2022年ニューベリー賞、コルデコット賞受賞作品決定

【2022-016】

2022年1月24日(月)、米国図書館協会児童図書館サービス協会(Association for Library Service to Children, a division of the American Library Association: ALSC, ALA)は、2022年のニューベリー賞(Newbery Medal)受賞者が “The Last Cuentista” の著者 Donna Barba Higuera、コルデコット賞(Caldecott Medal)の受賞者が “Watercress” の画家 Jason Chin(ジェイソン・チン)に、それぞれ決定したと発表した。2つの賞は、前年に米国で発表された英語の児童書を対象とし、米国在住の作家および画家に与えられる。

ニューベリー賞

The Last Cuentista
Donna Barba Higuera

少数の選ばれた者として地球を脱出した Petra が目覚めたとき、宇宙船は全体主義の組織に支配されていた。Petra は、科学の知識と祖母から受け継いだ物語によって、組織に抵抗する。

米国図書館協会は、同作のニューベリー賞受賞にあたり「読者をひきこむような世界を構築し、人間であることの意味を描いている」と紹介した。同賞審査委員長は、「強いテーマと豊かな人物造形による魅力的なSFであり、世界を救う普遍的な語りの力を描きだしている」と評した。

また、同作は、ラテン系の作家・画家による作品に贈られるプーラ・ベルプレ賞(Premios Pura Belpré)児童書部門も合わせて受賞した。プーラ・ベルプレ賞審査委員長は、「複雑な筋の中に、ストーリーテラーとしての作者の力量を感じる。メキシコの昔話や伝説に命をふきこむ作品である」と評した。

作者の Higuera は2021年、“Lupe Wong Won’t Dance” で、ユーモアのある児童文学に贈られるシド・フライシュマン ユーモア賞を受賞している。

なお、次点作品にあたるニューベリー賞オナーブックには、以下の4作品が選ばれた。

  • Rajani LaRocca “Red, White, and Whole”
  • Darcie Little Badger “A Snake Falls to Earth”
  • Kyle Lukoff “Too Bright to See”
  • Andrea Wang “Watercress”Jason Chin(ジェイソン・チン)絵)

コルデコット賞

Watercress
Jason Chin(ジェイソン・チン)絵、Andrea Wang

中国系米国人の少女は家族とともに道ばたのクレソンをつみ、それをはずかしいと感じる。しかし、母親の思い出を聞いたことで、自身の文化を受けいれられるようになる。

米国図書館協会は、同作のコルデコット賞受賞にあたり「何層にも重なった、胸を打つ普遍的な物語を、表現豊かな絵が補っている」と紹介した。同賞審査委員長は、「中国と西洋の画法を駆使したやわらかな水彩の絵が、記憶と文化を深い情感とともに伝えている」と評した。

同作は、前述のニューベリー賞オナーブックにも選ばれている。

作者の Andrea Wang は、自身の体験を大人向けのエッセイとして描こうとしたがうまくいかず、最終的には絵本の形で出版することになったと述べている。

ジェイソン・チンはニューヨークの児童書専門店 “Books of Wonder” に勤めていたときに、絵本作家としてデビューした。自身の創作について、科学や自然を想像力豊かに描きたいと述べている。

なお、次点作品にあたるコルデコット賞オナーブックには、以下の4作品が選ばれた。

  • Shawn Harris “Have You Ever Seen a Flower?”
  • Corey R. Tabor “Mel Fell”
  • Floyd Cooper(フロイド・クーパー) “Unspeakable: The Tulsa Race Massacre”(Carole Boston Weatherford(キャロル・ボストン・ウェザフォード)文)
  • Micha Archer(ミーシャ・アーチャー) “Wonder Walkers

Ref:

(2022.02.27 update)