿させる作品など幅広い題材を扱っている。絵は、輪郭が明確で親しみやすい素朴な画風で幼年の読み手に合う。

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児-5-21ごんぎつね
新美南吉 文 みたげんじろう え
ポプラ社 1969(昭和44)
(おはなし名作絵本 ; 1)
当館請求記号 Y17-379
素朴であたたかい印象の絵本。絵を描いている箕田源二郎は、昭和後期から活躍している絵本作家であり、美術教育運動もおこなっている。

児-5-22Le petit renard Gon
Nankichi Niimi 作 Ken Kuroi 絵 Hélène Morita 訳
Éditions Grandir c1991
当館請求記号 Y19-A22
黒井健が描いた『ごんぎつね』のフランス語版。タイトルの直訳は「ちいさなきつね、ごん」。やわらかい雰囲気でありながらも洗練された画風の絵本。

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児-5-23ごんぎつね
新美南吉 作 かすや昌宏 絵
あすなろ書房 1998(平成10)
当館請求記号 Y17-M99-19
影絵のようなくっきりとしたイラストの絵本。絵を手がけた、かすや昌宏は、海外でも絵本を出版しており、1978(昭和53)年に『のあのはこぶね』でボローニャ・ブックフェア批評家賞を受賞している。

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児-5-24ごんぎつね
新美南吉 作 遠藤てるよ 絵
大日本図書 2005(平成17)
(絵本・新美南吉の世界)
当館請求記号 Y17-N05-H239
現代的でありつつも親しみの持てる絵本作品。絵を描いている遠藤てるよは、大日本図書が出版している5冊シリーズ「てのり文庫 新美南吉童話作品集」のイラストも担当している。

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児-5-25ごんぎつね
新美南吉 作 南伸坊 絵 宮川健郎 編
岩崎書店 2012(平成24)
(1年生からよめる日本の名作絵どうわ ; 4)
当館請求記号 Y8-N12-J644
シンプルでありながら見ていて飽きないイラストの絵本。絵を描いている南伸坊は、装丁デザイナー、エッセイストとしても活躍している。

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児-5-26てぶくろをかいに
新美南吉 著 若山憲 絵
ポプラ社 1970(昭和45)
(おはなし名作絵本 ; 4)
当館請求記号 Y17-3371
単純化された中にも、温かさを感じるイラストの絵本。解説は巽聖歌による。グラフィックデザイナーから転身した若山憲は、代表作に『きつねやまのよめいり』『こぐまちゃんえほん』シリーズなどのある絵本作家。

児-5-27小狐狸买手套
新美南吉 文 若山宪 絵 崔维燕 訳
二十一世纪出版社 2009
(蒲蒲兰绘本馆)
当館請求記号 Y18-AZ6083
若山憲が絵を描いた絵本『てぶくろをかいに』の中国語版。

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児-5-28小狐狸买手套
新美南吉 著 周龙梅, 彭懿 訳
贵州人民出版社 2010
(蒲公英文学馆)
当館請求記号 Y9-AZ5676
表題作は「てぶくろをかいに」の中国語訳。ほかに「ごんぎつね」「狐」「一枚の葉書」「うた時計」「名無し指物語」「正坊とクロ」の中国語訳を収録。

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児-5-29てぶくろをかいに
新美南吉 作 柿本幸造 絵
チャイルド本社 1982(昭和57)
(チャイルド絵本館 日本の名作)
当館請求記号 Y17-9086
柔らかな色調で、子ぎつねが愛らしく描かれている絵本。画家の柿本幸造は幼児絵雑誌の挿絵を描いたのち絵本の仕事に入る。代表作に『どんくまさん』シリーズなど。

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児-5-30去年的树
新美南吉 著 周龙梅, 彭懿 訳
同心出版社 2010
(美冠纯美阅读书系 外国卷 新美南吉专集)
当館請求記号 Y9-AZ5675
表題は「去年の木」の中国語訳。このほか計38編を4つのテーマに分けて収録、解説を付している。

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児-5-31
新美南吉 作 長野ヒデ子 絵
偕成社 1999(平成11)
(日本の童話名作選 )
当館請求記号 Y17-M99-648
素朴なタッチで子どもや動物が生き生きと描かれている絵本。長野ヒデ子は絵本作家。代表作に『おかあさんがおかあさんになった日』『せとうちたいこさん デパートいきタイ』など。