2023年ニューベリー賞、コルデコット賞受賞作品決定

【2023-019】

2023年1月30日(月)、米国図書館協会児童図書館サービス協会(Association for Library Service to Children, a division of the American Library Association: ALSC, ALA)は、2023年のニューベリー賞(Newbery Medal)受賞者が “Freewater” の著者 Amina Luqman-Dawson、コルデコット賞(Caldecott Medal)の受賞者が “Hot Dog” の画家 Doug Salati に、それぞれ決定したと発表した。2つの賞は、前年に米国で発表された英語の児童書を対象とし、米国在住の作家および画家に与えられる。

ニューベリー賞

Freewater
Amina Luqman-Dawson

プランテーションを逃げだした奴隷の兄妹は、秘密のコミュニティにたどりつく。そこで自由黒人として生まれた人に出会い、ともにコミュニティを守ろうとする。

作品の舞台となっているのは、バージニア州からノースカロライナ州にかけて広がる大ディズマル湿地である。現在は野生動物の保護区となっているが、1600年代の終わりから南北戦争までは、奴隷や先住民族が白人の入植者から逃れるための場所だった。

米国図書館協会は、同作のニューベリー賞受賞にあたり、「読者をはらはらさせる力強い作品である。マルーン(逃亡奴隷)のコミュニティをめぐる史実にもとづき、巧みな人物造形と豊かで鮮やかな舞台設定によって、抵抗の物語が語られる」と評した。

また、同作は、優れた児童文学・ヤングアダルト作品を生んだアフリカ系米国人作家・画家に贈られるコレッタ・スコット・キング賞(Coretta Scott King Book Award)作家部門も併せて受賞した。

Luqman-Dawson はバージニア州ピーターズバーグで暮らしはじめたとき、アフリカ系米国人の豊かな歴史を学び、それが第一作目の “Images of America: African Americans of Petersburg” の執筆につながった。自由や帰属意識に関する問題をテーマに作品を書いており、児童書としては同作が第一作目になる。

なお、次点作品にあたるニューベリー賞オナーブックには、以下の3作品が選ばれた。

  • Andrea Beatriz Arango “Iveliz Explains It All”
  • Christina Soontornvat “The Last Mapmaker”
  • Lisa Yee “Maizy Chen’s Last Chance”
  • コルデコット賞

    Hot Dog
    Doug Salati

    犬と飼い主の愛と友情の物語である。街から海にやってきた犬は、浜辺を走りまわり、穴を掘り、ストレスから解放される。暑くて騒々しい街は、燃えるようなオレンジで描かれ、そのあとの海辺の場面では、心を落ち着かせるような緑と青が広がる。

    米国図書館協会は、同作のコルデコット賞受賞にあたり、「色遣いを変えたり、絵を区切ったりする手法がすばらしく、その中で犬と飼い主の絆が描かれている」と評した。

    Salati はニューヨーク市在住で、同作は、Salati がはじめて絵と文章の両方を手がけた作品である。絵本作家モーリス・センダックの遺志を継ぎ、若い画家の創作を支援するプログラムに参加したことから、絵本作家トミー・デ・パオラと知り合い、第一作の “In a Small Kingdom” が 生まれた。

    なお、次点作品にあたるコルデコット賞オナーブックには、以下の4作品が選ばれた。

  • Jason Griffin “Ain’t Burned All the Bright”(Jason Reynolds(ジェイソン・レノルズ)文)
  • Michaela Goade “Berry Song”
  • Janelle Washington “Choosing Brave: How Mamie Till-Mobley and Emmett Till Sparked the Civil Rights Movement”(Angela Joy 文)
  • Christopher Denise(クリストファー・デニス)“Knight Owl”(邦訳『夜をまもる騎士アウル』)
  • Ref:

    (2023.03.28 update)