2020年ニューベリー賞およびコルデコット賞受賞者発表

【2020-027】

2020年1月27日、米国図書館協会児童図書館サービス協会(Association for Library Service to Children, a division of the American Library Association: ALSC, ALA)は、2020年ニューベリー賞(Newbery Medalの受賞者がグラフィックノベル(コミック) “New Kid” の著者 Jerry Craftに、コルデコット賞(Caldecott Medalの受賞者が “The Undefeated” の画家Kadir Nelson(カディール・ネルソン)に、それぞれ決定したと発表した。二つの賞は、前年に米国で発表された英語の児童書を対象とし、米国の作家および画家に与えられる。

ニューヨークタイムズの報道によれば、児童文学を対象とするニューベリー賞をグラフィックノベルの著者が受賞するのは初めてである。

両氏は、優れた児童文学・ヤングアダルト作品を生んだアフリカ系米国人作家・画家に贈られるコレッタ・スコット・キング賞も併せて受賞した(作者の日本語読みは、判明した場合のみ記載した)。

ニューベリー賞を受賞したJerry Craftはニューヨークのハーレムで生まれ、同市内のワシントンハイツ近郊で育った。これまでにもグラフィックノベルや絵本、読み物を数多く手がけている。

New Kid” では、白人が多数を占める学校に入ったアフリカ系の生徒が日々、意図的な人種差別や、ときには自覚のないまま向けられる差別に直面する。審査委員長の Krishna Grady は、「ユニークで時代に合っていて、真実が描かれた物語である。子どもを尊重して書かれており、また、ほかの人と違うふうに見られるのがどういうことなのかを垣間見せてくれる」と述べた。

なお、次点作品に当たるニューベリー賞オナーブック(Honor Books)には、Kwame Alexanderの “The Undefeated”(Kadir Nelson 絵)、Christian McKay Heidicker の “Scary Stories for Young Foxes”(Junyi Wu 絵)、Jasmine Warga の “Other Words for Home”、Alicia D. Williams の “Genesis Begins Again” が選ばれた。

コルデコット賞を受賞したカディール・ネルソンはロサンゼルス在住の画家である。2007年に “Moses: When Harriet Tubman Led Her People to Freedom”(邦訳『ハリエットの道』)(Carole Boston Weatherford(キャロル・ボストン・ウェザフォード)文)、2008年に “Henry’s Freedom Box: A True Story from the Underground Railroad”(邦訳『ヘンリー・ブラウンの誕生日』)(Ellen Levine(エレン・レヴァイン)文)が、いずれもコルデコット賞オナーブックに選ばれた。

The Undefeated”(Kwame Alexander 文)では、過去から今に至るまでの黒人の強さ、忍耐、立ち直る力を詩的に綴った文章が、ネルソンの豊かな絵によって高められている。心を捉える写実的な油絵は、前へと進む動きと光の描写を通して、深いヒューマニティーや米国における黒人の活躍を描いている。審査委員長の Julie Roach は、「ネルソンの色づかいと構図は、ページからあふれだすような大胆な絵を生んだ。英雄たちがこれまでに積み重ねてきた旅路を受けとめる力を、読者は試される」と評価した。

同じく次点作品にあたるコルデコット賞オナーブックには、LeUyen Pham (レウィン・ファム)の “Bear Came Along”(Richard T. Morris(リチャード・T・モリス)文)(邦訳『かわにくまがおっこちた』)、Rudy Gutierrezの “Double Bass Blues”(Andrea J. Loney(アンドレア・J・ローニー)文)、Daniel Minter の “Going Down Home with Daddy”(Kelly Starling Lyons 文)が選ばれた。

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所蔵リスト

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(2020.02.25 update)