閲覧制限の申し立て(book challenge)の影響(米国)

【2023-090】

2023年9月19日(火)、米国図書館協会(ALA)は、2023年1月から8月までの全米の学校図書館、公共図書館、学術図書館等における検閲の動きに関するデータをまとめ、暫定データとして公開した。

ALAは、閲覧制限の申立て(book challenge)があったタイトル数は、ALAが統計を開始して以降、最多であった2022年の同時期のデータと比べて20%増加しているとし、また、全体に占める公共図書館における申立ての割合が、2022年の同期間では16%であったのに対し、2023年は49%に増加していると述べた。そして、これらの申し立ての対象となった本の多くが、有色人種あるいはLGBTQIA+コミュニティに属する作家によって書かれた本、あるいはそれらの人々を描いた本であると報告している。特にアイオワ州では、2023年7月から、学校において年齢ごとにふさわしい本を定義する州法が施行されており、これに違反する可能性があるとして蔵書から除かれたタイトルも紹介されている。

また、School Library Journal(SLJ)誌は、急増する閲覧制限の申立てが学校司書を萎縮させており、本の購入や蔵書からの除外に影響を与えていることを、記事 “Book Challenges Are Having a Chilling Effect on School Librarians Nationwide” で報告した。同記事はSLJにより2023年5月1日から17日までに行われた、米国の学校図書館員を対象とした無作為抽出による匿名回答の調査 ”2023 Controversial Books Survey” に基づいている。回答した図書館員の37%(2022年は27%)が閲覧制限の申立てが図書購入の決定に影響を与えたと回答し、また、回答者の24%が所蔵している本や展示を巡って嫌がらせを受けた経験があると回答したことなどが報告されている。

Ref:

(2023.11.24 update)