図書館が難民の子どもを支援(米国)

【2017-019】

米国で公共図書館が、難民の子どもたちを支援する活動が広まっている。

難民の親たちは、子どもたちが新たなコミュニティへの架け橋となってくれることを願う一方で、同時に米国文化に染まりきってほしくはないと考えている。そのため、難民支援を行う図書館でも、彼らが母国の文化や生活に触れ続けながら、米国社会において新たな生活を築けるよう支援が行われている。難民の子どもたちが、米国の文化や社会に積極的に関われるような活動を提供しながら、母国語で書かれた本の提供や、自由活動を通じて、子どもたちが受容されていると感じられるよう努めている。ケンタッキー州ルイビル地区には、ソマリア、スーダン、北アフリカ、ミャンマー他各国からの移民が定着している。ルイビル公共図書館(Louisville Free Public Library)で行われている“conversation clubs”では、難民や移民の若者がボランティアとして新しく渡米してきた難民の英語学習を助けたり、文化的なイベントを開催したりしている。ボランティアの若者にとっても、支援活動を通してリーダーシップを養ったり、大学進学について相談できる人に出会う機会となっている。同図書館では、ギターやチェス等、幅広い分野でのイベントを開催し、成功しているが、担当者によれば、ミャンマー国内で使われているカレン語など、少数民族の言語の本を探すのが課題とのことである。

また、多くの難民の子どもたちが親と離れて米国へ来る。カリフォルニア州およびテキサス州の図書館では、ラテンアメリカ人およびスペイン語話者への図書館サービスを推進しているREFORMAと協力し、スペイン語と英語といった2か国語で書かれた子どものための本の寄贈を募り、アメリカ―メキシコ間の国境を越えてきたエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス等からの難民の収容施設、保護施設等にいる子どもたちに配っている。REFORMA が行うChildren in Crisisの取組は、米国図書館協会(ALA: American Library Association)の2015年大会で提案され、国際児童図書評議会(IBBY: International Board on Books for Young People)の助成を受けて行われており、ボランティアが本や毛布等を届けたり、子どもたちの図書館カードの登録をしたりしている。

家族で米国へ来た難民に対して、子どもたちの生活をより円滑にすべく、親や家族全体を対象としたサービスを行う図書館もある。テネシー州ナッシュビルには、米国最大のクルド人コミュニティがあり、スーダン人も多く居住している。ナッシュビル公共図書館(Nashville Public Library)では、「暮らしに本を」(Bringing Book to Life)プログラムの一環として、地域の学校管区内の英語学習支援部門と連携し、支援を行っている。図書館の近くに住む難民の家族や、読み書きに困難のある家族を図書館に招き、子どもの小学校への入学や幼稚園への入園手続きについての情報を得られるようなイベントを開催している。

図書館でのサービスに限らず、図書館員が地域の学校に出向いて難民の子どもたちを支援する場合も多い。6年前からPre-K(3~5歳対象)のクラスを対象に出張お話会を開始しているユタ州のソルトレイクシティ公共図書館(Salt Lake City Public Library)の図書館員は、当初、教室で図書館員と意思疎通できなかったり、子どもたちの輪に入れなかったりする難民の子どもたちがいることに気づき、指人形を使う等の工夫をすることで子どもたちが物語に入り込めるように工夫した。同館は12人のスタッフで、月に18校の85学級を訪問している。子どもたちが休みの日に家族で図書館に行くと、普段から教室に図書館員が訪れているため、すでに子どもたちは図書館員と顔なじみになっているということもよくある。難民の子どもたちは地域社会になじむための一助を担っており、彼らが新たな生活に順応するために、図書館の果たすべき役割は大きい。

Ref:

(2017.03.22 update)