2019年ニューベリー賞およびコルデコット賞受賞者発表

【2019-017】

米国図書館協会児童図書館サービス協会(Association for Library Service to Children, a division of the American Library Association: ALSC, ALA)は、1月28日、2019年のニューベリー賞(Newbery Medal)受賞者は、“Merci Suárez Changes Gears” の著者 Meg Medina [ⅰ]コルデコット賞(Caldecott Medal)の受賞者は、“Hello Lighthouse” の著者ソフィー・ブラッコール(Sophie Blackall) [ⅱ] に決定したと発表した。同賞は、前年に米国で発表された英語の児童書を対象とし、米国の作家および画家に与えられる。 (作者の日本語読みは、判明した場合のみ記載した。)

“Merci Suárez Changes Gears” では、勇敢で魅力的な少女 Merci が、家族に助けられながら日々の困難を乗りこえていく。家族の形が変わりつつある中、多様な文化的アイデンティティをもちつづけることの複雑さを繊細に描いた物語である。審査委員長の Ellen M. Riordan は、「キューバ系米国人家族の生活が、リアリティと共感をもって巧みに描かれている。温かで誠実な作品だ」と述べた。

次点作品に当たるニューベリー賞オナーブック(Honor Books)には、Veera Hiranandani の “The Night Diary”、Catherine Gilbert Murdock の “The Book of Boy”(Ian Schoenherr 絵)が選ばれた。

コルデコット賞を受賞した “Hello Lighthouse” は、インクと水彩による見事な絵で、灯台とそこに暮らす家族に光を当てた作品である。様々な天候の中立ちつづける、はっとするほど美しい灯台と、温かな雰囲気に包まれた円形の内部が、交互に登場し、細部にまで心を配り、優れた線と構図で巧みに表されている。審査委員長の Mary Fellows は、「子どもたちは夢中になって、楽しんで読むだろう。開くたびに新たな発見がある。」と評価した。

同じく次点作品にあたるコルデコット賞オナーブックには、Juana Martinez-Neal の “Alma and How She Got Her Name”、Grace Lin の “A Big Mooncake for Little Star”、ブライアン・リーズ(Brian Lies)の “The Rough Patch”、Oge Mora の “Thank you, Omu!” が選ばれた。

また、米国図書館協会の一部門であるヤングアダルト図書館サービス協会(Young Adult Library Services Association : YALSA)は、ヤングアダルト作品を対象とするプリンツ賞(Michael L. Printz Award)の受賞者が、Elizabeth Acevedo の “The Poet X” に決定したと発表した。“The Poet X” は、率直で表現力豊かな詩の形で書かれた小説である。審査委員長の Rachel Fryd は、「語りに新しさがあり、いきいきとした登場人物がページから飛びだすようだ。主人公が、自分のおかれた環境に疑問をもち、力を見出すまでの過程にひきこまれる」と評価した。“The Poet X” は、2018年11月に全米図書賞児童文学部門(National Book Award for Young People's Literature)も受賞している。

プリンツ賞オナーブックには、Elana K. Arnold の “Damsel”、 Deb Caletti の “A Heart in a Body in the World”、Mary McCoy の “I, Claudia” が選ばれた。

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所蔵リスト

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Meg Medina

ラテン文化に固有のものと、普遍的なものの両方を取り上げ、文化が交わる様を子どもや若者の目を通して描いている。2014年に “Yaqui Delgado Wants to Kick Your Ass” でプーラ・ベルプレ賞を受賞した。多様性を表す児童書を推進する運動 We Need Diverse Books の諮問委員会に入っている。

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ソフィー・ブラッコール(Sophie Blackall)

オーストラリアで生まれ、現在はニューヨークに住んでいる。遠く隔てられた場所で、なにがあっても立ちつづける灯台の姿に、長年惹かれてきた。細やかでユニークな絵で評価され、2016年に “Finding Winnie”(邦訳『プーさんとであった日 : 世界でいちばんゆうめいなクマのほんとうにあったお話』)でコルデコット賞を受賞した。

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(2019.02.26 update)