2020年カーネギー賞及びケイト・グリーナウェイ賞受賞作品発表

【2020-106】

2020年6月17日、英国図書館情報専門家協会(The Chartered Institute of Library and Information Professionals: CILIP)は、2020年のカーネギー賞(Carnegie Medal受賞作品が、アンソニー・マゴーワン(Anthony McGowan) [ⅰ] の “Lark”、ケイト・グリーナウェイ賞(Kate Greenaway Medal受賞作品が、ショーン・タン(Shaun Tan)[ⅱ] の “Tales from the Inner City” に決定したと発表した。どちらの作品も、人間と自然の関係性と、「生き抜くこと」をテーマにしている。また、白人でない作家がケイト・グリーナウェイ賞を受賞するのは初めてのことである。

Lark” では、冒険に出かけた兄弟が、ノースヨークシャーの荒野で吹雪に見舞われる。助けを待つふたりの心を救うのは、自然に対する深い理解と敬意である。自然は、不思議と喜びを与えてくれるものであると同時に危険な存在としても描かれている。

受賞にあたり、マゴーワンは「冒険物語の “Lark” には、特別な支援を要する弟と、その兄が、家庭崩壊、貧困、いじめなどを乗り越えて絆を強めていく様子、そして物語が私たちの生活に結びついている様が描かれている」と語った。

ケイト・グリーナウェイ賞を受賞した “Tales from the Inner City” は “Tales from Outer Suburbia”(邦訳『遠い町から来た話』)の姉妹編である。25の物語は、作者であるタンが長年抱いてきた動物への愛情から生まれ、自然と人工の世界との間の断絶と緊張を描いている。タンは、今日われわれが直面している問題の多くは、ポスト・コロニアル時代の脱工業化社会において、特に都市空間の発達によって人間が自然と切り離されてしまったことによるものではないかと考えている。このような世界において、自然とのつながりを思い出させる作品である。

受賞にあたり、タンは “Tales from the Inner City” について、「人間の脆さは、都市にいるトラ、クマ、カエル、肺魚の夢を通して描きうるということを示した本」であり、「私たちと地球の関係性について、人々と、そしてなかでも、未来を思い描いている子どもたちと語り合えるのは、深い慰めになる」と語った。

審査員長は、「豊かな体験や冒険、慰め、インスピレーション、安心感、楽しみを与え、ときに現実から逃れさせてくれるような優れた本は、嵐を避けるための港であり、自分の姿を映す鏡であり、新しい世界への扉である」と述べた。“Truth of Things” シリーズの最終巻にあたる “Lark” については「ユーモアを交えた簡潔な文章で、人物も場面もリアリティをもって描かれている。真に迫る緊張感があり、鳥のさえずりのようにはかなく超越した詩があふれだす、単純明快な語り口の物語である。短く読みやすいのに力強く、豊かな読書体験を与えてくれる」、“Tales from the Inner City"については「細部に至るまで素晴らしい傑作である。都会と野生の境界がなくなりかけた、どこかディストピア的な場所の物語はシュルレアリスム的である。人間と動物の複雑で親密な関係性を、これまでにないほど美しく、とてつもない技量と洞察力でとらえている」と評価した。

Ref:

[ⅰ] アンソニー・マゴーワン(Anthony McGowan)

マゴーワンは英国のマンチェスターで生まれ、リーズで育った。現在はロンドンに住んでいる。“Truth of Things ”シリーズの“Rook” は2018年にカーネギー賞のショートリストに選ばれた。

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所蔵情報:

アンソニー・マゴーワン(Anthony McGowan)著作一覧:国立国会図書館サーチで当館所蔵資料を検索

[ⅱ] ショーン・タン(Shaun Tan)

タンはオーストラリアのパースで育った。社会・政治・歴史的なテーマを夢のようなイメージによって描くことで知られている。2011年にリンドグレーン記念文学賞を受賞した。また同年、自作の短編映画『ロスト・シング(落としもの)』でアカデミー賞短編アニメーション部門を受賞した。

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ショーン・タン(Shaun Tan)著作一覧:国立国会図書館サーチで当館所蔵資料を検索

(2020.07.30 update)