米国タイム誌が選ぶヤングアダルト作品100冊

【2021-099】

2021年8月11日(水)、米国のタイム誌(TIME)は作家の協力の下、ヤングアダルト作品のベスト100冊を発表した。同紙は2015年にも同様のリストを発表したが、多様性を尊重した児童書を求める動きが広がる中、本に描かれる人物像も変わっていったとして、今回新たなリストが発表された。『ライ麦畑でつかまえて』(キャッチャー・イン・ザ・ライ)のような古典的な文学から、近年高い評価を受けているマイノリティ作家のデビュー作、性的少数者(LGBTQ)のラブストーリーまで様々な作品が選ばれている。

前回のリストが発表された際には、白人以外の作家による本や最近の作品が少ないという指摘が、米国図書館協会(Association for Library Service to Children: ALSC)の一部門であるヤングアダルト図書館サービス協会(Young Adult Library Services Association: YALSA)のブログに寄せられていた。今回のリストには、多様な作家による本や、この10年間に出版された本も多く含まれている。

選書の基準としては、「芸術性」「独創性」のほか、「心に訴えかけてくるか」「一般の読者から、また書評等で評価されているか」「ヤングアダルト文学や文学全体に、影響を与えるような作品であるか」「大人向けの要素がある場合は、それが適切に伝えられているか」などが挙げられている。

選書に関わった作家の一人であり、米国の第7代目児童文学大使(National Ambassador for Young People’s Literature)でもあるジェイソン・レノルズ(Jason Reynolds)はリストの発表にあたり、「人は物語を通して、自分はまわりの目にとまるべき価値ある存在なのだという実感を得る。そう思わせてくれるヤングアダルト作品は、錨であり、翼であり、コンパスであり、地図であり、拡大鏡のようなものだ」と述べた。そして子どものときに「三匹のこぶた」のお話を聞き、自分が住んでいる家もオオカミに吹き飛ばされてしまうのではないかとこわくなったという思い出にふれつつ、「人生のもろい壁を必死に補強しようとしている若い人たちにとって、ここに紹介されている本はレンガの家になる。あるいは、レンガのように決して倒れず、たくさんの人をあたたかく迎え入れてくれるような理想の家をつくる材料になるかもしれない」と語った。

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(2021.09.07 update)