IFLA児童・YA分科会によるセーファーインターネットデー調査報告書

【2023-037】

2023年3月3日(金)、国際図書館連盟(International Federation of Library Associations and Institutions: IFLA)の児童・ヤングアダルト図書館分科会は、調査報告書 ”Creating and Maintaining a Safer Online World for Children and Young Adults in Libraries: A Report on the 2021 Safer Internet Day Baseline Survey for the International Federation of Library Associations and Institutions (IFLA)” を公開した。これは、”Safer Internet Day Baseline Survey” の調査結果をまとめたものである。

同調査は、世界の図書館における、子どもやヤングアダルト世代のインターネットの安全な利用に関するものであり、2019年の世界図書館情報会議(WLIC)で提起された。毎年2月の第二火曜日が「セーファーインターネットデー(Safer Internet Day)」に定められていることから、2021年の「セーファーインターネットデー」であった2月9日からオンラインで調査を開始し、482の回答を得た。「セーファーインターネットデー」は、インターネットがすべての人、特に子どもや若者にとって安全な場になるよう呼びかける日で、2004年に欧州連合(EU)のプロジェクトの一環として始まり、現在は世界各国で取り組みが広がっている。

この調査によって、様々な図書館が、情報リテラシーを高めるキャンペーン、オンライン情報を評価するための利用者教育、子どもや親に向けたリーフレット等の作成、オンラインゲームの教育的利用に関するワークショップなどを行っていることが明らかになった。

その他の主な調査結果は、以下のとおり。なお、回答の数字は小数点以下を四捨五入した概数である。

86%の図書館で、子どもとヤングアダルト世代がインターネットにアクセスできる。そのうち、図書館と利用者の両方のデバイスからアクセスできるのは62%、図書館のデバイスのみは30%、利用者のデバイスのみは8%だった。60%の図書館が、インターネットの利用に年齢制限を設けず、30%は主に10~18歳の利用者に対し、制限を設けていた。インターネットの利用に関し、保護者等の許可が必要なのは57%、許可を求めていないのは39%だった。

20%の図書館が講座やワークショップ、20%が掲示物やソーシャルメディアなど、14%がコンテスト・クイズ・ゲーム、7%が保護者向けのプログラム、16%がリーフレットや資料ガイドを通じて、子どもやヤングアダルト世代のデジタルスキル育成を支援している。インターネットを正しく使い、フェイクニュースを見分けられるようなプログラムを地域に提供している図書館もある。

公共図書館はフィルタリングより知的自由、学校図書館はフィルタリングによる保護を重視する傾向にあった。53%の図書館が子どもやヤングアダルト世代に対し、特定のコンテンツの閲覧をフィルタリングによって制限し、28%は特に制限を設けていない。

39%の図書館がインターネット監視ソフトウェアを導入しているが、41%は導入していない。56%の図書館が、子どもやヤングアダルト世代のインターネットへのアクセスを監督しているが、35%は監督していない。監督している図書館のうち80%では職員が、16%の図書館では保護者等が、その役割を担っている。

インターネットの安全な利用に関し、回答者の50%が研修を受けていなかった。

「セーファーインターネットデー」に関するプログラムをまったく行っていない図書館は、21%近くにのぼった。

調査報告書は、若い人たちやその家族がインターネットを安全に利用し、リテラシーのスキルを伸ばし、フェイクニュースと事実を見分けられるような教育が重要だとまとめている。また、フィルタリングは情報アクセス権の保障にも関わる問題であることから、その実施状況や内容にはさらなる調査が必要であり、また求められるガイドラインや政策についても、今後の調査を要すると述べている。

Ref:

(2023.05.24 update)