児童文学連続講座 平成24年度

総合テーマ
「イギリス児童文学の原点と展開:家庭小説・冒険小説・創作童話・学校物語」

イギリスは児童文学が世界でもっとも栄えた国のひとつで、日本も明治以来イギリス児童文学には、多大な影響を受けてきました。児童文学と一口にいっても、幼年文学からYAといった対象年齢別に分かれるのはもちろん、家庭小説、冒険小説、学校物語、創作童話、その他、多岐にジャンル分化しているのが現状です。しかし、それぞれのジャンルは、いっぺんに生まれ、同じような歩みをたどって今に至ったわけではありません。これらは、それぞれ必然的に、ある種の社会的ニーズ、文化的背景があって、生まれてきたものです。この講座では、のちのち分化していくジャンルをすべて包括するような形で「家族年代記」として書かれたシャーロット・ヤングの『ひなぎくの首飾り』から説き起こし、各ジャンルの原点と、その展開を社会・文化的視点から語っていきます。ジャンルの細分化がもたらしたものの両面性を、再び今日の目からとらえなおすきっかけとなれば幸いです。

監修 川端 有子(日本女子大学家政学部児童学科教授、国立国会図書館客員調査員)

川端 有子(かわばた ありこ)

関西学院大学大学院博士課程満期退学、英国ローハンプトン大学にてPhD(児童文学)を取得。愛知県立大学外国語学部を経て、現在は日本女子大学家政学部児童学科教授。日本イギリス児童文学会会長、国立国会図書館客員調査員(平成24年度~)。
編著書『本を読む少女たち :ジョー、アン、メアリーの世界』『少女小説から世界が見る : ペリーヌはなぜ英語が話せたか』、『「もの」から読み解く世界児童文学事典』(共編著)等。

講座概要

総合テーマ 「イギリス児童文学の原点と展開:家庭小説・冒険小説・創作童話・学校物語」
監修 川端 有子(日本女子大学家政学部児童学科教授)
開催時期 平成24年11月5日(月)、6日(火)
会場 国際子ども図書館 ホール(3階)
対象 現在、図書館などにおいて児童サービスに従事する方。
1機関1名。定員60名。2日間連続して受講できる方を優先します。応募多数の場合は調整させていただきます。
備考 連続講座の全課程を修了した方に対し、国際子ども図書館長名の修了証書を授与します。

時間割

※講義内容の詳細については、講義内容の項目をご覧ください。

1日目 11月5日(火)

時間 内容
9時 受付開始
9時30分~10時10分 館内見学 (希望者のみ)
10時10分~10時15分 開講挨拶・諸注意
10時15分~10時30分 はじめに
10時30分~12時10分 シャーロット・ヤング『ひなぎくの首飾り』(1856)から始まる系譜
12時10分~13時10分 休憩
13時10分~14時50分 食から見る「ロビンソン変形譚」の系譜
14時50分~15時 休憩
15時~15時50分 参考図書紹介
15時50分~16時 休憩
16時~17時 意見交換会I(グループ討議)

2日目 11月6日(火)

時間 内容
9時30分 受付開始
10時~11時40分 創作フェアリーテイルの起源と現在
11時40分~13時 休憩
13時~14時40分 学校物語の伝統からみる「ハリー・ポッター」シリーズ
14時40分~14時55分 結び
14時55分~15時5分 休憩
15時5分~15時55分 意見交換会II(発表・講評)
15時55分~16時 挨拶・修了証書授与

講義内容

1日目 11月5日(月)

開講挨拶・諸注意
シャーロット・ヤング『ひなぎくの首飾り』(1856)から始まる系譜
川端 有子(日本女子大学家政学部児童学科教授)
この物語は、本邦未訳ですが、英米では広く愛読されていたものです。母を亡くした11人の兄弟姉妹がそれぞれ個性的な人生に旅立っていく様子をたどっているため、家庭物語、学校小説、冒険小説、その他、諸ジャンルを包括した作品になっています。この本が長年、英米児童文学に与えてきた影響を中心に再考して ゆきます。
食から見る「ロビンソン変形譚」の系譜
水間 千恵(川口短期大学こども学科専任講師)
ロビンソン変形譚とはデフォーの『ロビンソン・クルーソー』(1719)の影響下に創作されたサバイバル物語(群)のことです。本講義では、日本で出版された変形譚(翻訳を含む)を、サバイバーたちの食事に着目しながら年代順にたどることで、社会や文化との関係から子ども向けの冒険小説の歴史について考えます。
参考図書紹介
国際子ども図書館資料情報課長

2日目 11月6日(火)

創作フェアリーテイルの起源と現在
芦田川 祐子(文教大学文学部英米語英米文学科准教授)
フェアリーテイル(おとぎ話)は文化と密接に関わる物語です。ここでは、近現代に盛んに出版されるようになった創作色の濃いフェアリーテイルをいくつかとりあげ、時代を追ってその多様性を概観しながら、文化や社会との関係を考えていきます。
学校物語の伝統からみる「ハリー・ポッター」シリーズ
菱田 信彦(川村女子学園大学文学部国際英語学科教授)
「ハリー・ポッター」シリーズは『トム・ブラウンの学校生活』(1857)に代表される「学校物語」の伝統を受継いでいますが、同時に学校が体制維持のための「装置」としていかに機能し得るかをリアルに描いています。魔法世界に反映されたイギリス階級社会のあり方を分析し、ホグワーツがそこで果たしている 役割を明らかにします。

講義録

  • 印刷版

本講義録「イギリス児童文学の原点と展開:家庭小説・冒険小説・創作童話・学校物語」の印刷版は、公益社団法人日本図書館協会から発売されています。印刷版の入手に関するお問い合わせは下記までお願いします。

公益社団法人日本図書館協会
〒104-0033 中央区新川1-11-14
電話:03-3523-0812(販売直通)

問い合わせ先

国立国会図書館国際子ども図書館 企画協力課協力係
電話:03-3827-2053(開館日の9時30分~17時) FAX:03-3827-2043
〒110-0007東京都台東区上野公園12-49

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