Bunkamuraドゥマゴ文学賞を絵本『海のアトリエ』が受賞

【2021-115】

2021年9月3日(金)、株式会社東急文化村は、第31回Bunkamuraドゥマゴ文学賞の受賞作品が、堀川理万子による絵本『海のアトリエ』(2021年、偕成社)に決定したと発表した。

同賞は、「パリの「ドゥマゴ文学賞」(1933年創設)の先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘に寄与」することを目的として、1990年に創設された。任期が1年の「ひとりの選考委員」によって、前年の7月から翌年の7月までに出版された単行本、または雑誌等に発表された日本語の文学作品の中から選ばれる。絵本が同賞を受賞するのは初めてである。

選考委員を務めた作家の江國香織氏は、絵本は文学だと前置きした上で、受賞作品である『海のアトリエ』について、文章にされていない音や匂いや手触り、登場人物の人間性を伝え、作中の時間の流れに引き込み、全ての絵が「繊細に、静かに、かつ生き生きと、多くを語っている」と評した。作者の堀川氏は、絵にスポットを当てて評されたことに喜びを表した。また読者によって異なる見方、感覚や想像を呼び起こし、私的な体験になり得るのが文学であるならば、「絵本を文学だと言い切ってくださったことは、なによりも大きな励ましです」と述べた。

『海のアトリエ』は、祖母が少女時代の夏の忘れがたい思い出を孫娘に語る場面から始まる。その夏、家に閉じこもっていた少女は海辺のアトリエに行き、そこに暮らしている画家と一週間を過ごす中で、心が解放されていく。東京新聞のインタビューによると、堀川氏は子どもの頃に出会った絵画教室の先生に影響を受け、その人は堀川氏にとって、子どもを子ども扱いしない初めての大人であり、そうした体験がこの物語の誕生につながったとのことである。

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(2021.10.20 update)