開館20周年記念メッセージ

開館20周年に寄せて、国内外の関連機関の皆様や、国際子ども図書館にゆかりのある方々からいただいたメッセージをご紹介します。(お名前とご所属は2020年5月時点のものです。)

海外(ABC順)

国内(五十音順)

Mr. Cho YoungJoo 韓国国立子ども青少年図書館 館長

ジョ・ヨンジュ 肖像

こんにちは。
韓国国立子ども青少年図書館館長、ジョ・ヨンジュです。
開館20周年を心からお祝い申し上げます。
国際子ども図書館は、2000年に開館して以来、「児童書の専門図書館として、子どもと本のふれあいの場として、子どもの本のミュージアムとして」国の希望を込めた透明な器の役割を果たしてきました。その努力により、子どもたちは豊かな経験と機会を得て、幸福な夢と未来を描くことができるようになりました。
この20年、「子どもたちの幸福な未来」という共通の希望を携え、懸命に各々の業務に取り組んできた職員の皆様に敬意を表します。
「子どもの本は世界をつなぎ、未来を拓く!」との信念のとおり、これからも本を通じて子どもたちの明るい未来を開く揺るぎのない拠り所となることを願います。
国立子ども青少年図書館は、これからも国際子ども図書館と密接な協力関係を維持していきたいと思います。お互いの素晴らしい経験をシェアし、両国図書館の発展はもちろん、全世界的な児童サービスの発展のために、共に寄与していきましょう。
国際子ども図書館の無窮の発展を祈り、国立子ども青少年図書館の全職員を代表して、改めて開館20周年をお祝い申し上げます。

안녕하세요.
대한민국 국립어린이청소년도서관 조영주 관장입니다.
일본국제어린이도서관 개관 20주년을 진심으로 축하합니다.
일본국제어린이도서관은 2000년 개관이래 ‘어린이책 전문도서관으로서, 어린이와 책의 만남의 장소로서, 어린이책 박물관으로서’ 나라의 희망을 담는 투명그릇의 역할을 해 왔습니다. 그러한 노력은 어린이에게 풍요로운 경험과 기회를 주고 어린이가 행복한 꿈과 미래를 꿈 꿀 수 있게 하였습니다.
지난 20년 동안 ‘어린이의 행복한 미래’ 라는 공통된 소망을 간직하고 각자의 자리에서 열심히 일해오신 일본국제어린이도서관 직원에게 경의를 표합니다.
‘어린이 책은 세계를 이어주고 미래를 연다’는 일본국제어린이도서관의 신념처럼, 앞으로도 책을 통해 어린이의 밝은 미래가 열릴 수 있는 한결같은 어린이들의 보금자리가 되길 바랍니다.
대한민국 국립어린이청소년도서관은 앞으로도 일본국제어린이도서관과 지속적이고 밀접한 협력관계를 가지고자 합니다. 서로의 훌륭한 경험을 공유하며 양국의 도서관 발전은 물론 범세계적으로 어린이서비스 발전을 위해 함께 기여할 수 있기를 희망합니다.
일본국제어린이도서관의 무궁한 발전을 기원하며, 대한민국 국립어린이청소년도서관 전 직원을 대표하여 다시 한 번 개관 20주년을 축하드립니다.
감사합니다.

Dr. Sybille A. Jagusch 米国議会図書館 児童書センター長

Dr. Sybille A. Jagusch 肖像

2000年5月8日に開催された国際子ども図書館開館記念国際シンポジウム「子どもと本と読書―21世紀の子どもたちのために今何をなすべきか―」に参加したときのことを嬉しく思い出します。
「ドットコム世代―物語は終わってない!」と題したプレゼンテーションを、私は、以下のように締めくくりました。
「日本人は、芸術を育む精神世界を作ることにかけては達人でありました。日本庭園、茶道、そして能楽においてそうした精神世界を創造してきたのです」
改めて現在、日本の素晴らしい伝統の中に強さを発見し、新しく革新的な方法で、子どもたちに物語を手渡すときなのです。

I think with pleasure of participating in your May 8, 2000 symposium "Children's Books and Reading: What should we do for Children of the 21st Century?"
My presentation "The Dot.Com Generation: Or, Story Lives!" ended on this note:
"The Japanese people have been masters of creating the great inner spaces that nurture the arts, the mind and the spirit. You have created these spaces in your gardens, in the tea ceremony and in the No plays."
Now, it is time to, once again, find strength in your great traditions and to seek new and innovative ways to bring stories to children.

Dr. Christiane Raabe ミュンヘン国際児童図書館 館長

Dr. Christiane Raabe 肖像

国際子ども図書館20周年おめでとうございます。
2年前に国際子ども図書館を訪れたとき、その素晴らしい佇まいと傑出した国際的な児童書コレクション、児童文学研究者に開かれた機会と、子どもの読書振興のための様々な試みに深い感銘を受けました。2000年の国際子ども図書館創立は、児童文学を推進するという日本政府の取組みにおける感動的で光り輝く記念碑となっています。当時からミュンヘン国際児童図書館と国際子ども図書館は親密な関係を築いており、子どもの本を通じた国際理解の精神は、国境を越えて二つの組織を結んでいます。
国際子ども図書館20周年を心からお祝い申し上げ、今後の幸運をお祈り申し上げます。

Congratulations to the 20th anniversary of the ILCL
When I visited the International Library of Children's Literature (ILCL) at the National Diet Library two years ago, I was deeply impressed by the wonderful premises, the outstanding international collection of children's books, the opportunities for researches on children's literature, and the initiatives to promote reading among children. With the founding of the ILCL in 2000, the commitment of the Japanese state to promote children's literature was set as an impressive and vivid monument. Since that time, there have been close relations between our libraries, and the spirit of international understanding through children's books connects our institutions across geographical borders.

Mr. Wang Zhigeng 中国国家図書館少年児童図書館 館長

王 志庚 肖像

このたび国際子ども図書館が開館20周年を迎えるに当たり、中国国家図書館少年児童図書館を代表して心からお祝いを申し上げます。
「子どもの本は世界をつなぎ、未来を拓く!」という理念のもと、世界各国の優れた児童書を幅広く収集し、子どもたちのために多種多様な読書イベントを行い、同時に児童書の展示や調査研究、児童文学講座などの学術的な活動をしておられる貴館は、日本の子どもたちや教育関係者だけでなく、中国の観光者や図書館員にも憧れの地となっています。また、貴館は世界の児童図書館の連携協力と交流に素晴らしい貢献をしておられ、世界の同志の一人として敬服の念に堪えません。
国際子ども図書館の事業がますます盛んになり、相互の交流がより豊かな成果をもたらしますことを、心から祈念いたします。

值此贵馆20周年开馆纪念之时,我谨代表中国国家图书馆少年儿童馆表示最诚挚的祝贺!
贵馆秉承“童书连接世界,儿童开拓未来”的理念,广泛收集世界各国的优秀童书,为少年儿童提供了丰富多彩的读书活动,同时还开展童书展览、专题研究、儿童文学讲座等学术活动,不仅是日本儿童读者及教育工作者的向往之地,也是很多中国游客和图书馆员的慕名打卡之地。贵馆为世界儿童图书馆的合作与交流做出了卓越贡献,我作为国际同行倍感钦佩。
祝愿贵馆事业腾达,贵我双方取得更多积极的交流成果。

Mr. Zhang Mingzhou 国際児童図書評議会(IBBY) 会長

張 明舟 肖像

国際子ども図書館の開館20周年を心からお祝いいたします。
国際子ども図書館は、新しい世紀に、世界中の図書館と子どもの読書推進に関わる人々の間に「新生児」として誕生しました。そして僅か20年の間に、大いに子どもたちの知識を豊かにし、視野を広げ、感受性、表現力、想像力、創造力を養ってこられました。
国際子ども図書館は、日本の図書館界における子どもの読書に関わる人材の育成に貢献し、関連機関との交流・連携を積極的に進め、児童書の研究と普及を継続的に発展させ、また、世界の様々な国と地域の優れた児童書を通じて児童文学の交流と国際理解の促進に取り組むことにより、世界平和の維持に、独自でかつ持続的な役割を果たしておられます。そして世界中の子どもの読書に関わる人々に愛され、尊敬され、憧れられる世界の児童文学と児童書の殿堂となっているのです。
是非、再び国際子ども図書館を訪れ、その貴重な経験を世界に紹介できればと願っております。

热烈祝贺国际儿童图书馆成立20周年!
作为世界图书馆界和儿童阅读推广界在新千年里诞生的一个“新生儿”,短短20年间,贵馆极大丰富了儿童的知识,开阔了儿童的视野,培养了儿童的感受力、表达力、想像力和创造力。贵馆致力于培养全日本图书馆系统儿童阅读方面人才,与各相关机构交流合作,不断提升童书研究和推广水平,通过来自世界各地的高品质童书,积极促进各国儿童文学交流,促进国际理解,为维护世界和平发挥独特而持久的作用,也使贵馆成为值得世界同行喜爱、尊敬和向往的国际儿童文学和童书的圣殿。
如有机会,我愿再次造访,并将贵馆的宝贵经验分享给全世界。

安藤 忠雄 氏 建築家

安藤 忠雄 肖像(撮影:閑野欣次)

国際子ども図書館は2002年に完成、開館しました。
およそ100年前、明治39年に建てられた帝国図書館を日本初の国立児童図書館につくりかえる。素晴らしい企画に心昂らせ、精一杯、設計しました。
旧いものをただ〝残す〟のではなく、それを今に〝生かす〟こと。それを目標に、旧いレンガの壁にガラスの箱が突き刺さり、過去と現在がぶつかり合い共存する建築をつくりました。
社会が子どもと大人、老人とが支え合い、営まれていくように、街もまた、新旧の建物が重なり合い、記憶を紡いでいく場所であるべきです。
そんな理想の風景の象徴として、国際子ども図書館は今日まで20年間を歩み、今また次なる一歩を踏み出しました。
利便性第一の情報化の波に呑み込まれつつある現代にあってなお、「子どもの本で世界をつなぎ、未来を創ろう」と頑張るその姿に、私は大きな希望を感じています。

小田 光宏 氏 公益社団法人 日本図書館協会 理事長

日本の誇りILCL:開館20周年を祝して

小田 光宏 肖像

海外からの客人との会話をまず紹介します。
 客人:滞在中に訪れると良い図書館はどこ?
 小田:国際子ども図書館を外したら後悔するよ。
この会話、何度交わしたことでしょうか。私を尋ねてくる多くの方は図書館関係者なので、当たり前かも知れません。ほぼ全員から寄せられる質問です。平均して一年に3名とすると、これまで60回に達する計算です。時計の針と同じく、新たな刻みの始まりを迎えています。
頭字語ILCLの躍動感。お隣の「国社研」に用務で急ぐときにも、煉瓦づくりの趣に足を止めてしばし見入ります。異国の旅人には、小泉八雲記念碑の由来を語ることも忘れません。弓形の棟に移された児童書研究資料室は、The International Library of Children's Literature の名に恥じない、日本の誇りとなる児童奉仕の拠点でしょう。
開館20周年。2年先だったら、「子どもが成人した」は使えませんが、今なら大丈夫。これまでの成長ぶりに、心から喝采します。おめでとう。そして、これからも、子どもの気持ちを忘れずに、歩み続けてください。

河村 建夫 氏 子どもの未来を考える議員連盟 会長

国際子ども図書館開館20周年に寄せて

河村 建夫 肖像

2000年5月に現上皇妃陛下をお迎えし、華々しくその開所式が開かれた国際子ども図書館の開館から20周年という大変喜ばしいこの年に、その設立を推進する超党派の議員連盟「国際子ども図書館設立推進議員連盟」を改組した「子どもの未来を考える議員連盟」会長としてお祝いの御挨拶を申し上げる機会を頂き誠にありがたく存じます。
国際子ども図書館は所蔵する資料数は国内図書30万冊、海外図書10万冊を超え、年間の来館者数は14万人、うち中学生以下は3万人を超えるなど、児童書専門図書館として、子どもと本のふれあいの場として、子どもの本のミュージアムとしてという3つの基本的な役割を果たしてきたと認識しております。
「子どもの未来を考える議員連盟」では、「子どもの読書活動の推進に関する法律」改正を主導し、「日中韓子ども童話交流事業」を毎年実施するなど、世界に羽ばたく子ども達の読書活動を強く支援して参りました。これからも、議員連盟は国際子ども図書館の応援団として、子どもの読書活動推進に尽力して参ります。

さくま ゆみこ 氏 一般社団法人 日本国際児童図書評議会(JBBY) 会長

さくま ゆみこ 肖像

20周年、まことにおめでとうございます。今はコロナ禍のせいで、ほとんどの方がほかの人たちとの直接的な接触を断って、自分や家族の健康と安全をまず第一に考えなくてはいけない状況におかれているかと思います。でも、私はそんな時だからこそ、すべてを機械やネットに任せることをよしとするのではなく、本来は人と人との交流が大事だということや、本来は視野をもっと広くもちたいということを、おとなも確認し、また子どもたちにも伝えていきたいと思っています。
子どもの本は、「今」「ここ」から抜け出して視野を広くもち、自分とは違う人、自分のいるところとは違う文化を理解するための窓になってくれます。そういう意味でも、子どもの本は、未来の文化をつくっていくための大きな土台の一つなのです。国際子ども図書館が、その土台を築くための努力を重ねてこられたことに敬意を表し、これからも一緒に考え、協力し合いながら考えていければと願っています。

設楽 敬一 氏 公益社団法人 全国学校図書館協議会 理事長

国際子ども図書館開館20周年に寄せて

設楽 敬一 肖像

国際子ども図書館開館20周年、誠におめでとうございます。
21世紀を目前にした1990年代に、子どもの読書推進や学校図書館の整備充実に力を注いでいた先達が、国際的な子ども図書館の設立に向けて動きました。この頃、当時の文部省は「全国学校図書館悉皆調査」(1992年)の実施、「学校図書館図書標準」の設定と「学校図書館図書整備新5カ年計画」(1993年)策定を実現しています。
こうした活動の一つに民間の「学校図書館連絡会」(1993年6月)、国会議員による「子どもと本の議員連盟」(同年12月)が発足しました。この動きは更に発展して民間の「国立の国際子ども図書館設立を推進する全国連絡会」(1995年5月)、国会議員による「国際子ども図書館設立推進議員連盟」(同年6月)が発足するなど、子どもの読書への期待や関心が高まりました。21世紀を迎えるにあたり、フォーラム「21世紀の子どもへの贈り物:国立の子どもと図書館を考える」(1996年6月)や緊急フォーラム「21世紀の子どもの読書環境を考える」(1997年3月)、「学校図書館の充実が子どもの明日をひらく」(1998年11月)などが開催されました。国会でも「子ども読書年に関する決議」(1999年8月)が衆参両院で可決成立し、21世紀を目前とした2000年が「子ども読書年」となり「国際子ども図書館」の部分開館となりました。
先達は、100年かけても実現できないといわれていた国立の国際的な子ども図書館が10年間で実現したことに満足せず、「学校図書館法」改正、「子どもの読書活動推進に関する法律」の制定・施行などに取り組み、第5次の「学校図書館図書整備等5か年計画」などにも力を注ぎました。20年にわたる国際子ども図書館の歩みは、子どもの読書推進や学校図書館の充実の成果だと捉えています。益々の発展を祈念してお祝いの言葉といたします。

白井 哲 氏 特定非営利活動法人 ブックスタート 代表

心をひとつに

白井 哲 肖像

開館20周年おめでとうございます。
2000年5月、子どもの本に関わる全ての人々が心をひとつにしました。国際子ども図書館が開館し、私たちは希望の星を見たのです。
赤ちゃんに絵本を手渡す活動である「ブックスタート」もこのとき日本に紹介され、試験実施が行われます。翌年、図書館員さんや保健師さんに加えて、地域のボランティアさん、そして作家、画家、出版界の皆様からも賛同を得て、ブックスタートは「子ども読書年」を記念する継続事業として晴れて実現の日を迎えました。
それから20年、見えてきたことがあります。全人類が等しく共有しているもの、時代を超えて、性別、人種、文化の違いを超えて共有しているもの、それは「子どもへの愛」ではないでしょうか。
「国際子ども図書館」は世界に向けてその扉を開きました。そして今も私たちは心をひとつにして、地球上の全ての子どもたちをいつくしむのです。

鈴木 みゆき 氏 独立行政法人 国立青少年教育振興機構 理事長

無限の時間と空間を創りだす場所

鈴木 みゆき 肖像

開館20周年誠におめでとうございます。国際子ども図書館の各部屋の扉を開けると、過去の自分や未来の子ども…世界中の人々の暮らしや文化に出会えます。館内を歩けば、部屋ごとに息づく図書館の方々の思いや、そこに集う子ども達の(もちろん大人も)笑顔が発見できます。まさにここは世界に誇れる日本の宝です!
子ども達は本を通して感性や知識を磨き、未知の世界に想像力を羽ばたかせ、自身の可能性を広げていきます。かつて子どもだった私達大人も同じです。昔読み聞かせてもらった絵本に再び出あい、どこかで読み手になる機会があるかもしれません。幼い頃には気づかなかった作者の意図や新しい創作文学の奥深さに感嘆するかもしれません。
本を手に取り、ページをめくるごとにわくわくする世界が待っているように、国際子ども図書館はその部屋ごとの扉の向こうに無限の時間と空間を用意して利用者を迎えてくれるのです。これからもよろしくお願いいたします。
ますますのご発展、心より祈念しております。

竹下 晴信 氏 日本児童図書出版協会 会長

国際子ども図書館の皆様、開館20周年、おめでとうございます。
「子どもと子どもの本の未来のために」という座談会が、国会議員肥田先生を交えて、全国学校図書館協議会と日本児童図書出版協会の三者で行われ、『こどもの本』1994年1月号に掲載されました。そこで語られた話題の一つが、「国立子どもの本の館」ができるといい、という願望でした。
肥田先生は、その実現にむけて、まずミュンヘンの子ども図書館の視察に向かわれ、私達も民間の立場から随行しました。そして2000年には、速やかに開館にこぎつけられました。
さらに国際子ども図書館は、2015年に新館を完成されました。日本の未来を託す子供に対する、関係各位の強い熱意があらためて伝わってまいりました。
開館以来国際子ども図書館は、様々な企画と展示を立ち上げてこられました。私達の出版する多様な本を図書館の企画に生かし、子供に発信していただくことを願っております。

野間 省伸 氏 公益社団法人 読書推進運動協議会 会長

野間 省伸 肖像

国立国会図書館国際子ども図書館の開館20周年、まことにおめでとうございます。
2000年の「子ども読書年」に開館して以来、貴館は国立初の児童書専門図書館として、国内外の子どもの本を収集、読者に提供されてきました。
貴重な蔵書を活用した図書展示などを通じて、私どもは子どもの本の豊かな世界を目の当たりにすることができました。
また学校図書館への図書セット貸出やレファレンスサービス、子どもたちを対象とした定期的なおはなし会の開催など、読書の裾野を広げる活動を堅実に行ってこられました。
さらに研究者への資料提供や作家・著者団体とも協力して世界の子どもの本の情報を紹介するなど、児童図書の作り手なども支えてこられたことにも敬意を表します。
2020年は政府による緊急事態宣言が発令されるなど、先行き不透明な時代となりましたが、そんな状況だからこそ、子どもの読書の重要性はますます高まっています。
困難を乗り越え、新しい時代を切り開いていく子どもたちに読書の喜びを伝え、生きる力を与えるためにも、これまで以上にともに手を携え新しい時代を歩んで参りましょう。

張替 惠子 氏 公益財団法人 東京子ども図書館 理事長

国際子ども図書館20周年に寄せて

張替 惠子 肖像

今では、上野に児童書専門の国立図書館があることは、すっかり当たりまえになりました。これからここを訪れる人たちは、この図書館が、作家、出版関係者、図書館員、文庫関係者、読書ボランティアらの願いを土壌に、熱心な国会議員と行政担当者の尽力により〝奇跡〟といえるほど短期間に創設されたということを、歴史として知ることになるでしょう。この20年のあゆみのなかで、各方面からのさまざまな期待や要望に応えることは容易ではなかったでしょうが、新館増設やインターネット情報発信の拡充、国内外の連携促進など、国立ならではの底力を発揮し、資料もサービスも厚みを増していることは本当に喜ばしいことです。その業務を担う人たちがさらなる熟練を極められるような体制を整え、子どもと本の出会いのために献身する全国の人たちを支える先進的な仕事を息長く続けてくださるようにお祈りしています。

肥田 美代子 氏 公益財団法人 文字・活字文化推進機構 理事長

子どもと本の豊かなつながりが未来をつくる

肥田 美代子 肖像

国会議員のとき成しとげた仕事のなかでも、国際子ども図書館の設立はわたしの大きな喜びである。90年代のはじめ、国立国会図書館には子どもに関連した蔵書が15万冊ほどあると聞いていたが、18歳未満の者は入館できない決まりがあった。ならば子どもが自由に出入りできる新しい国立図書館をつくる以外にないとわたしは考えた。
しかし国立国会図書館の人たちには「子どもの本は文科省の仕事」と反対され、文科省からは「子どもの本を集めるのは国会図書館の役目」と冷たくあしらわれた。これらの空気はわたしのやる気をいよいよ高めた。
わたしは、95年6月、超党派の「国際子ども図書館設立推進議員連盟」(会長村上正邦、事務局長肥田美代子)を設立するとともに、安藤忠雄さんには設計・建築を依頼するなど、「さあ、やるぞ!」という決意をあらためて内外に示した。これらの動きは、それまでの「お手並み拝見」とか、「100年はかかる」とかの冷やかな空気を一瞬のうちに沈静した。そうして2000年5月5日、東京・上野の森に「国際子ども図書館」は開館したのである。
それから20年、子どもと本の豊かなつながりの場として内外に注目されている。

宮川 健郎 氏 一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団 理事長

未来の創造

宮川 健郎 肖像

2000年の部分開館から20年が経ったのですね。おめでとうございます。
国立でただ一つの児童書専門図書館である国際子ども図書館は、国立国会図書館の支部図書館と位置づけられていますが、私たちがいだいていた「国会図書館」のイメージを超えて、工夫のある自由な仕事を展開してこられました。「子どものへや・世界を知るへや」「調べものの部屋」での児童サービスだけでなく、子どもたちに本を手渡す大人たちの研究・研修や国際交流の拠点にもなっています。2016年のレンガ棟、アーチ棟の2棟による全面リニューアルオープンは、国際子ども図書館が成長したすがたと見ることができます。歴代の館長や職員の皆様にも、深く感謝申し上げます。
国際子ども図書館の仕事がさらに積み上げられ、発展していくことを願ってやみません。子どもの本をめぐる状況を豊かに耕していくことは、この国の未来を創造することなのですから。