ミュンヘン国際児童図書館の『ホワイト・レイブンズ』

【2023-094】

ミュンヘン国際児童図書館は、約140言語63万冊を所蔵する世界最大の児童図書館である。同館は原則として、出版社からの寄贈による蔵書構築を行っており、その中で特に優れた作品を掲載した国際推薦児童図書目録『ホワイト・レイブンズ』(The White Ravens)を毎年刊行している。1984年に “Die Weißen Raben” としてドイツ語で創刊され、1986年以降は英語で出版されるようになった。『ホワイト・レイブンズ』には「白いカラスのように、めったに見られないような優れた作品」の意が込められている。

『ホワイト・レイブンズ』の掲載作品は、同館が所蔵する本の中から、同館の各言語部門担当者が必要に応じて外部の協力を得ながら選考する。選考基準は文学性、デザイン性、テーマの普遍性、絵の素晴らしさなどのほか、アプローチがユニークであるか、他国の子どもにぜひ紹介したいかなども考慮して評価される。日本語の本は毎年8冊(2013年までは15冊)が選ばれている。

毎年10月に開催されるフランクフルトブックフェアでは、同館の言語部門担当者が入選作を紹介するイベントを行っている。また、『ホワイト・レイブンズ』に選ばれた全作品は、毎年春に開催されるボローニャ・ブックフェアで展示される。

2023年『ホワイト・レイブンズ』入選作品

2023年の『ホワイト・レイブンズ』には37言語、57か国、200作品が掲載された。掲載された日本の作品は以下のとおりである。

草のふえをならしたら (福音館創作童話シリーズ)
林原玉枝 作、竹上妙 画、福音館書店、2022年、ISBN:978-4-8340-8657-7
海のアトリエ
堀川理万子 著、偕成社、2021年、ISBN:978-4-03-435160-4
ウマと話すための7つのひみつ
河田桟 文と絵、偕成社、2022年、ISBN:978-4-03-435170-3
へんしん : すがたをかえるイモムシ
桃山鈴子 作, 井上大成 解説・監修、福音館書店、2022年、ISBN:978-4-8340-8653-9
あした、弁当を作る。
ひこ・田中 著、講談社、2023年、ISBN:978-4-06-530595-9
スクラッチ
歌代朔 作、あかね書房、2022年、ISBN:978-4-251-07312-9
橋の上で
湯本香樹実 文、酒井駒子 絵、河出書房新社、2022年、ISBN:978-4-309-29208-3
がっこうにまにあわない
ザ・キャビンカンパニー 作・絵、あかね書房、2022年、ISBN:978-4-251-09955-6

『ホワイト・レイブンズ』の表紙絵

『ホワイト・レイブンズ』は2014年以降、前年に入選した作品の画家が、表紙絵を手がけるようになった。今年は初めて日本の画家が選ばれ、2022年に『いろいろかえる』(偕成社)が『ホワイト・レイブンズ』に掲載された、きくちちき氏が表紙絵を描いた。きくち氏は、色ごとに分けて描いた絵をパソコンに取り込み、それをCMYKの4色に置き換え、版画のように重ねて制作したという。

ミュンヘン国際児童図書館の館長は『ホワイト・レイブンズ』の序文の中で、表紙絵について、「色とりどりの小鳥がにぎやかに、白いカラスのまわりに集う様が描かれている。鳥たちはカラスの大きなつばさの下に入りこみ、夢中になって本をのぞきこんでいる。子どもの本というものがいかに幅広く、『ホワイト・レイブンズ』が多様な本を紹介しているかということ、そして人との交わりの中で本を読む喜びが、素晴らしい形で表された表紙だ」と述べている。

なお、2023年以降、紙資料としての『ホワイト・レイブンズ』は印刷されず、PDFのみ制作することになった。

Ref:

(2023.12.12 update)