コロナ禍におけるIBBY各国支部の取り組み

【2021-043】

国際児童図書評議会(International Board on Books for Young People: IBBY)は、新型コロナウイルスの感染拡大状況下におけるIBBY各国支部の取り組みを2021年2月18日付けのブログ記事で紹介している。ガザ、エルサルバドル、リトアニア、スリランカの事例が掲載されている。内容は以下のとおりである。

ガザでの物資配布

ガザ地区の状況は深刻で、感染を制御できていない。子どもたちは家に留められ、電気やインターネットのみならず、本も利用できない状況にある。

ガザにはIBBYパレスチナが運営する2つの図書館があるが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休館となった。IBBYパレスチナは鉛筆とノートを入れた箱を配布しており、さらにフェイスマスクと消毒剤も追加した。食料チケットや、子ども用の防寒着も提供している。

ロックダウン後、図書館は部分的に子どもたちに開放され、ここで子どもたちはパンデミック中の経験を絵や物語にして共有している。いくつかの作品はIBBYのウェブサイトで公開されている。

エルサルバドルでの書籍配達サービス

エルサルバドル共和国では、首都サンサルバドルにある「夢の図書館」(Biblioteca de los Sueños)がIBBYの拠点となっている。この図書館は、ギャングが横行する非常に危険な地域にあるため、子どもたちは学校を介して図書館利用してきた。しかし、パンデミックによる休校で図書館に行くことができないため、数か月間、図書館員による各家庭への書籍配達サービスが行われた。2021年2月からは、「夢の図書館」のボランティアによって、サンハシントの市場で子どもたちに本を共有している。

この「夢の図書館」の創設者Jorge Arguetaは、自身の故郷であるサントドミンゴにも子どものための図書館を設立した。

リトアニアの「救援のための小さな本」

IBBYリトアニアの「救援のための小さな本」(Tiny Books to the Rescue)は、コロナ禍でも家で小さな子どもに本を読んでもらうためのプロジェクトである。

このプロジェクトでは、家庭で簡単に印刷できる、1枚の紙を折りたたんで作る「小さな本」を作成した。リトアニアの作家とイラストレーター50人以上によって37冊の「小さな本」が製作され、そのうち英語に翻訳された9冊のPDFは、IBBYウェブサイトから無料でダウンロード可能である。

スリランカ出版プロジェクト

IBBYスリランカは、新型コロナウイルスを知るための本の無料コレクションを出版、配布し、感染予防について説明した。これらの本は先に中国で出版され、翻訳権がCBBY(IBBY 中国)からIBBYスリランカに寄贈されたものである。2020年4月以降、5冊の本が出版されており、4冊は電子書籍として刊行され、1冊は印刷された。印刷版とデジタル版ともに需要は非常に高く、子どもたちがウイルスをよく理解する必要性の高さを表しているとしている。

IBBYは、困難な時期に子どもたちと本を結ぶ新たな方法を模索した各国支部の協力に感謝しつつ、新型コロナウイルスによる影響が今後も長く続くと予想し、紹介されたようなプロジェクトが継続的に活動するための支援を引き続き歓迎するとしている。

Ref:

(2021.04.09 update)