コロナ禍のロックダウンによる子どもの読書の変化(英国)

【2021-003】

英国においてリテラシー向上のための取組をしている団体National Literacy Trust(NLT)は、例年子どもの読書調査を行っている。2020年の調査は、英国国内の315校に所属する9歳から18歳までの児童・生徒58,346人を対象に1月から3月半ばまで実施された。

その直後、新型コロナウイルス感染拡大により状況は大きく変化した。NLTは、感染拡大防止のためのロックダウンが子どもや若者の読書に与えた影響を把握するためにオンラインによる再調査を行い、51校に所属する8歳から18歳までの児童・生徒4,141人から回答を得た。

主な調査結果は以下の通りである。

  • 読書を楽しんだと回答した子どもは、ロックダウン前の調査では47.8%と2005年の調査開始以来最低値であったが、ロックダウン開始後には55.9%に増加した。
  • ロックダウンが始まった後にオーディオブックをよく聞くようになったと答えた男子は25.0%、女子は22.4%だった。
  • ロックダウン前に比べてスクリーン上での読書が著しく増えた。
  • 学校や図書館が閉鎖され、友人や先生との交流が絶たれたことで、読書力が低下したり、読書を楽しむ意欲を失ったりした子どももいる。
  • 27.6%の子どもが、ロックダウン開始後には以前より読書を楽しんでいると答えた。
  • ロックダウン中に読書を楽しんだ理由として一番多く挙げられたのは、時間があったことである。
  • 競争や評価のためではなく、好きな本を自由に読めたことが、多くの子どもにとって楽しみにつながった。
  • 自由な時間に日常的に読書すると答えたのは女子の方が男子より多い。ロックダウン前には男子28.6%、女子32.9%で4.3ポイント差だったが、ロックダウンによって男子32.1%、女子39.5%と7.4ポイント差に開いた。
  • 11~14歳、14~16歳の年齢層では、ロックダウン開始後に日常的に読書をするようになった割合が高かった。
  • 本の世界は、子どもたちが困難な現実から離れ、心を静めて安心できる場となっていた。一方、不安感から読書に集中できない子どももいた。経済的に厳しく、給食支援を受けている子どもは、静かに読書できる場がないと答えた割合が高かった。
  • Ref:

    (2021.01.04 update)