ヴィクトリア朝の子どもの本:イングラムコレクションより

イングラムコレクションについて

イングラムコレクション(The Winnington-Ingram Collection of Children's Books)は、主としてイギリスの18世紀から20世紀にかけての児童書1,157冊で構成されています。コレクションの核となっているのは、イギリスのヘレフォード大聖堂主教座名誉参事会員エドワード・ヘンリー・ウィニングトン=イングラム師(Venerable Edward Henry Winnington-Ingram 1849−1930)が、ヴィクトリア朝(ヴィクトリア女王統治下の1837年から1901年のイギリス)の道徳的、精神的価値観に沿った児童文学をテーマに収集を開始した資料です。
のちに娘のコンスタンス・モード・ウィニングトン=イングラム(Constance Maud Winnington-Ingram 1880-1972)が引き継ぎ、収集対象が古典児童文学や絵本にまで広げられました。その後、コレクションは、コンスタンスがチェルトナム・レディースカレッジの副学長を務めた関係でチェルトナム・グロスターカレッジに寄贈され、1994年まで同大学が所蔵していましたが、その間にも若干の追加がなされています。
1996年に国立国会図書館が国際子ども図書館開設準備の一環として一括購入し、特別コレクションとして現在に至っています。

このコレクションには、「子どもの文学」が誕生したとされる18世紀イギリスで、子ども向けの書籍出版を始めた当時を代表する出版人ジョン・ニューベリー(John Newbery 1713-1767)の手による作品から、グリムやアンデルセンの童話集を経て、次第に子どもの文学の楽しみが広がりを見せる19世紀のフェアリーテールやルイス・キャロル(Lewis Carroll 1832-1898)による『不思議の国のアリス』などに代表されるファンタジー文学、少女小説や冒険小説など、19世紀を代表する児童文学作家たちによる代表的な作品が数多く含まれています。
コンスタンス以降に追加された作品を含め、18世紀から20世紀前半に至るまで主にイギリスを舞台に発展を遂げてきた近代児童文学史の流れを辿ることができるコレクションです。

<エドワード・ヘンリー・ウィニングトン=イングラム師について>

1849年3月13日、エドワード・ウィニングトン=イングラム師(Reverend Edward Winnington-Ingram)とマリア・ルイーザ・ピープス(Maria Louisa Pepys)の間に生まれる。ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジを修了後、1876年から英国ウスターシャー州Ribbesford教区牧師などを歴任し、1917年からヘレフォード大聖堂主教座名誉参事会員に就任する。
1880年、最初の結婚をしたエリザベス・ラスコム・ジョン=アンスティス(Elizabeth Ruscombe John-Anstice)との間に娘コンスタンスが生まれる。その後、1898年にハリエット・アン・バーナード(Harriet Anne Bernard)と2度目の結婚をし、1930年4月27日、81歳で生涯を終える。(出典:Burke's peerage, baronetage & knightage: clan chiefs, Scottish feudal barons / editor-in-chief, Charles Mosley. 107th ed. Burke's Peerage & Gentry, c2003)