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本文

書誌

題名:猫鼠合戦
所蔵:国立国会図書館
種類:豆本
作画者:歌川芳寅画
版元:やま又
刊行年:1840-60年頃
判型:120×87mm
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解題

この絵本は猫軍と鼠軍との総力戦というユニークな題材ですが、画面のあちこちに、戦記絵巻や合戦屏風図などの影響が見てとれます。また互いに知恵をしぼって繰り出す作戦や武器、旗印には、猫は猫らしい、鼠は鼠らしい発想があふれていて、まるで漫画かアニメの画面を楽しんでいるような、軽やかなユーモアが感じられます。お話の結末も、日本人の心に根ざした信仰を感じさせる、素朴でおめでたいものです。
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猫鼠合戦
豆本「猫鼠合戦」の表紙 外題
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猫鼠合戦
豆本「猫鼠合戦」の扉 内題
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(♪) 猫と鼠は、昔からの天敵。だいたい猫が鼠を追いかけることになっておりますが、ここでは何やら、猫と鼠の合戦が始まるというのです。さてさて、猫と鼠の戦い、どんな結末になりますか。お話を進めることにいたしましょう。(♪)
豆本「猫鼠合戦」の一丁表
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(♪) ここには猫と鼠のおもちゃが描かれております。猫が乗った台がポンとはじけると、上にかぶさっていた恐い顔が落ちて、中から猫が出てくるという仕掛け。鼠のほうは、細長い竹を動かすとスルスルと登っていって、てっぺんの唐辛子に到着。どちらも動物はちがったりしますが、昔からある素朴な玩具です。「春新版」と本の宣伝もしております。
猫の大将、猫軍を集める
豆本「猫鼠合戦」の一丁裏、二丁表
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(♪) 猫又という猫の大将がおりました。ある時、あちこちにいる、ぶち猫、黒猫、赤猫、三毛猫、きじ猫、白猫、トラ猫などを集めて、大声で檄をとばしました。猫又「みんな、聞いてくれ。『国に盗賊、家に鼠』という諺があるが、近ごろの鼠どもの横暴ぶりは、この世に猫がいないかのようだ。この際、鼠どもを徹底的にやっつけてしまおうと思うのだが、どうだ」 猫たち「まったくその通りでござる。賛成、賛成!」
福鼠、鼠軍を集める
豆本「猫鼠合戦」の二丁裏、三丁表
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(♪) 一方鼠側には、福鼠という鼠の大将がおりました。そこへ家来の白鼠が「ごチュウ進、ごチュウ進!」と、息せき切って駆け込んできました。白鼠「大変です。間もなく猫の大将・猫又が、大軍勢で攻め込んで来ます」 福鼠「なんと、それは一大事だ」言うが早いか福鼠は、白鼠、赤鼠、ぶち鼠、南京鼠、二十日鼠、独楽まわし鼠、どぶ鼠など、一騎当千の鼠たちを呼び集めて、猫軍おそしと待ちうけます。
猫軍の大勝利
豆本「猫鼠合戦」の三丁裏、四丁表
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(♪) それから間もなく、猫の大軍が押し寄せて来ました。初め形勢は互角に見えましたが、猫軍は屈強の射手(いて)が、ネズミ捕りの竹の弓でさんざんに射かけましたので、鼠軍は総崩れ。ほうほうの体で逃げ散りました。猫軍「ニャンのこともない奴らだ。逃げるか、卑怯者。返せ、返せ」 鼠軍「いや、いや、返すに及ばぬ。これでは、チュウの音も出ぬ。逃げろ、逃げろ」猫の旗に、うなぎ・どじょう・鰹節(かつおぶし)などの好物が描かれているのが、おかしいですね。
鼠軍の大反撃
豆本「猫鼠合戦」の四丁裏、五丁表
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(♪) いったんは敗走した鼠軍でしたが、知恵の働く大将の福鼠。かねて用意の、竿の先に紙袋(かんぶくろ)をつけた武器を持ち出しました。これを、小兵ながらもはしっこい南京鼠や二十日鼠が、猫の頭にかぶせたからたまりません。勝ち誇っていた猫軍も、紙袋をかぶせられては身動きもとれず、じりじりと後退を始めました。鼠軍「これは、しめこ(しめた!)のウサギではなくて、しめこの猫だな」 鼠軍「この紙袋は、なんとも効き目のある武器だ」 猫軍「どっこい、しくじってしまった」
猫軍、またまた反撃する
豆本「猫鼠合戦」の五丁裏、六丁表
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(♪) 緒戦では勢いのあった猫軍でしたが、鼠軍の紙袋攻撃にあって、散々な結果になってしまいました。これではいかんと思ったのでしょうか、今度はネズミ捕りの妙薬・石見(いわみ)銀山を持ち出して、大反撃を試みました。旗印に「石見銀山」の文字が見えますね。鼠軍は、このネズミ捕りの妙薬・石見銀山に恐れをなして、再び敗走を始めました。鼠軍「これはたまらぬ。水の用意だ、水の用意だ」
福鼠、再び謀り事を用いる
豆本「猫鼠合戦」の六丁裏、七丁表
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(♪) しかし、ここを大事と思った知恵者の福鼠、突進する猫軍の前に、大きな張り子の犬を引き出してきました。犬には弱い猫たちのこと、これにはさすがに恐れをなして、進むことが出来ません。鼠軍「どうだ、この犬にはかなうまい」 猫軍「ありゃりゃ、犬とは恐れ入った。逃げろ、逃げろ」
大黒天が仲裁する
豆本「猫鼠合戦」の七丁裏、八丁表
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(♪) またまた敗走する猫軍に、大将の猫又が大声で叫びました。猫又「者ども、恐れるな。あれは張り子の犬だ。恐れずに、かかれ、かかれー!」その声に励まされて、猫軍がまた取って返し、両軍入り乱れて戦っていたときのことでした。どこからともなく大黒天が現れて、両軍に和睦を命じたのでした。その大黒天が示された旗印は、「家内安全」と「火の用心」。これにてすべて、めでたし、めでたしー。
大黒天のお守り
豆本「猫鼠合戦」の八丁裏
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(♪) というわけで、どこの家も大黒天によって「家内安全」が守られているのです。おしまい。

14ページには朗読はありません

豆本「猫鼠合戦」の裏見返し
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15ページには朗読はありません

豆本「猫鼠合戦」の裏表紙
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