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2018年カーネギー賞及びケイト・グリーナウェイ賞受賞作品発表

【2018-069】

2018年6月18日、英国図書館情報専門家協会(The Chartered Institute of Library and Information Professionals: CILIP)は、2018年のカーネギー賞(Carnegie Medal)受賞作品が、ジェラルディン・マコックラン(Geraldine McCaughrean)[ⅰ] の “Where the World Ends”、ケイト・グリーナウェイ賞(Kate Greenaway Medal)受賞作品が、シドニー・スミス(Sydney Smith)[ⅱ]の “Town Is by the Sea”(ジョアン・シュウォーツ(Joanne Schwartz)文)(邦訳『うみべのまちで』)に決定したと発表した。

ジェラルディン・マコックランは、1988年に続き二度目のカーネギー賞受賞となった。“Where the World Ends” は、1727年夏、少年と男たちの一団が、食用の鳥を獲るため、スコットランドのセント・キルダ諸島ヒルタ島沖の海食柱に上陸したところ、迎えのボートが現れず、島から遠く離れた海食柱の上に取り残される、という実話に基づくサバイバルストーリーである。

受賞にあたり、マコックランは、「子どもたちは、本の中で様々な言葉に出会い、それを身に着けていく。もし、限られた平易な言葉しか与えられなかったら、子どもたちは、自分で考えるのに必要な言葉を手にできず、将来、自立した市民にはなりえない。十分な言葉がなければ、簡単に操られてしまい、服従以外の道を見出せないのだから。」と述べ、豊かな言葉で書かれた児童文学の必要性を語った。

審査員長は、「登場人物それぞれに物語があり、困難な状況における緊迫感が伝わってくる。ダイヤモンドが光を受けて輝くように、ひとつひとつの経験や気づきは反射したり、屈折したりしながら、読者の心にいつまでも残る」と評価した。

ケイト・グリーナウェイ賞を受賞した“Town Is by the Sea” は、1950年代の炭鉱町で暮らす少年の一日が描かれ、遊びにあふれた子供の世界と、働く大人たちの世界、明るい地上と危険に満ちた坑道が対照的に示されている。

受賞にあたり、スミスは、「この作品は特定の場所や時代を描いているが、子ども時代や、その複雑な豊かさには普遍的な美しさがある」と語った。

審査員長は、「“Town Is by the Sea” は、遊びと驚きでいっぱいの子どもの日常と、炭鉱町の人たちが集団として持つ、より大きな物語を、見事なバランスで捉えている。印象深い景色が遠くまで広がり、当時を美しく呼びおこす挿絵だ」と評価した。

また、アムネスティ・インターナショナルとCILIP(Chartered Institute of Library and Information Professionals)が、カーネギー賞及びケイト・グリーナウェイ賞のショートリスト(候補作品のリスト)のそれぞれから、人権や自由について理解を深める本を1作品ずつ選んで称揚するアムネスティCILIPオナー賞(Amnesty CILIP Honour) も同時に発表された。カーネギー賞候補からは、アンジー・トーマス(Angie Thomas)の “The Hate U Give”(邦訳『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ : あなたがくれた憎しみ』)、 ケイト・グリーナウェイ賞候補からは、レーヴィ・ピンフォールド(Levi Pinfold)の “The Song from Somewhere Else”(A・F・ハロルド(A.F. Harrold)文)が受賞した。ピンフォールドは、2013年に “Black Dog”(邦訳『ブラック・ドッグ』)でケイト・グリーナウェイ賞を受賞している。

黒人の人権運動「ブラック・ライブズ・マター」(Black Lives Matter)に影響を受けて書かれた“The Hate U Give”では 、16歳の少女が、白人の警官が親友の少年を射殺するのを目撃する。“The Song from Somewhere Else” は、友情、裏切り、他者の受容、正義を貫くことを描いた物語である。アムネスティ英国事務局長は、「社会の周縁に追いやられた若者がいじめや抑圧と闘うという、時宜を得た物語を選んだ。闘いの最前線に身を置くこと、それには代償がともなうことが描かれていて、女性や黒人の権利を求め、抗議活動が行われている今の時代につながる。憎しみに立ち向かう中で、いろんなものを失ったり、また、思いがけず手にしたりする主人公の姿に、若い読者も刺激をうけるだろう」と評価した。

Ref:

[ⅰ] ジェラルディン・マコックラン(Geraldine McCaughrean)

英国の児童文学作家として、カーネギー賞ショートリストに最も多く選ばれている。"A Pack of Lies"(邦訳『不思議を売る男』)で、1988年にカーネギー賞、1989年にガーディアン賞を受賞した。2004年には、"Not the End of the World"(邦訳『世界はおわらない』)で、コスタ賞児童図書部門を受賞した。

Ref:

所蔵情報:

ジェラルディン・マコックラン(Geraldine McCaughrean)著作一覧:国立国会図書館サーチで当館所蔵資料を検索

[ⅱ] シドニー・スミス(Sydney Smith)

カナダ在住のイラストレーター。“Town Is by the Sea” の制作にあたり、スミスはケープ・ブレトン島のグレースベイにある炭鉱博物館を訪れた。印象的な画風は、英国の画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの影響を受けている。

Ref:

(2018.07.23 update)