子どもの読書傾向に関する調査 “What and How Kids Are Reading”(英国)

【2020-057】

英国ダンディー大学(University of Dundee)の Keith Topping 教授が、学校教育向けのソフト販売などを手がける米国Renaissance Learning社とともに英国国内の小中等学校(Primary / Secondary schools)5,339校の児童・生徒約1,135,860人を対象に行った子どもの読書傾向に関する調査 “What and How Kids Are Reading” の結果を発表した。

同調査は、例年 “What Kids Are Reading” のタイトルで発表されてきたが、12回目となる2020年版調査では、タイトルに“and How” を付し、調査の幅を広げた。今回の調査は、Part. A「子どもたちの読書の状況」と、Part. B「子どもたちが読んでいる本」の二つの章で構成される。

Part. A「子どもたちの読書の状況」では、男子児童や中高生についてはAR(Accelerated Reader)が子どもの読書に有用なことなどが紹介されている。ARはパソコン等の電子機器で使用するソフトウェアであり、クイズによって読書の理解度を測るとともに読んだ本を記録する。

Part. B「子どもたちが読んでいる本」の調査結果の概要は以下のとおりである。

  • 小学校では、学年が上がるごとに読む本の難易度は著しく上がる。しかし中等学校入学後の7~8年生の伸び率は大きくない。日本の中学校3年生から高校3年生に相当する10~13年生になると、読む本の難易度は下がる。読む本の冊数は若干増加するが、その内容は正確には読まれていない。
  • 10~13年生は小学校高学年(5~6年生)と同程度か、それより易しい本を読んでいるが、中等学校の子どもたちにおいても、難しい本を読んだ方がより読書の効果が期待できることは明らかである。
  • 特に小学校では、難しい本であっても好きな本であれば正確に読まれており、読書の効果を上げるには、必ずしも新しい本を読む必要はなく、好きな本を読むのがよいといえる。
  • ノンフィクションについても、中学校1年生から3年生に相当する7~9年生では、自分の年齢よりも対象年齢の低い作品を読む傾向がある。なお、理解度を見ると、ノンフィクションはフィクションほど丁寧に読まれていない。
  • 読書を楽しんでいること、毎日読んでいること、読書に対して前向きであることと読解力(reading ability)には関連がある。

この調査結果を受けて、以下の内容を含む提案が示された。

  • 生徒が、好きな本やその理由、読みやすさなどを記したブックリストを作成し、それをクラスで共有するなど、同世代で本を薦めあうことは非常に有効な働きかけとなる。
  • 中等学校では読解力が高い生徒も低い生徒も難易度の低い本を読んでいるので、より難しい本を読むよう働きかける必要がある。
  • 中等学校で読まれているノンフィクションは難易度が非常に低く、男子が読む本はテーマが偏っているため、より難しい本や、男子については幅広い内容の本を読むような働きかけが求められる。

Ref:

(2020.04.28 update)