2020年ブランフォード・ボウズ賞の決定

【2020-145】

英国の児童文学賞、ブランフォード・ボウズ賞(Branford Boase Award)の2020年の受賞者が発表された。受賞者は、“BEARMOUTH”の著者Liz Hyderと、編集者Sarah Odedinaであった。

ブランフォード・ボウズ賞とは

この賞は、「新人作家による7歳以上の子ども向けのもっとも有望な作品」の作家と編集者の両者が表彰される。新人作家の賞であると同時に、その編集者のための賞でもあるのが特徴である。この賞の名称「ブランフォード・ボウズ」は、イギリスの作家Henrietta Branford(ヘンリエッタ・ブランフォード)と編集者のWendy Boase (ウェンディ・ボウズ)を記念して付けられている。

ヘンリエッタ・ブランフォードは“Fire, Bed and Bone” (邦訳『火とねぐらと骨と』)でガーディアン賞を受賞するなど、将来を非常に期待されていたが、1999年に癌によって死去した。ウェンディ・ボウズは、ヘンリエッタを担当していた編集者で、ヘンリエッタと同年に癌で亡くなった。同賞は、ウェンディの在籍していたウォーカー・ブック社、Julia Eccleshare(ジュリア・エクルズヘア)、Anne Marley(アン・マーレー)によって2000年に設立された。

2020年の受賞者及び作品

受賞作品“BEARMOUTH”は、19世紀の児童鉱山労働者の実話を基に、地下深くの鉱山を舞台にした作品である。Hyderが考案した独特の方言で、光の届かない鉱山の世界を語った本作は、「パワフルなディストピア小説」と評されている。

著者のLiz Hyderは、作家であるとともに創作ワークショップを率い、さらにフリーランスのアートPRコンサルタントとしても活動するなど多様な顔をもつ。ブリストン大学で演劇を学び、その後、ロンドンのSpread the Wordで創作ワークショップを開催するためのトレーニングを受けた。さらにアートPRコンサルタントとしても、BBCの広報として6年間勤務した。2018年には、 The Bridge Award/Moniack Mhor’s Emerging Writer Awardを受賞している。“BEARMOUTH”は、2020年7月に Waterstones Children's Book Prizeの Older Readers部門も受賞した。

編集者のSarah Odedinaは、Penguin Books、Orchard Books、Bloomsburyなど多くの出版社に勤務したのち、現在はPushkin Pressに特別編集者として勤務し、精力的に児童書出版にかかわっている。編集者として、Neil Gaiman(ニール・ゲイマン)の“The Graveyard Book” (邦訳『墓場の少年:ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』)や Louis Sachar(ルイス・サッカー) の“Holes” (邦訳『穴』) 、Sally Gardner(サリー・ガードナー)の “Maggot Moon” (邦訳『マザーランドの月』)など有名な児童書を多数手がける。「ハリー・ポッター」シリーズ全作の世界的な出版事業にもかかわった。

人名の日本語読みは、判明した場合のみ記載した。

Ref:

(2020.11.18 update)