米国図書館界の現状報告書――利用者の要求にともない図書館サービスが変わる
【2016-062】
2016年4月10日から16日は、全米図書館週間(National Library Week)である。それにあわせて、4月11日、米国図書館協会(ALA)が、2016年の米国図書館界の現状報告書 “The State of America’s Libraries Report 2016” を刊行した。
報告書によれば、図書館は、テクノロジーに通じた利用者の要求に応えられるよう、資料やサービスを見直している。また、2015年12月10日、学校予算と教育の機会の均等に関する法律であるESSA(Every Student Succeeds Act)が改正された。学校図書館員が、特別授業支援員として明記され、学校図書館と学校図書館員が、生徒の学びにとって重要だという認識が示された。
以下、報告書にある「学術図書館」「学校図書館」「公共図書館」「問題と傾向」「国内の問題と傾向」の5章の内、「学校図書館」と「問題と傾向」の概要を紹介する。
学校図書館
テクノロジー
- 管理職は、「学校図書館員の支援により授業にデジタル機器を取り入れることで、ひとりひとりの力を伸ばすことができる。」という認識を持っている。
- テクノロジーに通じた生徒に資料を手渡す上で、資格を有する学校図書館員の重要性が高まっている。
- 2010年にデジタル資料を受け入れた学校図書館員は35%だったが、2015年は69%だった。特にデータベース、電子書籍・雑誌、映像資料、ゲームを受け入れた学校図書館が多い。
- インターネットの接続環境が整っていなかったり、適切なデジタル資料が見つからなかったり、教員がデジタル資料を利用したがらないという問題がある。
学校図書館に関する調査
以下のような調査結果がある。
- 資格を有する常勤の図書館員や補助職員がいる場合、生徒はよりよい成績を維持する。
- 開館時間の延長や、図書館を自由に利用できる環境が、生徒の学力に影響を与える。
- 高額の予算と、十分かつ幅広く新しい資料が、生徒の成績を向上させる。
- 学校図書館員と教員が連携して授業計画を立てることが、生徒の学力の向上につながる。
- 学校図書館を訪れる回数が多いほど、生徒の成績がよい。
- 情報化時代を生きる生徒が、将来働くときに役に立つような設備や機器を、学校図書館が提供することは非常に重要である。
- 資格を有する学校図書館員のいる学校は、卒業できる生徒の割合が多い。
問題と傾向
児童サービス・ヤングアダルトサービス
- 十代向けのプログラムに、創造的な問題解決の手法である「デザイン思考」を取り入れる図書館が増えている。
- 貧困地域では、家庭にコンピューターがなかったり、学校の機器が古かったり不足していたりすることから、進学や就職に必要なデジタルリテラシーの育成が図書館に求められている。
夏の図書館サービス
- 図書館は夏の間、従来の読書キャンペーンだけでなく、アートやSTEM(科学・技術・工学・数学)、デジタル学習を取り入れた活動を提供している。
知的自由
- 2,244人の米国人を対象とした、Harris による2015年6月の調査によれば、「撤去した方がいい本が学校図書館にある。」と回答した人は28%で、2011年の18%を上回った。
Ref:
- 米国図書館協会(ALA) > News & Press Center > State of America's Libraries Report 2016
http://www.ala.org/news/sites/ala.org.news/files/content/state-of-americas-libraries-2016-final.pdf - 米国図書館協会(ALA) > News & Press Center > “State of America’s Libraries 2016” shows service transformation to meet tech demands of library patrons
http://www.ala.org/news/press-releases/2016/04/state-america-s-libraries-2016-shows-service-transformation-meet-tech-demands
(2016.06.19 update)
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