困難な状況にある若者を、図書館が支援する取組(米国)

【2018-099】

米国では、困難な状況にある若者を図書館が支援する取組が広がっている。ここではヤングアダルト関係のテーマを主に扱う図書館向け雑誌『Voice of Youth Advocates』に掲載された取組の一部を紹介する。

若者の自殺を予防するための取組

米国コロラド州は、人口に対する自殺者数が国内で上位10位以内に入っており、10~17歳の死亡原因も、自殺が最も多い。同州コロラドスプリングズ(人口約42万人)のパイクスピーク図書館区は、これまで自殺予防のホットラインを設置し、ブックリストや、支援を行っている施設のリストを配布してきた。

2017年12月、パイクスピーク図書館区は、さらに画期的な取組に乗り出した。同区の14の図書館の内、12か所に National Safe Place Network(困難な状況にある若者を支援するためのネットワーク)のサテライト機関を開設したのである。そこには、資格を有する専門の担当者が常駐し、ホームレスであったり、家出を考えていたり、自傷行為の可能性のある若者にとっての避難場所として支援を行っている。このNational Safe Place Networkのサテライト機関を図書館に設置するために、パイクスピーク図書館区は、コロラドスプリングズでシェルターや支援施設を運営し、ホームレスの若者がカウンセラーやソーシャルワーカーと話す場を提供している機関Urban Peak Colorado Springs と連携した。パイクスピーク図書館区はこうした外部機関と連携することで、若者にとってより良いコミュニティとなることを目指している。

罪を犯した若者へのアート、作文、詩などの創作プログラム

罪を犯し、矯正施設に入っている米国の若者は、他の先進国に比べて多く、収監により彼らの就学・就職の機会が失われている。創作のプログラムは、そうした若者が安全だと思える場で自己を表現する機会を与えてくれる。

ウィスコンシン州マディソン公共図書館は、罪を犯した若者や、そのリスクのある若者を対象とした学習プログラムを実施している。背景には、黒人・白人間で学力の差が大きく、黒人の若者の犯罪・収監率が高い現状がある。このプログラムでは、アーティスト、教育者、活動家と協力し、グラフィックアート、3Dアート、写真、ビデオ、詩の制作や発表を通じて、他者やコミュニティとの関係の構築、生活するうえでの基本的なスキルの育成を行っている。

カリフォルニア州アラメダ郡の郡庁所在地オークランド市の公共図書館は、アラメダ郡立図書館と協力し、郡内の矯正施設に入っている若者に、図書館サービスのほか作文プログラムを提供し、作品をオンラインの新聞に掲載している。

カンザス州ジョンソン郡図書館は、矯正施設や薬物・アルコール中毒の治療センターで、ときには地域の作家から協力を得ながら、詩のプログラム等を提供している。

Ref:

(2018.09.25 update)