2012年科学あそび:たまごの実験~アーチ型の秘密をさぐる

当日

当日のプログラムは、以下の通りです。

<プログラム>

  1. 1.質問1:卵を産む動物は?
  2. 2.質問2:卵の形は?
  3. 3.実験1:生卵を机の上に立てる
  4. 4.実験2:生卵を水の中で立てる
  5. 5.実験3:生卵の上に立つ
  6. 6.工作:クルクル卵を作ろう
  7. 7.卵の秘密
  8. 8.ダチョウの卵
  9. 9.本の紹介、ブックトーク

1.質問1:卵を産む動物は?

講師が子どもたちに「卵を産む動物を知っていますか?」と問いかけると、たくさんの子どもたちが手を挙げて答えました。「鳥」、「虫」などのほか、中には哺乳類としてはめずらしく卵を産む動物である、「カモノハシ」と答える子もいました。

手を挙げている子どもたち

2.質問2:卵の形は?

まずは子どもたちが、自分のプリントに卵の絵を描いてみました。講師がテーブルを回って1人1人の絵を見ていくと、卵の表面に細かいボツボツを描いている子がいました。それを講師が紹介すると、子どもたちが一斉にボツボツを追加で描き始める鉛筆の音が、会場に響きました。

卵の絵を描いている子どもたち

次に子どもたちは、卵の形を言葉で説明します。これも、いろいろな言葉が出ました。丸い、楕円形、片方はとがっていてもう片方は太い、などです。最後に講師が、①産みやすい、②卵のアーチ型は外からの力に強く内側からは破りやすい、③転がっても巣に戻ってくる、という卵型の3つの特長を説明しました。子どもたちは卵の上下を指で挟んで力をかけても割れないことを確かめたり、講師が卵型の模型を転がして元の場所に戻ってくる様子を見て納得したりしていました。

3.実験1:生卵を机の上に立てる

事前に卵を立てられるかどうかを予想した後、子どもたちが生卵を机の上に立て始めました。どの子も顔つきは真剣そのものです。ほどなく、「立った!」という声が上がりました。2~3人の子どもたちが卵を立てられたところで、講師から、卵の表面のボツボツが支えになって、そのバランスがうまく取れると卵が立つ、という説明がありました。質問2で子どもたちが一生懸命描いた卵のボツボツは、卵を立てる時に役立っていたのです。

卵を立てる子ども

4.実験2:生卵を水の中で立てる

続いて、水の中で生卵が立てられるかどうかを予想し、こちらも実験して確かめました。生卵に顔を描いて水の中に沈めたところ、卵は立ちませんでしたが、水に塩を加えてかき混ぜると徐々に卵が立ち始めました。そして、卵に書いた顔の絵が逆さになって卵が立つと、子どもたちから歓声が上がり、その光景に見入っている様子が見られました。とがっている方が下になり、空気が入っている気室があるおしりの方が上になるという予想外の展開に、子どもたちはとても驚いているようでした。

卵を水中に立てる実験

5.実験3:生卵の上に立つ

次は、20個並べた卵の上に板を置いて、その上に立ってみる実験です。1人ずつ順番に、卵の上に立っていきます。卵の上に上手に立つためには、両足でそっと乗って、そっと降りる必要があります。子どもたちは上手に乗っていき、卵が割れる気配はありません。卵のアーチ型が子どもたちの体重を支えていることが分かります。

卵に乗る子ども

でも、ある子が、卵に乗ることができた喜びから、ジャンプして飛び降りたその瞬間、「グシャグシャ!」と、卵が割れる音がしました。残念!でも、ジャンプする時には、瞬間的に体重以上の重さがかかる、ということがよく分かりました。

続いて職員と講師も乗ってから、最後に卵を確かめてみると…まだ割れずに残っている卵もありました!講師によれば、1個の卵が約5kgの重さを支えられるということなので、20個あれば100kgの人が乗っても大丈夫なはずです。そこで、上手に乗り降りすると卵は全く割れないそうなのですが、割れてしまったのも、上手く行くこともあれば失敗することもある実験の醍醐味です。

6.工作:クルクル卵を作ろう

生卵の上に立つ順番を待つ間に、卵型の発泡スチロールを磁石の力で回転させる「クルクル卵」を作りました。子どもたちはそれぞれ工夫をこらし、発泡スチロールに絵を描いたり、紙皿で迷路を作って発泡スチロールを動かしたりしていました。なかには、紙皿をくり抜いたり、モールでトンネルを作ったりと、ユニークな発想をする子どもも見受けられました。

工作している子どもたち

7.卵の秘密

まとめとして、講師から、卵を産む動物や卵の構造の説明がありました。そして、世界一大きい卵として、ダチョウの卵の紹介がありました。

8.ダチョウの卵

世界一大きいダチョウの卵は、いったいどのくらいの大きさなのか、講師が卵を取り出すと、みんな身を乗り出して見ていました。そして、それを割ってみることにしました。卵を割るお手伝いすることになった子どもたちも、周りで見ている子どもたちも、ダチョウの卵が上手に割れるかどうか、中身はどうなっているのか、興味津津です。子どもたちが卵を押さえている中、講師がドライバーと金づちを使って、慎重に殻を砕いていきます。いよいよ卵が割れて中身をボウルにあけると、子どもたちから歓声が上がりました。ダチョウの卵の殻は、1人1人が自分で小さく割って、1片ずつお土産に持ち帰りました。

ダチョウの卵を割る

9.本の紹介、ブックトーク

職員によるブックトークでは、実験でも確認したアーチ型の強さをテーマに本を紹介しました。

アーチ型は橋にもよく使われています。たとえば、『はしをわたらずはしわたれ』という本には、橋の仕組みのひとつとして、アーチ橋が紹介されています。また、『アーチの力学~橋をかけるくふう』は、橋を強くする工夫について、自分で実験をしながら確かめることができる構成になっています。発泡スチロールやコンビーフの缶詰で橋をつくって強さをたしかめる実験のページを紹介すると、子どもたちはじっと見入っていました。

ブックトークの様子

さらにこの本には、建物にもアーチ型が使われている、という説明が書いてあります。そこで、アーチ型を取り入れ始めた古代ローマの遺跡を『イタリア』という本で見てもらいました。今から2000年近く前に建てたコロッセオも、アーチ型に支えられてきれいに残っているのが分かります。

最後に、アーチ型は私たちの体の中にも使われている、という紹介をしました。それは、足の裏の土ふまずです。『がいこつだぞ』という本には、土踏まずのアーチが体を支えていることが、図入りで書いてあります。また、『二本足で立つってどういうこと?』からも、土ふまずのアーチが体を支えると同時に、バネの役割を果たしている、と書いてあるページを紹介しました。

終了後、子どもたちは、紹介した本を熱心に見ていました。国際子ども図書館の本は貸出をしていないため、近所の公共図書館でも本を探してもらえるように、当日紹介した本をまとめたブックリストを配布しました。ブックリストの内容は、「よんでみよう、本」をご覧ください。

  • 『はしをわたらずはしわたれ』
    小野かおる さく 福音館書店 1998
    <請求記号 Y1-M99-22>
    はしをわたらずはしわたれ
  • 『アーチの力学』
    板倉聖宣 著 仮説社 2004
    <請求記号 Y11-N05-H177>
    アーチの力学
  • 『がいこつだぞ:骨と筋肉』
    山田均 著 ; 川上洋一 絵 草土文化 1990
    <請求記号 Y11-3981>
    がいこつだぞ:骨と筋肉