移民・難民を描いたポストカードの展示と本

【2019-076】

2019年5月9日、 “Migrations: Open Hearts, Open Borders”(渡り鳥たち:心と国境をひらいて)が、英国の出版社 Otter-Barry Books から出版された。この本は、2017年のプロジェクトで移民・難民をテーマに制作されたポストカードの内の50点に、新たな作品を加えた作品集である。

2017年、英国ウスター大学にある国際社会絵本センター(International Centre for the Picture Book in Society)の創設者である、画家のピート・フロブラー(Piet Grobler)と Tobias Hickey が、移民・難民の姿を鳥のイメージに重ねて描いたポストカードを制作するよう、世界中の画家に呼びかけた。

二人の呼びかけにこたえ、すでにキャリアを積んだ者からそうでない者まで、様々な画家の作品が300点集まった。それぞれの国の切手が貼られたポストカードは天井からつるされ、危険な旅路を表すかのように、触れると次々に揺れる形で展示された。同展は、スロバキアのブラティスラヴァ世界絵本原画展(Biennial of Illustrations Bratislava: BIB)のほか南アフリカや韓国の南怡島で行われ、2019年の夏にはアムネスティ・インターナショナルのロンドン支部で開催される予定である。

本に収録された作品を手がけたのは、32か国の画家である。イランに生まれ難民として英国に渡った Mohammad Barrangi は、左手に障がいがあるため、足も使いつつ制作した。ペルシア絨毯のように複雑な絵には、望みの場所まで安全に運んでくれる伝説の鳥が描かれている。ノルウェーの Stian Hole は、虹やバラの花に彩られた旅路を描いた。日本の沖田佳奈は、青い空に白い線で描いた鳥の絵に、ひとこと「希望!」と書いた。2016年から2018年までアイルランドの四代目 Laureate na nÓg(若者のローリエット)を務めたP.J.リンチ(PJ Lynch)は、海の上を飛ぶ鳥を描き、「未来への希望とともに荒れ狂う海を渡る人々が、寛容の心をもってあたたかく迎えられますように。旅の安全を祈ります」というメッセージを添えた。オーストラリアのショーン・タン(Shaun Tan)は本の序文で、他国に渡る人々はキョクアジサシのごとく、「かすかな磁力をたよりに闇の中を進み、期待と不安を胸にまだ見ぬ地をめざす」と記した。キョクアジサシは20,000キロを移動する渡り鳥として知られている。

この本の印税は、アムネスティ・インターナショナルと国際児童図書評議会(International Board on Books for Young People: IBBY)の活動に使われる。Otter-Barry Books の Janetta Otter-Barry は、難民が押し寄せるランペドゥーザ島にIBBYイタリア支部が設立した図書館や、英国の画家ジェーン・レイ(Jane Ray)による難民へのワークショップなど、様々な場で同書が活用されることを望んでいる。(作者の日本語読みは、判明した場合のみ記載した。)

Ref:

(2019.06.25 update)