児童文学連続講座 平成29年度

総合テーマ
「絵本はアート、絵本はメディア」

「岩波の子どもの本」や福音館書店の「こどものとも」シリーズの創刊が日本の絵本に新しい息吹をもたらしてから、はや70年近い年月が流れました。その間、日本の絵本は海外の絵本に学びながら大きな飛躍と発展を遂げてきました。その発展の中で、さまざまな絵本研究から子どもの発達と絵本の関係やその教育性、児童文学としての文学的価値や芸術性などについて多数の知見を得てきましたが、特にここ30年は、絵本の視覚表現性、つまり絵本の「絵」の構造や働きに注目が集まるようになってきています。
今回の講座のテーマは「絵本はアート、絵本はメディア」ということで、特に美術的な視点、つまり絵本の視覚表現性という視点から「絵本」に迫ります。従来の絵本研究から抜け落ちがちであった、絵本をメディアとして捉えることの意味や、美術的な視点での絵本論、絵本の見方を紹介していきます。絵本表現のもつ深さ、豊かさを堪能してください。

講座概要

総合テーマ 「絵本はアート、絵本はメディア」
開催時期 平成29年11月6日(月)、7日(火)
会場 国際子ども図書館 アーチ棟1階 研修室1
対象 児童サービス担当図書館職員、児童書研究者(学生含む。)、児童書出版関係者等。定員60名。
※応募多数の場合は図書館職員を優先します。
※2日間連続して受講できる方を優先します。
備考 全課程の修了者に対し、国際子ども図書館長名の修了証書を授与します。

時間割

※講義内容の詳細については、講義内容の項目をご覧ください。

1日目 11月6日(月)

時間 内容
9時30分 受付開始
10時~10時15分 開講挨拶・諸注意・講師紹介
10時15分~10時30分 はじめに
10時30分~12時10分 絵本を一冊まるごとウォッチング
12時10分~13時10分 休憩
13時10分~14時50分 絵本はアート
14時50分~15時 休憩
15時~15時50分 国際子ども図書館の展示紹介
15時20分~16時 国際子ども図書館見学

2日目 11月7日(火)

時間 内容
9時30分 受付開始
10時~11時40分 絵本とグラフィック・デザイン―デザイナーの絵本を中心に―
11時40分~13時 休憩
13時~14時40分 絵本というメディアの可能性
14時40分~15時 講義のまとめ
15時~15時10分 休憩
15時10分~16時20分 受講者交流(説明、発表含む)
16時20分~16時40分 監修者コメント・質疑応答
16時40分~16時50分 閉講挨拶・修了証書授与

講義内容

1日目 11月6日(月)

絵本を一冊まるごとウォッチング
石井 光惠(日本女子大学教授)
絵本は、大きさ、形、帯やカバー、表紙から始まって、まるまる一冊すべてがその絵本の表現となります。絵本にはさまざまな部位での遊びがあり、実に多彩な工夫が凝らされています。普段見過ごされがちな部分に目を凝らすと、また違った絵本の面白さが見えてきますので、絵本の構造からみた絵本表現の面白さを紹介します。
絵本はアート
中川 素子(文教大学教授)
絵本を物語の説明としてではなく、アートと連動した表現として見ると、新しい魅力がみえてきます。視覚による世界認識、作品構造による時代性の把握、読者のインタラクティブ性の追求、ブック・アートとの融合、コンセプトの開示などです。チャイルド・ブックかピクチャー・ブックかの二元論で絵本を狭めず、絵本の可能性を広げる目を持ちましょう。
国際子ども図書館の展示紹介
国際子ども図書館職員

2日目 11月7日(火)

絵本とグラフィック・デザイン―デザイナーの絵本を中心に―
今井 良朗(武蔵野美術大学名誉教授)
絵本の分野ではデザインが造形面だけで見られることが多くあります。しかし、絵本は印刷され量産される本であり、素材、組み立て方などデザインは欠かせない手法です。人と本との直接的な対話の形をつくり出す、そのような工夫、演出がまさにデザイン的な視点です。1960年代のデザイナーによる絵本を中心に見ていきます。
絵本というメディアの可能性
松本 猛(絵本学会会長、ちひろ美術館常任顧問、横浜美術大学客員教授)
江戸時代の絵本は、現代のテレビや雑誌的の役割も果たしていましたが、20世紀に入り教育と結びついたことから、子どもの本というイメージが定着しました。しかし、現代において絵本の扱うテーマは歴史や自然から現代社会のさまざまな問題まで多様化してきています。絵本の歴史を踏まえて将来を考えます。

講義録

平成29年度児童文学連続講座「絵本はアート、絵本はメディア」の表紙

印刷版

本講義録「絵本はアート、絵本はメディア」の印刷版は、公益社団法人日本図書館協会から発売されています。印刷版の入手に関するお問い合わせは下記までお願いします。

公益社団法人日本図書館協会
〒104-0033 中央区新川1-11-14
電話:03-3523-0812(販売直通)

PDF版(3.27MB)

お問い合わせ先

国立国会図書館国際子ども図書館 企画協力課協力係
電話:03-3827-2053 FAX:03-3827-2043
〒110-0007 東京都台東区上野公園12-49

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