プロイスラーの名を冠するドイツの学校の改名論争

【2024-033】

バイエルン州プラッハにあるオトフリート・プロイスラー・ギムナジウムが、校名を変えるか否かで物議を醸している。同校は、ドイツの著名な児童文学作家オトフリート・プロイスラーの名のついたギムナジウム(大学進学を目指す中高一貫校)であり、10年前にこの名称に変更された。プロイスラーが兵役についていたことと、1940~1942年、十代だったときに “Erntelager Geyer” という小説を書き、その中でヒトラー・ユーゲントを肯定的に描いていることが問題視されている。“Erntelager Geyer” の原稿の存在を学校が知ったのは、最近になってからのことだという。

Frankfurter Allgemeine Zeitung 紙によれば、「暴力や魔術によって対立の問題を解決するのは、生徒にとって問題があるのではないか」と、学校経営者側は話している。プロイスラーの代表作の一つである『クラバート』では、少年が水車場で魔法を学び、呪いを打ち破るまでが描かれている。プロイスラーは1998年、同作について、「(主人公の少年は闇の力に魅せられ、引き込まれた後で)その実体に気づく」「これはわたしの物語であり、わたしの世代の物語だ。大きな力に触れ、誘惑を受け、絡め取られてしまった若い人たちの物語だ」と語っている。

プロイスラ―の出身地北ボヘミアに関連する民族グループが「魔女裁判だ」と批判する一方、名前を変えるかどうかはまだ決まっていない。教員、保護者、生徒などは名前の変更に同意しており、今後は文化省が審査することになっている。

プロイスラーは1923年、北ボヘミアに生まれた。17歳のときにドイツ国防軍に入り、東方の前線で3年間戦った後、ソ連の収容所で5年間を過ごした。終戦とともにズデーテン地方の故郷を失い、家族でバイエルン州に移り住んだ。2013年にバイエルン州プリーンで亡くなるまで、『大どろぼうホッツェンプロッツ』や『小さい魔女』など32冊の本を書き、著作は世界の55の言語に訳された。『クラバート』は、スタジオジブリの映画『千と千尋の神隠し』の最後の場面で、千尋がたくさんの豚の中から両親を見つけ出すシーンに影響を与えた。

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(2024.04.24 update)