2019年フェニックス賞及びフェニックス絵本賞の受賞作品決定

【2018-079】

米国児童文学協会(Children’s Literature Association: ChLA)は、2019年フェニックス賞(Phoenix Award)の受賞作品が、ルイーズ・アードリック(Louise Erdrich)の “The Birchbark House”(邦訳『スピリット島の少女: オジブウェー族の一家の物語』)、フェニックス絵本賞(Phoenix Picture Book Award)の受賞作品が、Christopher Myers の “Black Cat” に決定したと発表した。

ネイティブ・アメリカンの少女、オマーカヤズの一年間の物語 “The Birchbark House” では、家の手伝いの中で彼女が嫌いなこと、姉弟との関係、カラスとの絆などを通して、19世紀半ばのオジブウェー族の生活が描かれている。作者自身による挿絵にはあたたかなユーモアがあり、オマーカヤズが暮らす場所の雰囲気が伝わってくる。西部開拓時代のネイティブ・アメリカンが、横暴な白人開拓者たちをどう見ていたかを捉えた同作は、開拓者たちの視点から描かれた従来の作品の対極に位置する。リアリズムと神秘主義があわさって、重層的でありながら、一貫性のある物語となっており、文化の記憶を守るストーリーテリングの重要性が示されている。

“Black Cat” は、町と、そこを堂々と歩きまわる猫の絵本であり、リアルで荒っぽい美しさに満ちている。写真、コラージュ、インク、グワッシュなどで描かれた景色も、騒音とイメージの組み合わせも、一見ちぐはぐだが美しく、深い思いを伝え、猫も町も独立した存在として描かれている。ネットのないバスケットのゴールをくぐりぬける猫のシルエットをはじめ、町のもつ美しさと心を乱す緊張感を、文と写真が際立たせている。象徴的かつ刺激的で、ユニークで大胆な作品として、読み終えた後も心に残る。

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所蔵リスト

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(2018.08.21 update)