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- > 第5章 トイ・ブックと近代絵本の夜明け
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(2)エドマンド・エヴァンズと3人の絵本作家たち
挿絵の印刷技術が、それまでの手彩色や多色石版刷りから、木版による色刷りへと進化したことにより、イギリスでは1860年代に入るとトイ・ブックと呼ばれる絵本のシリーズが全盛期を迎えます。トイ・ブックは、安価ながらそれまでの子どもの本より大判で、1作1話で、紙の片面のみにカラーで絵柄が印刷された画期的な形式によるもので、フレデリック・ウォーン社など多くの出版社から多数刊行され、爆発的な人気を得ました。
そのような中、木口木版の技術を深め、美しい色刷りの本を多数作り出していた彫版師エヴァンズは、トイ・ブックのけばけばしい色彩に飽き足らず、日本の浮世絵にヒントを得た高い技術によって、彩色の美しい絵本を生み出します。
エヴァンズは、才能あるイラストレーターの中から絵本作家としてふさわしい人材を発掘し、長く語り継がれてきた物語や歌を題材に、画家の個性を引き出した質の高い芸術的な絵本の普及を可能にした功労者でした。中でも、ランドルフ・コルデコット Randolph Caldecott(1846~1886)、ウォルター・クレイン Walter Crane(1845~1915)、ケイト・グリーナウェイ Kate Greenaway(1846~1901)の3人は、その後の絵本作り、絵本画家たちに多大な影響を与えました。
木口木版によるトイ・ブックの時代は、写真製版印刷の普及とともに幕を閉じますが、エヴァンズに見いだされた3人の活躍により、華やかな近代絵本の舞台は幕を開けたのです。
5-2-1
森のふたりの幼い子ども(The Babes in the wood (R. Caldecott's picture books ; [no. 4]))
ランドルフ・コルデコット/絵
出版地 [London]
出版者 G. Routledge & Sons
出版年 [1880]
5-2-2
(コルデコット作品集1)(R. Caldecott's first collection of pictures and songs)
ランドルフ・コルデコット/絵
出版地 London
出版者 F. Warne and Co.
出版年 [19-- ]
5-2-4
家つきの妖精(Lob lie-by-the-fire, or, The luck of Lingborough)
ジュリアナ・ホレイシア・ユーイング/作、ランドルフ・コルデコット/絵
出版地 London
出版者 Society for Promoting Chirstian Knowledge
出版年 [1883?]
5-2-5
青ひげピクチャー・ブック(The bluebeard picture book)
ウォルター・クレイン/絵
出版地 [London]
出版者 G. Routledge
出版年 [1875?]
5-2-7
(3つのRの物語)(A romance of the three Rs (Walter Crane's picture books. New series ; no. 1-3))
ウォルター・クレイン/作・絵
出版地 London
出版者 M. Ward & Co.
出版年 1886
5-2-8
グリーナウェイの花ことば(Language of flowers)
ケイト・グリーナウェイ/絵
出版地 London
出版者 G. Routledge and Sons
出版年 [1884]
なお、クレイン、コルデコット、グリーナウェイの3人の作品は、国際子ども図書館電子展示会絵本ギャラリーの絵本は舞台でもご覧になることができます。