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ランドルフ・コルデコット(1846-1886)

1) ランドルフ・コルデコット Randolph Caldecott(1846-1886)


中部イングランドのチェスター生まれ。父親は会計士。学業に秀で、才能に恵まれた少年時代を経て、15歳から26歳まで銀行員として働く。1861年、中学生のコルデコットの絵が、既にイラストレイテッド・ロンドン・ニュース (Illustrated London News) に採用されている。1871年にはロンドンへ出て、アーチストとして生きる決意をする。初期のロンドン・ソサイエティー (London Society) 誌上の仕事が木版師 J.D.クーパーの目に止まり、ワシントン・アーヴィング作の『スケッチ・ブック』にあらたにコルデコットの70数枚の挿絵が加えられ、1875年、“Old Christmas” という題名のもとに出版されて評判となる。その後、新聞雑誌のイラストレーションや挿絵の仕事に専念しながらも、1876年、初めて王室アカデミーに絵画(木に止まる三羽の烏)と金属レリーフ(ブリタニーの馬市)を出品。芸術家としての地位も確立していく。一方、ラウトリッジ社のトイブック(子ども用絵本)・シリーズにおけるウォルター・クレインの後継者を探していたエドマンド・エヴァンスの依頼で、コルデコットは、1878年から亡くなる前年の1885年まで、毎年クリスマスの時期に2冊ずつ、1884年には3冊、合計17冊の絵本を描いた。
コルデコットは、木版印刷の応用によって推進された英国近代絵本の創始者と言われるクレイン、グリーナウェイと並びながら、その中で一番才能に恵まれ、その天賦の表現力を極く自然に発揮して、伝承詩を自由自在に演出した。人間も動物も自然も愛し、寛大に人生を生きることの出来た幸せな大衆画家であったように思われる。その意味では、ラファエル前派と内面的に深く繋がるグリーナウェイや、19世紀末期の時代の変換期における芸術論を展開するクレインとは全く異なる、イメージの伝承者としての典型的なイラストレーターであった。17世紀後半からの産業革命を経て、物質社会、環境破壊、精神の荒廃を体験していた英国社会で、市民が日常的に手にすることのできるトイブックの中に、コルデコットが再現してみせた田舎の自然や昔からの庶民の笑いと涙は、理屈ぬきで受け入れられた。コルデコットは当時の大人と子どもが真に共有することができる、絵本という舞台を作り上げた名監督であった。

2)「コルデコットのスケッチブック」より 1882年


「コルデコットのスケッチブック」イラスト1
「コルデコットのスケッチブック」イラスト2
「コルデコットのスケッチブック」イラスト3
「コルデコットのスケッチブック」イラスト4
「コルデコットのスケッチブック」イラスト5
「コルデコットのスケッチブック」イラスト6

3)「暖炉のそばで寝そべるロブ」(ジュリアナ・ホレーシア・ユーイング著) より


「暖炉のそばで寝そべるロブ」表紙
「暖炉のそばで寝そべるロブ」イラスト1
「暖炉のそばで寝そべるロブ」イラスト2
「暖炉のそばで寝そべるロブ」イラスト3

4) 「ジャカネープス」(ジュリアナ・ホレーシア・ユーイング著) より 1884年


「ジャカネープス」表紙
「ジャカネープス」イラスト1
「ジャカネープス」イラスト2

5)「ランドルフ・コルデコットの描写選集」より 1887年


「ランドルフ・コルデコットの描写選集」表紙
「ランドルフ・コルデコットの描写選集」イラスト1
「ランドルフ・コルデコットの描写選集」イラスト2
「ランドルフ・コルデコットの描写選集」イラスト3
「ランドルフ・コルデコットの描写選集」イラスト4