2020年IBBY-iRead 読書プロモーター賞

【2020-077】

国際児童図書評議会(International Board on Books for Young People: IBBY)は、2020年5月4日、IBBY-iRead 読書プロモーター賞(IBBY-iRead Outstanding Reading Promoter Award)の受賞者について、オランダの作家・画家であるマリット・テルンクヴィスト(Marit Törnqvist)と中国の研究者である朱永新(Zhu Yongxin)に決定したと発表した。

本年、IBBYと中国のiRead基金によって新設された同賞は、優れた読書推進プロジェクトを立ち上げて実施したり、読書推進のための方策を効果的に進めたり、子どもの読書の権利を推奨し広く伝えるなど、読書推進に貢献した個人を対象とし、隔年で2名に授与される。2021年にモスクワで開催されるIBBY世界大会で授与式が行われる。

マリット・テルンクヴィスト(Marit Törnqvist)

作家・挿絵画家のテルンクヴィストは、オランダ人の母とスウェーデン人の父の間に生まれ、スウェーデンとオランダで育った。親交のあったアストリッド・リンドグレーンの本につけた挿絵で、国内外で知られるようになり、2006年には “Pikkuhenki”(トーン・テレヘン文 邦訳『小さな小さな魔女ピッキ』)で金の画筆賞を受賞した。物語だけでなく、読書体験そのものに焦点を当てるようなテルンクヴィストのプログラムでは、子どもたちは物語に自分を重ねて自らの物語を語り、また、異なる国の子どもたちが共に活動する中で互いの生活や文化への理解を深める。テルンクヴィストは、困難な状況におかれた子どもたちが自らの物語を表現する過程で厳しい現実と向き合うビブリオセラピーも行っている。2015年に来日した際には、国際子ども図書館で「オランダの子どもの本―小さな子どもに大きなテーマを差し出すとき」と題する講演を行った。

朱永新(Zhu Yongxin)

朱は研究者であり、子どもの読書推進に関する多くの著作がある。長年にわたり研究や活動を行い、読書推進のロールモデルとして国内の教員に対して研修を実施するなどして、その活動の輪を広げてきた。親、子ども、教員への包括的な読書講座を学校が実施する上で役立つようなプログラムを、特に地方に焦点を当てて提供している。また、特別な支援を要したり、へき地で暮らしていたり、社会的に弱い立場にある子どもに焦点を当てて活動しており、中国で初めて、視覚障がいのある子どものためのオーディオブックを制作した。  朱は教育心理学を専攻し、大学教員を経て、蘇州市副市長として教育、科学、文化、公衆衛生の分野の政策を担当した。現在は、中国人民政治協商会議の常任委員などを務めている。

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所蔵リスト

マリット・テルンクヴィスト(Marit Törnqvist)著作一覧:国立国会図書館サーチで当館所蔵資料を検索

朱永新(Zhu Yongxin)著作一覧:国立国会図書館サーチで当館所蔵資料を検索

(2020.06.03 update)