2025年版米国図書館界の現状報告書

【2025-043】

2025年4月7日(月)、米国図書館協会(American Library Association: ALA)は、4月6日(日)から12日(土)までの全米図書館週間(National Library Week)にあわせて、2025年版米国図書館界の現状報告書 “State of America's Libraries : A Snapshot of 2024” を刊行した。

報告書によれば、様々な困難の中にあっても、図書館は多くの取組によって、地域の要望に応えようとしている。読書の自由に関しては、現在、資料の撤去要望は主に組織的な運動から生じており、学校や公共図書館に寄せられた撤去要望の72%は、選挙で選ばれた人々を含む政府機関や圧力団体によるものだった。保護者による撤去要望は16%に過ぎず、図書館利用者個人によるものは5%だった。

撤去要望の主な理由は、LGBTQIA+の登場人物が出てきたり、人種や人種差別、平等や社会正義に関わるテーマを扱っていたりすること等である。2024年に報告された撤去要望は821件であり、前年の1,247件から減少したものの、1990年に調査を開始して以降、三番目に多かった。前年から減った理由としては、多くの撤去要望はメディアでも報道されず、ALAは一部しか把握できないこと、撤去要望を報告することが図書館員の職務や生活に重大な被害を及ぼしかねないこと、問題が起きそうな本の購入を控えたり、あらかじめ利用制限をかけたりしていること、州によっては公共図書館や学校図書館で利用できる本に法的な制限をかけていたりすることが挙げられている。その一方で、複数の州において、知的自由を擁護する判決や立法の動きも生まれている。

子どもに関わる図書館サービス・学校図書館活動に関しては、以下の事例などが紹介されている。

  • テキサス州の高校では、憲法で保障された権利(表現の自由等)、検閲用語、学区による蔵書構築をめぐる方針、有権者登録と教育等について、約500人の生徒がゲームなどを通して学んだ。
  • イリノイ州の大学は他機関と連携し、毎年夏に難民の子どもを対象として、ミニロボット制作などのプログラムを実施している。2021年、米軍がアフガニスタンから撤退した後に、数万のアフガニスタン人家族が米国に逃れてきたが、これらの家族の子どもたちも受入れ対象としている。
  • フロリダ州の高校で銃乱射事件が起きた後、自らもその生存者である学校司書が学校図書館にセラピードッグを連れてきたり、禅の瞑想をするための部屋を取り入れたりして、生徒の心のケアを行った。

報告書ではそのほか、図書館員はAIが生成する誤情報などの倫理的な問題に目を光らせる必要があること、他機関と連携しAIリテラシーを培う重要性などについても言及されている。

報告書の全文は、ALAのウェブサイトから閲覧できる。

Ref:

(2025.06.27 update)