2023年カーネギー作家賞、カーネギー画家賞受賞作品決定

【2023-066】

2023年6月21日(水)、英国図書館情報専門家協会(The Chartered Institute of Library and Information Professionals: CILIP)は、2023年のカーネギー作家賞(Yoto Carnegie Medal for Writing)とカーネギー画家賞(Yoto Carnegie Medal for Illustration)の受賞作品を発表した。

カーネギー作家賞は英国またはアイルランドで出版された英語の優れた児童書、カーネギー画家賞は児童書の挿絵を顕彰する。これまではそれぞれ、カーネギー賞(Yoto Carnegie Medal)とケイト・グリーナウェイ賞(Yoto Kate Greenaway Medal)という名称だったが、今回から変更された。

2023年の受賞作品はどちらも、わたしたちが今をいかに生きているか、それが将来どんな影響を与えうるかということが描かれている。

受賞作品(一覧)

カーネギー作家賞

The Blue Book of Nebo
Manon Steffan Ros

核戦争の後、社会が崩壊した極限状況において、孤立しながらも生きのびようとする母と息子の物語が、日記の形で描かれている。はじめはウェールズ語で書かれ、今回、英語版が受賞した。翻訳書が受賞するのは、約90年のカーネギー賞の歴史の中で今回が初めてである。

審査委員長からは、「物語世界の設定と、登場人物の個性を感じられるような語りがすばらしく、今の世界と自らの関わりについて読者に考えさせる」と評された。

Ros はウェールズ語と英語に親しんで育ち、俳優やミュージシャンを経て作家になった。英国・北ウェールズのタウィンに住んでいる。

カーネギー画家賞

Saving Sorya: Chang and the Sun Bear
Jeet Zdung
Trang Nguyen

野生動物の保護活動に携わっている、作者の体験にもとづくグラフィックノベルである。子どものころにマレーグマを保護し、その後野生に返したことや、密猟者の問題について書かれている。

審査委員長からは、「環境保護についての広い視野と、女性の活動家の真実の物語が合わさった美しい作品である。よく考えた上で書かれた文章は生き生きしていて、すばらしい絵が読者を引きこむ」と評された。

Zdung はベトナムのハノイで生まれ、現在もそこに住んでいる。写実的な絵から漫画、ベトナムや日本の民衆芸術を思わせるものまで、様々な作品を手がけている。

Shadowers’ Choice Award

ショートリストの中から子どもたちが選ぶ Shadowers’ Choice Award として、カーネギー作家賞のショートリストからは Ruta Sepetys(ルータ・セペティス)の “I Must Betray You”、カーネギー画家賞のショートリストからは、Joe Todd-Stanton(ジョー・トッド=スタントン)の “The Comet”(邦訳『ほうきぼしのまほう』)が選ばれた。“I Must Betray You” は、チャウシェスクによる弾圧と恐怖政治が行われていた1980年代のルーマニアの物語である。政府の情報提供者の青年が、革命に参加するか迷う過程を通して、残虐な行為に対し、人はいかに抵抗し耐えうるかということが描かれている。“The Comet” では、田舎から都会に引っ越してきて、孤独を感じている少女が夢のような体験をする。

Ref:

(2023.08.28 update)