スライドは全8ページです。 スライド1 寄せられた質問への回答 IFLA児童・ヤングアダルト図書館分科会議長 マリアンヌ・マーテンス氏 スライド2 改めましてマリアンヌ・マーテンスです。 第2部を始めます。 スライド3 今回、国際子ども図書館から世界の青少年向け図書館サービスについて非常に優れた鋭い質問を5ついただきました。 そこで国際的な視点をもって、当分科会にふさわしい回答ができるように、世界各国のメンバーが直面している事例を調査しました。 アメリカの視点を持つ私に加えて、ノルウェーのリンとトーン、メキシコのアウレア、イタリアのアントネッラ、シンガポールのヒュイ・ビン、カナダのナタリー、トルコのセブギ、デンマークのアンから回答を得ました。 最初の質問です。 「子ども向けの資料が変化し、子どもがデジタルツールに触れる機会が増える中、現代の児童図書館員はどのようなスキルや知識を身につけ、どのようなプログラムを提供していくことが求められるでしょうか?」 メンバーの回答はそれぞれ違いましたが、次に挙げるいくつかのテーマについては一致していました。 まず私たちが全員一致したのは、図書館員はどこにいようと、適切に仕事をこなすために専門能力を開発し続ける必要があり、技術革新に関しては早期に受け入れなければならないという点です。 専門能力の開発は児童図書館員に不可欠で、図書館学教育のゴールは学位の取得ではありません。 科学技術の急速な進歩に伴い、図書館員は新しい技術形式をいち早く受け入れる必要があります。 常に新しいツールを探求し、試さなければなりません。 例えば人工知能(AI)や大規模言語モデル、画像ジェネレーターです。 このようなツールの能力や利用法を理解するとともに、児童やヤングアダルトに役立つツールかどうかも検証します。 図書館員は率先してこれらのツールを使い、小さな子どもとその家族に、使用に伴う利点と、特に危険性を教えなければなりません。 地域を問わず、デジタルリテラシーと新技術の知識は重視されています。 トルコの学校司書セブギが強調するのは、コーディング・ツールやインタラクティブ・メディア、そして教育アプリの効果的な使用です。 彼女は対話型の読み聞かせや体験型学習をサポートしており、3Dプリンターなどの高度なツールを利用します。 または、持続可能で予算もかからないごく簡単な手芸用品や、リサイクル/アップサイクル素材も使うそうです。 児童図書館員は最新の情報を入手するために、幅広い基本スキルが必要です。 もはや本だけに関わる仕事ではないのです。 将来図書館員になろうとしている学生たちが、読書や本が好きだと言うのは素晴らしいです。 しかし、ヒュイ・ビンが言うように、読み聞かせだけではなくマーケティングや宣伝、ビデオ制作、協働のスキルなども今はすべて大事な能力です。 さらにデータ分析やデザイン、プレゼンテーション、顧客サービスのスキルも必要だと言います。 アメリカではアウトリーチスキルも必要です。 社会福祉機関から、医療サービスやフードバンクに至る地域の組織との協力関係の構築を得意とする人材を必要としています。 そうすることで図書館は影響を広げられるのです。 デンマークのアンは、これほどデジタル技術が進歩していても印刷物とのバランスが重要だと言います。 画面の見過ぎによるマイナス面に、社会の認識が高まっているからです。 アンは読書の楽しみを育む重要性を強調することでデジタルツールを補完します。 図書館は読書を教えませんが、子どもが自由時間に読書に没入する楽しみをサポートします。 オンラインの安全性も、皆が持つ共通の懸念です。 デジタル技術に通じ人に教えられるようになることは、私たち全員に重要です。 セブギはメディア批判の教育が大事だと言います。 同様に、カナダのナタリーやノルウェーのリンとトーンは、子どもには幼い頃から批判的に考える力を身に付けさせ、誤情報や虚偽の主張を見分けられるようにすべきだと言います。 アントネッラとセブギは、メディアリテラシー、ゲームやメーカースペースなど、この種のスキルを楽しく育める活動を紹介してくれました。 シンガポールのヒュイ・ビンは、図書館員は最新のメディア形式とデジタルツールを理解し、AIリテラシーを備える必要があると言います。 サイバーセキュリティーとプライバシー問題の理解も不可欠です。 ケント州立大学の修士課程では、これらを未来の図書館員に教えています。 セーファーインターネットデーワーキンググループは、世界レベルでオンライン上の安全に関する情報を提供します。 基本的レベルであっても、いわゆる“ネチケット”の深い理解は必要です。 これはオンラインでのエチケットで、要は礼儀正しくすることです。 安全対策は非常に重要で、責任をもってデジタル世界を進む若者を導かなければなりません。 とはいえ、若者にサービスを提供する図書館員に大切なのは、彼らを尊重することだとアウレアは強調します。 若者の複雑さや、彼らの読書の選択を理解しなければなりません。 アウレアによると、図書館員は読書を構成するものの概念を広げ、マンガやファンフィクションなど多様な形式を含めるべきだそうです。 たとえ従来、図書館員や教育者ほかの大人によって社会的に批判されていてもです。 アウレアは、読むことはすべて読書で、私たち大人は、若者が読み意味を見出すものならば、価値を認める必要があると考えています。 図書館員は子どもたちが読んでいるものに関心を持つべきで、若者が読むものについて持論を押し付けてはいけません。 デンマークの図書館員であるアンも、書籍市場と進化する若者の好みを理解する必要性を強調します。 子どもが読みたいものを読めるようにすることは、結局のところ図書館員の中核的な責任なのです。 スライド4 次は「絵本で世界を知ろうプログラム」についての質問で、 「児童・ヤングアダルト図書館分科会で実施している「絵本で世界を知ろうプログラム」は、多様性の尊重につながる取組だと思います。 そのような観点から、現在の世界の児童書出版にはどのようなトレンドがあるとお感じですか?」 私は“多様性と表現”をトレンドと考えたくありません。 むしろ根本的に必要で、増やす必要があるものだと考えています。 アメリカで私たちが教えられたのは、ルーディン・シムズ・ビショップ博士の「鏡」「窓」「ガラスの引き戸」という枠組みからです。 私たちは「鏡」となる本を探します。 子どものアイデンティティーを映し、自分自身を見ることができる本です。 「窓」になる本は、子どもにほかの人々の生活を見せてくれます。 最後に「ガラスの引き戸」となる本は、体験を通して共感を促す本です。 アメリカでは同時に、書籍を検閲し発禁さえしようとする動きが増えており、全米で本へのアクセスを提供する上で重大な課題になっています。 多様性に富むシンガポールで図書館員が求めるのは、地域レベルの民族的多様性を訴える絵本だけではありません。 他国の文化や歴史、言語、独自の特徴への理解を広める本も探すそうです。 ノルウェーでは若者向けの本は、人種や性別など、アイデンティティーの多様性に焦点を当てているそうです。 デンマークでは絵や文にLGBTQIA+の内容や、従来とは違う家族構成、そして、多様な文化表現を取り入れた本に人気があるそうです。 グラフィックノベルも6歳以上の全年齢層に人気があります。 カナダのナタリーは、世界の多様性をより包摂的にし分かりやすく発表する方法があると言い、社会的な長所と短所も強調しています。 イタリアには革新的な形式の本が多いそうです。 文字のない本は、移民の人々と関わる場合に最適です。 例えば記号でお話を語る本、点字の本のように包摂性を育む障害のある子ども向けの本。 ディスレクシアでも読みやすいフォントを使った本もあります。 読書習慣や課題の変化も見られます。 アウレアは、メキシコでは地元の出版業界の統合により、小規模で専門性のある独立した出版社が衰退していき、大手は多様なコンテンツの出版に力を入れなくなると言います。 メキシコでは紙の値段が上がり本の価格も上昇するという問題もあり、本を手に取りづらくなっています。 その結果10代の若者はオンラインに移行しています。 再生回数やランキング― ディスカッション・フォーラムを含むプラットフォームが人気です。 アウレアは図書館員として、特に10代向けの読み物について、私たちは従来の概念を再定義する必要性に迫られていると指摘します。 セブギによるとトルコでは、社会性と情動の本が流行っているそうです。 気候変動、社会正義、共感をテーマにしている本です。 すべての本は多様な家族構成や伝統、人生経験を際立たせた物語に焦点を当て、敬意と理解を育もうとしており今では広く入手できます。 イタリアのアントネッラは、移民、障害、協力などシリアスなテーマを扱った本を多数見かけ、そういった児童書も増えていると言います。 このようにシリアスなテーマの本は「絵本で世界を知ろうプログラム」やInstagramのSDGブッククラブで多数紹介しています。 当分科会のSDGブッククラブでは、これらの難しい問題に取り組む世界中の本を勧めています。 スライド5 これは楽しく回答できる質問でした。 はい、私たちの国はそれぞれ図書館をめぐる文化や状況が違います。 「IFLAは、図書館をめぐる状況や文化が異なる様々な国からメンバーが集まっています。 そのような組織を運営する大変さや、そのような組織だからこそできることは何だとお感じですか?」 私たちには、例えば地政学的や政治的な壁があります。 通商禁止や地政学的緊張により、活動への参加や協働ツールの利用が制限されかねません。 ロシア国立青少年図書館のマリアとアントンは優秀な仲間ですが、作業ツールにアクセスできません。 IFLAが使うのはアメリカのプラットフォームで、ウクライナ戦争に伴い使用禁止となったからです。 紛争地帯にある国々のメンバーもいます。 例えばロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナでは見解が異なることがあるかもしれません。 国家間の紛争があっても、人が最優先です。 私たちは合議制の維持に努め、たとえ宗教、政治、文化の面で意見が異なっていても、理解と協力を進めるためにうまく付き合い溝を埋めようとしています。 結局は私たちを分断するより団結させるものの方が多いからです。 私たちには文化と言語の壁があり、言葉も問題です。 ナタリーが指摘したのは、メンバーの多くがIFLAの7つの公用語以外の言語を話すため、意思疎通と包摂性の実現に手間がかかることです。 翻訳、文化的配慮そして慎重なコミュニケーションは、包摂性を確保し誤解を避けるために不可欠です。 文化の違いもあります。 ヒュイ・ビンは視点や優先事項の違いは、互いが抱える問題について学び、共感を育む機会にもなると指摘します。 世界中の出来事は私たちに影響を及ぼします。 バングラデシュの洪水ではメンバーのラジーナが影響を受けました。 アントネッラの図書館はフィレンツェの洪水で壊滅しました。 2023年のトルコの地震ではセブギが影響を被り、パク・ジュオクほか韓国の図書館員たちは母国の不穏な情勢に影響を受けています。 多様な文化規範は誤解を招くこともあります。 しかし成長と学習の機会も与えてくれるのです。 対面会議の大きなメリットの1つは、中間会議であれ、年次大会であれ障壁を乗り越えられるということです。 相互理解を促進し真の友情を育むことができます。 このほか、運営上で非常にやっかいな問題は時差に関わることでしょう。 メキシコ、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアに住むメンバーと会議を開くのは大変です。 会議の時間が人によって午前5時だったり午後11時だったりするのです。 絶対に必要な場合は会議を2回開きます。 時間帯で分かれ、議事録を2つ用意して互いの情報を共有しています。 休日や休暇の日程も人それぞれです。 例えば、7月に北欧の方との会議を計画してもきっと難しいはずです。 または8月に南欧の方との会議を計画するのも同様です。 試してみれば分かりますが、それぞれ、その月は休暇なのです。 また、みんなが対面での会議を好んでいるとしても、一部のメンバーはそれができないこともあります。 当然、旅行には資金が必要で、資金が限られている人は出張する金銭的余裕がありません。 これはグローバルノース/サウス間で非常に大きな不平等を生み出しています。 中間会議と年次大会は毎回開催地を変えますが、資金のない人が必ずしも出席しやすくなるわけではありません。 たとえグローバルノースのメンバーでも、所属機関が予算危機にあるかもしれません。 私の大学も現在その状況で、旅行しやすいとは言えません。 その時点ではお金があっても、旅行に行けないのです。 多くのメンバーは、会議に出席するための資金を得ることは不可能かもしれません。 例えば2025年にカザフスタンで開催されるWLICには、出席が非常に困難になるでしょう。 組織として包摂的であり続けたければ、オンライン参加という選択肢が必要です。 当分科会は中間会議で行っていて、常にオンラインで参加することが可能です。 しかし、当然これは相手側のインターネット環境がこのような方法を選択できるように整っている必要があるということです。 残念ながら世界のIFLAメンバーの多くは技術リソースが限られており、問題はお金だけではありません。 インターネットにアクセスできなければ参加は困難でしょう。 IFLAの利点は豊富な知識を共有できることです。 メンバーの多様な視点と経験は非常に有益です。 異文化間の交流は共感と理解を育み、世界中の子どもと家族全体のアドボカシーを促進します。 私たちは共通の目標を持って一致団結して取り組んでいます。 世界中の子どもとその家族への最高のサービスを提供し、共通の目的のために違いを乗り越えます。 スライド6 「紛争や貧困で苦しむ子どもたちに図書館ができること、図書館が担うべき役割は何でしょうか?」 これは非常に大きな問いです。 図書館は世界中で数々の取組をしています。 先ほども、アメリカでの書籍の発禁と閲覧制限に伴う問題に触れました。 ただし図書館は今も、民主主義の最後の砦の1つとみなされ、子どもも含むすべての人の包摂的な空間として役割を果たしています。 アメリカの図書館はしばしば外部組織と提携して、放課後の軽食や個別指導などのサービスを提供しています。 ホームレスにサービスを提供する社会的組織もありますし、図書館の移民へのサービスを支援してくれる組織もあります。 図書館には誰でも居場所があると広めることが目標です。 シンガポールの図書館は平等をもたらす場所で、子どもの好奇心を刺激し、学習を支援する空間とサービスを提供するそうです。 ノルウェーのリンとトーンは図書館は困難な生活を“休止”し、文学を通じて子どもとその家族に希望を与える安全な場所だと言います。 デンマークのアンも図書館は安全な空間で、文学が提供できる逃避と安心への入り口だとしています。 トルコでは、図書館は安全で、特に紛争や貧困にあえぐ子どもたちにとって癒しと学びと社会的つながりのための場所です。 例えば、2023年の地震のあとガズィアンテプなどの都市にテント図書館が設置され、子どもとその家族に本や資料を提供しました。 イタリアでは、図書館は評価や批判のない場所で安らぎと一体感を得られるそうです。 ウクライナ難民にとって、図書館は心が休まり、戦争の不安から逃れられる場所です。 図書館は重要なリソースを提供する場でもあります。 アメリカでは図書館がデジタルリソースや教育やオンラインの安全講習を提供しています。 パンデミックの間は特に盛んでした。 ビデオや音楽制作などの放課後プログラムを提供する所もあり、10代の若者に貴重なスキルを授けています。 また、保健機関との提携により、図書館は、ほぼ診療所のようにワクチン接種、基本的な歯科治療、また一部の健康リソースも提供します。 例えば、クリーブランド公共図書館のフェルトン・トーマス館長は同図書館を「民衆の大学」と呼び、学びたいことは何でも図書館で学べることを目指しています。 トルコの図書館は書籍、教材、デジタルリソースへのアクセスを提供し、子どもの学習と成長の機会を確保します。 イタリアでも、移民や難民が多い地域で図書館がリソースを提供し、安心して土地に慣れ、母国ともつながれるよう支援します。 スライド7 最後の質問です。 「子どもの本のために精力的な活動を続ける原動力は何でしょうか?」 とてもステキな質問ですね。 鍵となるのは当分科会のメンバー全員が、幼い子どもや、若者とその家族を深く気にかけていることです。 子どもが読書を好きになる手助けをしたり、その人生に触れる可能性を大切にし、希望を持つことと人生の意義を伝えて子どもに寄り添おうとします。 図書館員の賃金は世界中のほぼどこでも高くありません。 IFLA児童・ヤングアダルト図書館分科会の委員は無給で、多くは大変な仕事です。 そして皆、会議に出て貢献し続けてくれます。 彼らの意欲の源をご紹介しましょう。 アウレアの場合、自分の人生経験が原動力です。 若い頃、周囲の大人に尊重されなかったことを忘れずにいて、そのような立場にある子どもに共感することができます。 彼らは恐らく、大人が読んではいけないと思うものを読み、物事に批判的なのでしょう。 または急に成長してかわいい子どもではなくなり、大人はもう注目しないのかもしれません。 だからこそ彼らに働きかけるのです。 当グループのほぼ全員が、若者が本に夢中になり、もっと読みたがる姿を見ると非常にうれしく、やる気が起こると言っています。 セブギは児童書を扱う仕事に夢中だと言います。 本は子どもの心を輝かせ、無限の世界への扉を開くからだそうです。 このような意見は複数あり、子どもが物語に入り込んで目を輝かせていると、私たちは前に進めます。 また児童書は子どもに優しさや好奇心を教え、大きなアイデアを探求する場を与えてくれます。 本には、安らぎを与えたり想像力を刺激したり、笑顔にしたりすることで子どもの人生を変える可能性があります。 それが私たちの力になります。 当分科会の仲間も、今聞いている皆さんも同様に感じてほしいと思います。 また子どもには、本を読む権利があります。 これも私たちの信条です。 子どもは皆、質の高い本に触れる機会がなければなりません。 政治問題や本の発禁があれば特にです。 これはアメリカでも言えることです。 子どもの読書の自由を確保するために、民主主義と包摂性という意識は不可欠です。 すべての子どもが本の変革力を体験できるよう力を尽くします。 スライド8 どうもありがとうございます。 ご清聴ありがとうございました。 どうぞお元気で。