2023年リンドグレーン記念文学賞の受賞者決定

【2023-027】

2023年3月7日(火)、スウェーデン・アーツ・カウンシル(Swedish Arts Council)は、第21回リンドグレーン記念文学賞(The Astrid Lindgren Memorial Award)の受賞者を発表した。

受賞者

Laurie Halse Anderson(ローリー・ハルツ・アンダーソン)
米国

アンダーソンは米国の作家であり、性暴力や検閲、多様性をめぐる運動にも積極的に関わっている。児童文学や絵本の文章を書いているほか、1999年にヤングアダルト作品 “Speak”(邦訳『スピーク』)で注目を集めた。同作は、パーティーでレイプされ、被害について声を上げたために周囲から孤立する少女の物語で、2000年にゴールデン・カイト賞フィクション部門を受賞した。同作の刊行から約20年を経て、2019年に出版された ”Shout“ は、詩の形で書かれた自伝である。 “Speak” の主人公とも重なる体験をしたアンダーソンは、“Shout” では、自らのことを書く中で新たな声を見出すまでを描いている。そのほか ”Twisted” では男権主義、”The Impossible Knife of Memory” では時間と記憶、”Wintergirls” では摂食障害の問題を扱っている。18世紀末のアメリカにおける黄熱の流行をテーマにした “Fever 1793” や ”Seeds of America” 三部作など、歴史小説も手がけている。

同賞ウェブサイトはアンダーソンについて、「表現力豊かな一人称で書かれた作品は、ときに残酷なほど率直に、若い人たちが経験することに声を与えている。そこには諦観や、さらには絶望さえあるが、変化を起こそうという決意もあり、愛と居場所を求める気持ちが繰り返し描かれている」と述べている。

同賞審査員は授賞理由として、「若い人たちに向けて簡潔に書かれた作品の中で、現在と過去における、意味とアイデンティティと真実の探求がテーマになっている。暗く輝くリアリズムが、若い時期に時間や記憶が果たす大きな役割を描き出す。痛みと不安、あこがれと愛、階級と性が、的確な文体と冷静な機知によって捉えられている。やわらかな強さをこめて、感情や気分を喚起し、非常に難しい問題からも目を背けていない」と評価した。

日本からの候補者

2023年は、64か国から251の候補が挙がっており、日本からの候補は以下の通りだった。
  • 高橋留美子(漫画家)
  • 田島征三(絵本作家)
  • 東京子ども図書館
  • Ref:

    (2023.04.22 update)