2020年国際アンデルセン賞受賞者決定

【2020-064】

2020年5月4日、国際児童図書評議会(International Board on Books for Young People: IBBY)は、2020年国際アンデルセン賞(Hans Christian Andersen Awards)受賞者を発表した。作家賞は米国のジャクリーン・ウッドソン(Jacqueline Woodson)、画家賞はスイスのアルベルティーヌ(Albertine、アルバータインと表記する場合もある)が受賞した。授与式は、2021年9月にモスクワ(ロシア)で開催されるIBBY世界大会で行われる。

推薦時の資料では、ウッドソンについて「言葉が詩的で、登場人物は力強く、常に希望が感じられる。会話の口調は妙を得ており、真に迫る生き生きとした物語の結末は読者を満足させる」と述べられている。アルベルティーヌは画家としても作家としても、多様な解釈を加えた作品を制作している。推薦時の資料では、「自然に、それでいて細部まで注意深く非常に正確に、またユーモアをもって表現した作品で知られる」と述べられている。

作家賞にノミネートされた34名のうち、最終選考まで残ったのは、ジャクリーン・ウッドソンに加え、ベルギーのバルト・ムイヤールト(Bart Moeyaert)、イランの Farhad Hassanzadeh、アルゼンチンの María Cristina Ramos、フランスのマリー=オード・ミュライユ(Marie-Aude Murail)、スロベニアの Peter Svetina の6名。画家賞には36名がノミネートされ、最終選考まで残ったのは、アルベルティーヌに加え、日本の田島征三、スペインのエレナ・オドリオゾーラ(Elena Odriozola)、カナダのイザベル・アルスノー(Isabelle Arsenault)、ポーランドのイヴォナ・フミェレフスカ(Iwona Chmielewska)、オランダのSylvia Weveの6名。

(敬称略。作者の日本語読みは、判明した場合のみ記載した。)

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所蔵リスト

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ジャクリーン・ウッドソン(Jacqueline Woodson)

1963年にオハイオ州コロンバスで生まれ、サウスカロライナ州グリーンビルとニューヨークで育つ。ストリート・チルドレンのための演劇セラピスト等を経験しながら、1990年、二人の少女の友情を描いた三部作の一冊目にあたる “Last Summer With Maizon”(邦訳『マーガレットとメイゾン』)でデビューした。10代の妊娠、児童養護、人種問題、薬物、証人保護プログラムなどをテーマに、YAから絵本まで数多くの作品を書き、疎外され社会的周縁に追いやられた人々を描いている。2014年に、アフリカ系米国人の少女が作家になるまでを描いた自伝的作品 “Brown Girl Dreaming” で全米図書賞児童文学部門を受賞した。また2018年にはリンドグレーン記念文学賞(The Astrid Lindgren Memorial Award)を受賞し、同年から2020年まで米国の第6代目児童文学大使(National Ambassador for Young People’s Literature)を務めた。学校、中でも特に厳しい状況に置かれている生徒たちとの交流が、創作につながっているという。

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アルベルティーヌ(Albertine)

1967年にジュネーブ州ダルダニーに生まれた。ブラティスラヴァ世界絵本原画展(Biennial of Illustrations Bratislava: BIB)金のりんご賞を受賞した “Marta et la bicyclette”(邦訳『マルタとじてんしゃ』)をはじめ、夫であるゲルマノ・ズロ(Germano Zullo)との共作も多い。鉛筆や万年筆の細い線に、グワッシュやデジタルで鮮やかな色をつけて制作し、絵のほかシルクスクリーン、リトグラフ、木版、立体作品等を世界の様々な都市で展示してきた。制作時に子どもの読者のことは考えないというアルベルティーヌの作品は直観的で、持ち味を変えることなく、子どもの時の最初の一筆を毛糸玉のように繰りつづけている。どの本にも気品があり、現実と想像の世界、些末なものと崇高なもの、夢と記憶が合わさった絵が軽やかに踊る。永遠に抱きあう母子の姿をフリップブックで表した “Mon tout petit” は2016年にボローニャ・ラガッツィ賞フィクションの部最優秀賞を受賞した。“Les Oiseaux” は、2018年の国際アンデルセン賞審査員によって、15 Very Best Books に選ばれた。


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(2020.05.09 update)